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山洋電気の歩みと技術革新(6)

国産コンピュータの登場―周辺機器へ,サーボモータの需要増

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History
歴史

山洋電気は,冷却ファンやサーボシステム,ステッピングシステム,UPS,太陽光発電システム用パワーコンディショナなどの製造・販売で知られる電気機器メーカーです。1927年(昭和2年),黎明期の無線通信機分野におけるパイオニアとして創業した当社は,戦中・戦後の混乱を乗り越え,回転機電源の主力メーカーとなるなど,卓越した技術力を武器に順調に復興を果たしました。そしてその後,国産初のサーボモータ開発に成功したことでコントローラ領域にも進出し,制御用小型回転機のトップランナーとして,国産エレクトロニクス市場の幕開けを支えていくことになります。

コンピュータ周辺装置の国産化が加速―「DCサーボモータ」が主役の座に

昭和30年代前半期は,わが国のエレクトロニクスが開花した時期でした。真空管に代わるトランジスタの普及がこの動きを突き動かし,その生産量は1954年(昭和29年)の650万個から1958年(昭和33年)には2,670万個にまで急上昇。コンピュータと自動制御を中心に,エレクトロニクスの裾野はあらゆる産業分野へ拡大していきました。

国産コンピュータの開発は通産省の電気試験所が先導役となり,電電公社などの公的機関も独自の研究をおこなっていました。民間の大手企業もこれに続き,昭和30年代中頃には国産コンピュータの販売を開始。当時は,日本電気,富士通信機製造,沖電気,日立製作所,東京芝浦電気,三菱電機,松下電器産業が「国産コンピュータメーカー7社」と言われていました。

1959年(昭和34年),電気試験所では,膨大な情報を記録し自動的に必要な情報を探す「磁気テープ式」の情報検索機を試作開発し,これを機にコンピュータ周辺機器の国産化が加速。当社は,ここにサーボモータの需要が大きく発生すると判断しました。磁気テープ装置の制御には,2相サーボモータより高性能・大容量のDCサーボモータが向いていましたが,まだ開発段階であったため,当初は2相サーボモータで応えざるを得ませんでした。しかし翌年には優良な特性を出せるようになり,以後,磁気テープ装置用としてはDCサーボモータが主役の座を占めることに。

「DCサーボモータ」は2相サーボモータに比べて,
(1)始動時とピーク時のトルクが大きい
(2)任意の回転数が選択できる
(3)小型軽量で大出力が得られる

など,高性能化に対する抜群の適応力を持っています。当社のDCサーボモータは各メーカーに歓迎され,国産電子計算機の販売台数と相関しながら伸びていきました。一方で,後の主力製品のひとつとなるステッピングモータ(パルスモータ)の研究試作にも着手していました。このときはまだVR型(Variable Reluctance Type:歯車状鉄心形)でしたが,来るべき事務機器分野のオートメーション化に備えたものでした。

新分野の需要拡大に向けて,川口工場を新設

新分野の需要発生とともに,東京工場が手狭になることを予測した社長の山本秀雄(当時)は埼玉県川口市に新工場の建設を決意。岩戸景気さなかの1960年(昭和35年)11月に2000㎡の工場建屋を完成させ,翌年2月から操業を開始しました。新工場は東京工場の分工場として,サーボモータ,シンクロナスモータ,ホットトップ自動制御装置,電電公社の呼出信号用電源など小型回転機の生産の一部を受け持ちました。会社への貢献度では,上田工場で生産される官公需を中心とした無停電源装置が,まだ圧倒的な位置を占めていましたが,東京,川口工場の小型回転機は,当社の未来の姿を確信させるものでした。

米国IMC社との販売提携―技術レベルが飛躍的向上

昭和30年代の鉄鋼,電子工業,石油化学などの各産業界は,国内・国外の競争に打ち勝つために新しい製造工程の採用を急いでおり,外国の技術を積極的に導入していました。当社も自動制御の分野において,新しい製造工程の導入を急がなくてはなりませんでした。

そのような折,三菱商事の紹介によって米国の中堅電機メーカー・IMC社が,当社のサーボモータを自社の販売ルートに乗せたいと提携を申し入れてきました。

専務取締役の渡辺平蔵(当時)が訪米して視察したところ,IMC社が米国の業界で占める位置は当社の立場とよく似ていることがわかりました。提携は良好な結果が出ると判断し,1961年(昭和36年)10月に業務提携の契約を締結。この提携によって,立ち上がったばかりのサーボモータの生産ラインは一段と充実することとなりました。

その後,IMC社からは航空機や戦車に使われる超小型の制御用サーボモータも受注しましたが,当時の製造技術ではまだ要求された精度や特性が出せませんでした。そこで,東京工場長の横沢新二郎(当時)が1964年(昭和39年)7月から4か月間にわたり,同社ロサンゼルス工場で精密小型制御回転機の製造を研修。これによって当社の機械工作の精度は一桁引き上げられ,現在に続く精密機械工作技術の基礎を築くことにもなりました。

公開日: 2017-01-06 00:00