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コラム
山洋電気の歩みと技術革新(20)

市場の変化が生み出した技術 パワーシステム

History
歴史

工業製品において,市場環境の変化による製品への性能向上の要求が高まっています。当社が生産する無停電電源装置(UPS)やパワーコンディショナも,常に市場の変化に応じて進化し続けています。

UPSでは,従来のデータセンターや通信サービス市場に加えて,新たな市場として生産工場などの産業市場への採用が進んでいます。また,長年使用されていた鉛蓄電池に替わり,新たな蓄電デバイスや二次電池を使用した製品も登場しています。

一方,再生可能エネルギーにおいては,2012年に固定価格買取制度が導入され,ユーザーは発電効率を重要視するようになりました。制度開始後も,毎年の買取制度の急激な変化や再生可能エネルギー導入量の拡大に電力会社の送電設備のキャパシティが追いつかず,状況に応じて新たな規制も追加されています。

UPS市場の変化に対する技術

屋外で使用される機器の例

図1 屋外で使用される機器の例

使用環境の変化にともない,用途は拡大し,性能も変化しています。例えば,小容量UPSは,これまでサーバや情報通信機器のバックアップ,産業機器の組み込み用途が主な市場でした。しかし,近年のモバイル機器の普及や震災の教訓などから,停電補償時間の長時間化が要求され,屋外監視カメラや交通信号機,防災設備などの屋外設備のバックアップとしての用途が増加したことで,これまでの技術では市場の要求を満たせなくなってきました。
そのようなUPS市場の変化に合わせて,当社は新しい技術を進化させ続けてきました。

■新しい蓄電デバイス
屋外に設置されるUPSは,設置スペースが限られるため,長時間のバックアップと小型化を両立することが求められます。これらの課題を解決するため,小容量UPSにおいては,エネルギー密度や寿命に優れたリチウムイオン二次電池を採用し,さらに変換効率の高い変換機を組み合わせることで,従来の鉛蓄電池と比較して,省スペースで長時間のバックアップを実現しました。

■厳しい使用環境
屋外に設置される場合は,幅広い動作温度範囲が必要です。また,定期点検やバッテリ交換が容易に実施できないため,メンテナンスフリーを実現する必要があります。そこで,UPS内部部品の実装の工夫,冷却性能の向上,および耐温度性能の高いリチウムイオン二次電池との組み合わせで,使用温度範囲を従来製品より拡大しました。

再生可能エネルギー市場の変化に対する技術

■発電電力の最大化
再生可能エネルギー市場においては,固定価格買取制度の導入により発電効率の向上が収益の向上につながるようになったため,発電効率の向上がさらに強く要求されるようになりました。また,従来よりも大規模に太陽光パネルを設置する例が増え,家の屋根にある太陽光パネルは南向きだけでなく,東向きや西向きにも設置されるようになりました。しかし,向きによりそれぞれの発電量は異なります。

複数の太陽光パネルにP61Bを使用した場合

図2 複数の太陽光パネルにP61Bを使用した場合

従来のMPPT制御(*)は,一群の太陽光パネルに対してもっとも効率のよいポイントを探して運転するため,発電量の異なるパネルの効率を高めるには太陽光パネルごとにパワーコンディショナを設置する必要がありました。しかし,当社の「SANUPS P61B」は昇圧コンバータ回路を二回路持ち,それぞれにMPPT制御を独立してかけることにより,一台のパワーコンディショナでパネル2系統の発電効率の最大化を実現しました。 さらに「SANUPS P61B」シリーズは防塵,防水保護等級の高いIP65を達成し,雨水や塵,虫や動物などの侵入を防ぐことができ,屋外でも安定した動作が期待できます。万が一の故障に対応するため,長期保証延長サービスを導入し,10年までの保証を実現しています。

■出力制御機能付き「SANUPS PV Monitor E Model」を開発
売電事業の増加にともない,システムの保守や監視が求められるようになったことから,2013年12月に太陽光発電システム監視装置「SANUPS PV Monitor E Model」をリリースしました。近年の再生可能エネルギーの固定価格買取制度による出力制限の要求に対応して,新たに出力制御機能も追加しています。 出力制御機能付き「SANUPS PV Monitor E Model」は,出力制御ユニットとして,当社製太陽光発電システム用パワーコンディショナを最大27台まで接続できます。また,インターネット回線を利用して出力制御スケジュールを随時更新でき,インターネット回線がない場合でも,発電事業者が定期的に出力制御スケジュールを更新することもできます。

■蓄電池付きパワーコンディショナ「SANUPS P73K」連系自立充電タイプを開発
「SANUPS P73K」は,新たに開発した双方向で充放電できる充電ユニットに蓄電池を接続しました。太陽電池の入力電圧が蓄電池電圧に影響されなくなることで,自立運転時でもMPPT制御をおこない,太陽電池の発電電力を有効に使用できるようにしました。

当社は今後も電源市場の変化をすばやく的確に捉え,製品の新しい価値に応用できる技術を開発していきます。

*MPPT制御:最大電力点追従制御(Maximum Power Point Tracking)。変化する太陽電池の最大電力点で動作するように制御し,太陽電池の能力を最大限に引き出す機能。

公開日: 2018-12-08 00:00