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コラム
山洋電気の歩みと技術革新(19)

市場の変化が生み出した技術

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History
歴史

近年,世界各国で販売される情報通信機器,携帯端末,家電,自動車などあらゆる分野の新製品には,便利で新しい機能が数多く搭載され,数年前と比較して製品の性能が飛躍的に向上しています。お客さまのニーズは多種多様で,同じお客さまであったとしても,時間の経過や環境の変化でニーズが変わっていきます。当社は会社設立当初から,「お客さまに満足いただける製品作り」に重点をおき,製品開発に取り組んできました。お客さまのニーズの変化に応えるべく新しい技術の開発と改善を繰り返し,ACファン,長寿命ファン,防水防油ファン,CPUクーラーなどを製品化してきました。

モータにおける技術の変化

当社では,DCファンは開発当初二相半波駆動モータを採用していましたが,高い冷却性能・低消費電力のニーズの高まりから,単相全波駆動モータを標準的に採用するようになりました。
最近では,高密度な情報処理機器の発熱対策として,ファンにはより高い冷却性能が求められることから,モータにはさらなる高速化が要求されています。しかし,高速化にともない,ファンの振動やセンサノイズによる装置の誤動作,ファン駆動用電源の容量不足など,これまで問題視されなかった課題が表面化してきました。
これらの課題に対し,当社は三相駆動モータを開発して,以下のような成果をあげてきました。

■振動加速度の低減
モータのスロット数が増え1回転あたりのスイッチング回数も増えたことで,モータスイッチングに起因する振動の低減を実現しました。これにより装置の騒音低減,HDDの読み取りエラーの抑制に貢献することができました。

振動加速度特性例

図1 振動加速度特性例

■センサノイズの低減
パルスセンサ波形のノイズは,モータのスイッチングに起因して発生します。 単相モータは,電流が多く流れて電流リップルが大きい場合に発生しやすくなりますが,三相モータの場合,定常電流波形のリップルが大幅に改善でき,センサ信号に加えるノイズも大幅に低減することができました。 これにより,装置側でのファン回転速度の異常検出が抑制できました。 また定常電流のピーク値と振動加速度(RMS),起動電流のピーク値を低減できたことで,ファン駆動用の電源容量を減らすことができ,装置の省スペース化やコスト低減に貢献できるようになりました。

送風技術の変化

近年になって,ファンは冷却以外に住宅換気や飲料用自販機,食品用ショーケース,印刷機などの送風を目的とした分野にも使用され始めています。
例えば,住宅換気ではファンを利用し,屋外の空気を吸気する場合と屋内の空気を排気する場合があります。従来では,吸気用と排気用とで別々のファンを設置する必要がありましたが,設備コストや設置スペースを削減するために,1台で両方向に送風できるファンの要求が高まっています。
こうした要求に応えるために両方向に送風できる「リバーシブルフローファン」を開発しました。

■モータ・回路部
モータおよび回路部は,一方向にのみ回転する単相モータをベースに,ホール素子を複数個使用し,特殊なマイコン制御を追加することで,両方向に回転できる駆動回路を新たに設計しました。そして,PWMコントロール機能を利用し,回転方向を切り替える新たな制御方法を実現しました。

風量-静圧特性例

図2 風量-静圧特性例

■羽根・フレーム形状
両方向に回転するため,正逆方向の回転で同等の風量,静圧が得られるよう,板状の左右対称な翼断面にした特殊な羽根形状を採り入れました。角度や枚数についても最適化を図りました。 また,逆方向の場合はフレームのスポークが妨げとなり,送風効率が低下してしまうため,スポーク形状の最適化とフレーム内径形状の工夫により,両方向でほぼ同等の風量静圧特性を実現しています。

市場ニーズの変化に対して,私たちが開発してきたこれらの技術は,お客さまにとっての最適なソリューションとして製品に生かされ,数多く採用されています。
今後,市場ニーズの変化がさらに加速すると考えられるなか,私たちはその変化に応えるため,今まで以上にタイムリーに製品を提供していきます。

公開日: 2018-12-08 00:00