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コラム
ものづくり最前線(3)

省エネ化のカギは“動作領域”―電力の有効利用に貢献する冷却ファン

Interview
インタビュー

このコーナーでは,さまざまなシーンで山洋電気の技術を支える人々を紹介していきます。
ものづくり現場では,日々何を考え,困難にどう立ち向かっているか。製品にこめられた想いをお伝えします。

近年,地球温暖化抑制の観点から,限りあるエネルギー資源を効率的に利用することが重要な課題となっています。さまざまな用途に使用されているファンに関しても高効率化を図り,少ない電力で高い冷却性能を備えた製品を開発することが継続的な課題となっています。
今回は,日々新製品の開発に取り組むクーリング設計チームに「電力の有効利用に貢献する冷却ファン」というテーマでお話を伺いました。
  • 設計部
    栗林 宏光

  • 設計部
    大澤 穂波

  • 設計部
    石原 勝充

  • 設計部
    皆瀬 尊

  • 「電力の有効利用に貢献する」という視点でファンの開発を始めたきっかけは何ですか?

    大澤

    各社,製品の消費電力低減に取り組んでいます。そのようななかで,大手PCメーカーのお客さまからファンの消費電力を低減してほしいというご要望をいただいたのが始まりですね。サーバ向けに,「この動作領域でのファンの消費電力をこれくらい下げてくれ」と明確なターゲットをいただきまして。それを実現するために「低消費電力ファン」を開発しました。

    低消費電力ファンの特長を教えてください。

    石原

    実際に装置に実装した場合を想定して,使う領域で効率が良くなるように,つまりお客さまに使っていただいたときに性能を発揮できるように設計した点が一番の特長です。
    お客さまによっては,カタログを見て最大風量が小さいから性能が悪いんじゃないかと思われることがありますが…。カタログの仕様表のなかにある最大風量というのは装置内が空っぽで,空気の流れを妨げるものが何も無い状態,最大静圧は,装置に開口部が無く,押し込まれた空気が出て行く逃げ道が無い状態です。そういった環境で使われることはまずありません。それを理解しているお客さまからは,実際に使用される動作ポイントでの消費電力や騒音を下げてほしいというご要望をいただきますね。

    栗林

    ファンの開発の歴史から言うと,あるときまではとにかく最大風量と最大静圧が大きいものが喜ばれ,営業からは,「最大風量と最大静圧が大きくないと見劣りして売れないよ」と言われました。ところが,消費電力がクローズアップされるようになってくると,動作領域での風量や静圧,消費電力を気にするお客さまが出始めました。

    大澤

    お客さまにファンの選定方法について講習会をするときには,まず装置のインピーダンスの把握が重要であることを説明し,カタログの風量-静圧特性上の動作ポイントを見てくださいとお伝えして,性能をPRしています。その効果もあってか,カタログの風量-静圧特性で動作ポイントを確認して当社の製品を選んでくださるお客さまが増えてきています。

    石原

    その他の特長としては,低消費電力ながら性能は業界トップ,信頼性は業界トップクラスの製品に仕上げた点です。使えば使うほど山洋電気のファンはいいと思っていただけると思っています。

    栗林

    長期に渡る信頼性試験や他社ファンとのベンチマークに力を入れているお客さまほど,当社のファンを高く評価いただき,採用してくださいます。

    低消費電力ファンだからこそ開発に苦労したという点はありますか?

    石原

    現存するファンの性能に対して消費電力だけを下げるというのは難しくて,モータから羽根から電子部品もすべて見直さないといけないので,そのあたりが苦労するところですよね。試作を何度も何度も繰り返して…

    大澤

    そうですね。羽根・フレームの設計については,ものによって試作回数は違いますが,普通の軸流ファンでも数十回はトライアンドエラーを繰り返して目標を達成する取り組みをしていましたね。
    ただ,最近では開発に既存品の特性を応用したり,数値解析を取り入れる試みにもトライしているので試作回数は減ってきていると思います。
    回路担当者は目標性能と開発途中の性能の両方を考慮して最終的な回路をイメージしながら検証をすすめなければいけない。回路設計も手間がかかります。

    皆瀬

    どういう回路にするかは苦労するところです。基板を試作するだけで約2週間。羽根やフレームの形状が変わるたびに回路検証をする必要性があるので,うまくいかなければ費用も時間もかかって,スケジュールがきつくなってしまいます。一発でいけばいいんですが…

    仕事をしていくうえで,こだわっている点はありますか?

    石原

    目標としてあげたものは譲れないですね。騒音も,風量・静圧も,電力もすべて。すべてが目標値またはそれを上回るものになるまで開発を続けます。妥協はしません。
    新しい構造が必要になった場合は,生産部にどうしてもこの形でないとこの性能が出せないと説明して協力してもらいます。必要であれば1日何度でも生産現場に行って想いを伝えて,やってもらいます。最初はこんなものできないと突っぱねられることもありますけど。

    お仕事のなかで心に留めていること,今後の抱負など教えてください。

    皆瀬

    回路設計担当としては,不具合や,設計不良を絶対出さないようにと常に思っています。せっかく良い製品を作っても不良が出てしまえば,お客さまに大変な迷惑がかかりますし,会社にとっても損失となってしまいます。とにかく品質は第一に考えて設計をしています。また,コストも常に意識した回路の設計や電子部品の選定も大事な開発要素になっています。

    石原

    開発しながら常に考えているのは,どこのメーカーよりもパフォーマンスの良い製品にするということですね。他社製品よりも良い性能にするということは,お客さまの装置でも良いパフォーマンスをだせるということなので,そこを一番に。他社製品の性能を少し超えたとしても,またすぐ超えてくるので,他社が追いつけないような性能のものに,常によりよいものを,と考えてやっています。その開発の目標を超えたとしても時間が許す限りさらに良いものを探ります。

    大澤

    とにかくスピードアップですね。効率よく開発をすすめて,できるだけ早く製品化するということを考えています。お客さまのニーズがあって製品化するわけなので,必要なタイミングを逃してしまうと,いいものができても採用していただけないことになりかねないためです。

    栗林

    自分の気持ちとして負けない,あきらめないということを心に留めて仕事に臨んでいます。今後の抱負としては,何か世界初のものを開発したいですね。難しいと思いますが。

    読者の方にお伝えしたいことは?

    大澤

    冷却に困ったら,まずは山洋電気にご相談下さい。解決策をご提案できると思います。

    石原

    とにかくファンに関するご相談がありましたら,どんな小さなことでも構いませんので,お気軽にご相談ください。力になれると思います。

    皆瀬

    短納期納品サービスもあり,サンプルもすぐ出せる状態なので,使ってみて評価していただければと思います。

    栗林

    品ぞろえはファンメーカーにおいてトップクラスですが,もしカタログにないものがあれば,ご連絡願います。お客さまのご要望に合わせたカスタマイズは得意ですし,小回りも利きますので,何か提案いたします。

    公開日: 2018-01-03 00:00