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コラム
山洋電気の歩みと技術革新(29)

小容量UPS「SANUPS A11M」シリーズの開発

History
歴史

近年の情報通信技術の発展に加え,高性能な情報端末であるスマートフォンやタブレットなどの電気機器の性能も進化してきました。これにともない,一瞬の停止も許されないシステムが増え,無停電電源装置(以下,UPS)の役割も重要になってきました。
小容量UPS「SANUPS A11M」シリーズは,鉄道や高速道路の管理システムで使われてきた「SANUPS ASE-H」(以下,従来品)の後継機として,高い信頼性を要求される用途に最適なUPSです。

個別制御方式の並列制御による高い信頼性

「SANUPS A11M」(8kVAラックマウント)
図1 「SANUPS A11M」(8kVAラックマウント)

インバータの出力は交流電圧であるため,インバータユニットを並列に接続する場合,すべてのユニットの電圧の振幅・周波数・位相などを完全に合わせないと電流のバランスを取ることができなくなります。インバータを並列に接続する制御方式として,共通制御方式やマスタースレーブ方式などがありますが,制御回路や制御・通信線など共通部分が多く,増容量には向いていますが高信頼とはいえません。
これに対して「SANUPS A11M」は,共通制御部を設けず,ユニットごとに独立した制御回路を用意し,個別に制御することによりインバータの並列運転を実現しています。
装置の始動・停止,計測値情報を共有しつつ各ユニットを個別に制御できるため,ユニット間の通信が切断されても,交流運転中はもとより,バックアップ運転中においても,並列運転を維持することができます。

「SANUPS A11M」(8kVAラックマウント)
図1 「SANUPS A11M」(8kVAラックマウント)

入力電圧のワイドレンジ化と動作温度範囲の拡大

企業の海外進出にあたり,インフラの整備が不足し,電源系統が不安定な地域でUPSを使用した場合,電圧や周波数の変動で頻繁にバッテリから給電することになり,バッテリの消耗が早まります。こうした課題を回避するため,入力電圧範囲を55V~150V(100V 系),110V~300V(200V 系),入力周波数範囲を40Hz~120Hzとワイドレンジ化しました。また,動作温度範囲が-10°C~55°Cになり,設置場所は従来よりも幅広く選べます。

バッテリ管理機能

定期的に自動でバッテリテストをおこなう機能を備えています。さらに寿命警告,バッテリ運転積算時間,充電率,バックアップ予測時間などさまざまなバッテリ管理機能を搭載し,バッテリの信頼性の向上を図っています。

ネットワーク機能

「SANUPS A11M」にコンピュータと接続するためのシリアルケーブルが標準で添付され,市販のUSBケーブルでも接続できるように設計されています。また,当社の無償でダウンロードできるUPS管理ソフト「SANUPS SOFTWARE STANDALONE」で簡易的なUPS管理がおこなえます。さらにネットワーク環境での高度なUPS管理をおこなうために,オプションのLANインタフェースカードとUPS管理ソフト「SANUPS SOFTWARE」も用意しており,柔軟かつ強力なネットワーク環境が構築できます。

当社独自の並列運転制御技術を用い,動作温度範囲,入力電圧・周波数範囲をワイドレンジ化したUPS「SANUPS A11M」について紹介しました。
数kVAの小容量クラスにおいて並列冗長運転ができるUPSは世界的に見ても少ないため,小容量ながら高信頼性を必要とするお客さまに貢献できるUPSです。

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