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山洋電気の歩みと技術革新(31)

新たな夢を実現する技術 パワーシステム

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歴史

近年,日本各地で自然災害による大規模な停電など,ライフラインの被害が大きなニュースとなっています。これまで主に屋内に設置され通信設備や工場設備のバックアップの役割を果たしてきた無停電電源装置(以下,UPS)ですが,このような状況から,今後は屋外に設置された機器を,長時間,安定してバックアップすることで社会に貢献するという新たな活躍の場が増えていくことが予想されます。
このような市場要求にこたえ,今後の屋外用途の新たな市場に製品を導入するための技術について紹介します。

無停電電源装置における技術

これまで主に屋内に設置されてきたUPSは,近年のモバイル機器の普及や震災の教訓などから,コインパーキング,交通信号機,携帯電話の通信基地局,屋外監視カメラ,防災設備など屋外にも設置されるようになりました。

「SANUPS N11B-Li」シリーズは,屋外設置用として,幅広い温度範囲(-20˚C ~+50˚C)で動作することで極寒,酷暑の地域でも安心して使用できる装置として開発しました。
また,屋外設置の場合,日常の定期点検やバッテリ交換が容易にできない設置環境であることから,防水・防塵対策(保護等級IP65※1)を施し,リチウムイオン電池を搭載することで長時間のバックアップと小型化を両立しながら,メンテナンスフリーを達成しました。この開発により,屋外に電源製品を設置するための実装技術を確立できました。

「SANUPS N11B-Li」シリーズ熱流体モデル解析の例
図1 「SANUPS N11B-Li」シリーズ熱流体モデル解析の例

屋外に装置を設置し,長期間,安全に稼働させるためには,装置自体の耐温度性能を向上させるとともに,装置を納めるための収納箱の性能も重要となってきます。
本製品の開発においては,屋外でも設置できる仕様にするため,パワーコンディショナの開発にて確立した実装技術を一部採用し,保護等級IP65の密閉構造としました。その際,熱流体解析シミュレーションにより内部の熱の流れを検証し,熱を効果的に循環させ,筐体全体を使い外部に放出できるように,最適な構造およびレイアウトを設計しました。
熱流体解析の一例を図1に示します。

「SANUPS N11B-Li」シリーズ熱流体モデル解析の例
図1 「SANUPS N11B-Li」シリーズ熱流体モデル解析の例

これにより,保護等級IP65の密閉構造を実現し,一部に熱が集中することでUPSの性能や信頼性を低下することなく,屋外に設置できる信頼性の高いUPSを開発できました。
また,屋外に設置する装置として,直射日光の影響が収納箱内の装置に及ばないように考慮する必要があります。このため,収納箱の外側に遮熱板を取り付け,真夏の炎天下における暴露試験と検証をおこなうことで,収納箱と遮熱板の間隔や通気構造の最適化をおこないました。
その結果,直射日光の照射により遮熱板表面は周囲温度より,15˚Cから20˚C程度上昇しますが,筐体内部への温度上昇の影響は5˚C程度に抑制できました。

パワーコンディショナにおける技術

これまでの太陽光発電システム用のパワーコンディショナ「SANUPS P73H」,「SANUPS P73J」に加え,風力発電・水力発電システム用として,「SANUPS W73A」では系統連系タイプと自立運転機能を搭載した連系自立タイプを開発しました。

系統連系専用のパワーコンディショナは,商用電力系統が停電すると,電力を使用できませんが,連系自立タイプは,自立運転機能により,災害時などの電源確保に使用できます。また,離島などの無電化地域における独立電源としての活用も期待できます。
風力発電および水力発電では,システムの構成上発電機が発電した交流電力をパワーコンディショナが扱う直流電力に変換する必要があり,高効率な整流器が必須になります。
そこで出力容量10kW以下の風力および水力発電システムに使用できる専用の整流器ユニット「SANUPS W75A」を新たに開発しました。

「SANUPS W75A」はパワーコンディショナとともに,屋外に設置されるため,耐環境性の高いシステムを構築できるように,パワーコンディショナと同等の防水・防塵の保護等級IP65とする必要がありました。
そのため,冷却方式として冷却用ファンのない自然空冷方式を採用しました。整流回路で使用するダイオードの温度上昇を考慮して,放熱シミュレーションをおこない,大型の冷却フィンを採用しました。この冷却フィンを筐体の一部とすることで,密閉構造でありながら冷却性能を満足し,さらに高い静音性を実現しました。

パワーコンディショナ「SANUPS W73A」と整流器ユニット「SANUPS W75A」をあわせて使用することで,交流発電機を有する風力発電・水力発電などの再生可能エネルギー発電システムへのさらなる導入拡大が期待できます。
当社のこれまでのパワーコンディショナと整流器ユニットの開発によって,図2に示すように,ほぼすべての再生可能エネルギーを交流電力に変換できる発電システムの技術を構築しました。

発電システムの概要

図2 発電システムの概要

今後は太陽光発電,風力発電,水力発電のみならず,バイオマス,地熱発電など,さまざまな再生可能エネルギーを交流電力に変換できます。お客さまの仕様にあわせた装置のカスタマイズをおこなうことで,さらに市場の拡大が見込まれます。

今後も,屋外など過酷な環境でも安心して使用できるUPSやパワーコンディショナを提案し,お客さまの信頼に応えると共に,低炭素社会の実現に貢献していきたいと思います。
また,これまでとは異なる厳しい使用環境が要求される新しい分野へ,より高い品質の電源装置を導入するために,さらなる新技術の開発に挑戦します。

※1 IP65:「JIS C 0920 電気機械器具の外郭による保護等級(IPコード)」に規定されている等級分類で,じんあいの侵入がなく,あらゆる方向からの噴流水による影響がない。

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