
「モータサイズはそのままで,必要なトルクを維持しながら搬送スピードを上げるには―。」
解決策を探していたT氏は,サーボモータの取り引きで付き合いがあった山洋電気に,これらの問題を相談してみることにしました。
山洋電気の営業担当はS社の要件を詳細にヒアリングし,次のような提案をしました。
「ステッピングモータはトルクをアップさせると最高速度が下がり,逆に最高速度を上げるとトルクが下がる“トレードオフ”の関係にあります。貴社のご要望に合わせてトルク特性を調整しましょう。」
ほどなく,「巻線仕様」をカスタマイズした試作品を受け取ったS社は,実機に組み込んで検証しました。
「巻線仕様を細かく調整することで,必要な速度でのトルクを確保し,最適な特性を出していただきました。その技術力の高さには驚きましたね。結果的に,“搬送スピードの10%アップ”に成功することができました。」(T氏)
モータのサイズを変えずに済んだことでコスト増が避けられるとともに,装置サイズも現行のまま維持することができました。
また,試作品受け取りまでの期間はわずか3週間で,山洋電気の迅速さもT氏を満足させました。
「その後,ステッピングモータの生産現場(山洋電気神川工場)を見学させてもらいました。製造工程や部材管理はすべてシステム化され,生産管理体制も完全に可視化されていました。これならば,量産態勢に入っても安心して任せられると判断できました。」(T氏)
フランジやシャフト長を従来品に合わせて変更する提案があったことも決め手となり,S社は,山洋電気製ステッピングモータの正式採用を決定しました。
さらに,検査アルゴリズムなどのシステムを見直した結果,次期モデルでは「サイクルタイム25%短縮」を実現し,飛躍的に性能アップすることができました。今回の決断について,T氏はこう語っています。
「山洋電気には,単にステッピングモータを供給するだけでなく,当社の要件に沿った柔軟なカスタマイズにより,実現が困難と思われた次期モデルの大幅な性能向上に貢献していただきました。これで,価格競争にピリオドを打ち,ものづくり日本ならではの高い品質・性能を武器に,アジア市場で差別化を図ることができそうです。また,部品の迅速な納品など,常に当社のニーズを満足させていただき,非常に感謝しています。」