TECH COMPASS
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コラム
山洋電気の歩みと技術革新(21)

市場の変化が生み出した技術 サーボシステム

History
歴史

年の生産システムは,IoT(Internet of Things)の進展も加わって高度化しています。また,産業のグローバル化により,さまざまな地域への活用が拡大されています。このような「使用環境の変化」や「お客さまのニーズの変化」にともない,さらなる高性能化・多機能化を実現し,信頼性の高い製品をタイムリーに提供していく必要があります。当社では,「人と地球環境にやさしい性能を追求する技術」をテーマに使用環境やニーズの変化があっても,安心してご使用いただける製品開発をおこなっています。

ステッピングモータの低振動騒音化および低発熱化の技術

ステッピングシステムはオープンループ制御でシステムを簡単に構築できることから,一般産業機械や半導体製造装置などに幅広く使用されています。特に近年では,医療機器など,人の近くで使われる用途が増えてきました。そのため,モータにはトルク性能だけでなく,低振動や低騒音,低発熱といった性能も求められています。

これらの課題を解決するために,当社の5相ステッピングシステム「SANMOTION F5」においては,ドライバの電流制御,モータのステータとフランジ・エンドブラケットの嵌合寸法および突き当て部の形状の工夫などをして,構造剛性をアップすることで,振動の原因となる速度変動を大きく低減しました。これにより,機械装置を低振動化することができ,設計自由度を高めることができました。騒音レベルも3dB(A)低減することができました。
さらに,モータ損失の発生原因を定量的に分析し,損失を最小化しながらトルクが最大化する技術を開発したことで,従来モータに比べて,損失が約24%低減しました。ホールディングトルクは24%向上し,モータ表面の温度上昇は半減しました。 このように,当社の最新の5相ステッピングシステム「SANMOTION F5」は,高トルクで,振動騒音が小さいだけでなく,温度上昇も低く,人の近くで使用する装置にも適するように進化しています。

サーボアンプの設計技術の進化

■プリント基板の設計技術
サーボ制御の高性能化や,産業用Ethernetの普及などにより,サーボアンプ内部の電子回路は高速化と高密度化が進んでいます。それにともない,サーボアンプ内で発生する電磁ノイズの制御や,外部からの電磁ノイズに対する耐性を上げることは,製品の信頼性において重要なポイントです。 当社は,ノイズレベルとノイズ分布を可視化できる近傍磁界解析システムを用いて,試作段階でプリント基板から発生する電磁ノイズの原因を解析し,配線パターンや部品配置の見直しに対する効果検証をおこないました。 後工程のノイズ試験を実施する前にプリント基板の品質を確認できるため,設計が効率化できます。

■ソフトウェアの設計技術
サーボアンプは,より使いやすさを追求するため,サーボチューニング支援機能,各種診断・監視機能など多機能化しており,ソフトウェアの規模も増大しています。それにともない,製品開発全体に占めるソフトウェアの設計・評価試験に要する時間の割合が増えています。 限られた開発時間でもソフトウェアの品質を確保できるように,ソースコードにおいては,C言語のもつ優位性を利用しながら,信頼性と安全性を高めた自動車業界標準のMISRA-C(*)コーディング規約に従ったプログラムを開発することで,品質を向上しました。また,ソフトウェアの検証には,最新の動的解析ツールを導入し,単体テストの自動化を実現しました。これにより,結合テスト段階で発見した不具合の修正に対する再検証が容易になり,ソフトウェアの品質を確保することができます。

* Motor Industry Software Reliability Association

サーボシステムは,電気エネルギーを機械エネルギーに変換する「エネルギー変換機器」であり,その本質は,小型軽量で高効率を実現することです。今後も,「小型・軽量,高効率,低騒音」をさらに追究するとともに,IoTに代表される情報通信技術を活用することで,変化する市場のなかで,お客さまとともに「新しい価値」を創出できるサーボシステムを提供し続けていきます。

公開日: 2018-12-09 00:00