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ものづくり最前線(22)

ヨーロッパでの地産地消型ものづくりを実現 — SANYO DENKI EUROPE 新工場の挑戦

Interview
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このコラムでは,山洋電気の技術を陰で支える人々にスポットを当て,その想いや取り組みをご紹介していきます。

製造拠点を持つことが,単なる生産手段ではなく「現地に根ざした信頼の証」となる時代。山洋電気グループは,ヨーロッパ市場のニーズにより的確に応えるため,2024年フランスに新たなステッピングモーター組立工場を立ち上げました。
今回は,プロジェクトの中心メンバーである工場長に,戦略的意義と現地ならではの取り組みについて話を聞きました。

グループ3つ目となる組立工場設立の背景を教えてください。

▲Gilles YSEBAERT (Mr) Factory Manager

山洋電気グループは,国際的に展開する企業グループです。日本にルーツを持つことは確かですが,その成長は国境を越えた挑戦を通じて実現してきました。

このような国際性は,当グループに幅広い成長の可能性をもたらす一方で,世界各地の特性を考慮する責任も伴います。つまり,地球規模での課題を理解し,地域ごとの条件に応じて製品を差別化する必要があるのです。

他の国際的大手企業と同様に,現地での取り組みは,各地域のニーズに応じた持続可能なリソースを整えることによって実現されます。
ヨーロッパでは,グループ会社であるSanyo Denki Europe(SDE)が35年以上にわたり営業活動を展開し,欧州の高度な製品開発に貢献してきました。技術とノウハウをお客様と共有しながら活動してきましたが,次の一歩が必要とされていました。

現在のヨーロッパ市場では,山洋電気が「現地で生産に携わるパートナー」であることを示すことが極めて重要になっています。
それはつまり,以下の要素を考慮する必要があるということです。

  • EUの規制や基準への対応
  • 環境への配慮
  • 顧客パートナーのニーズ

ヨーロッパでの自然なプレゼンスと技術的リーダーシップを確固たるものにするため,グループとして欧州での生産能力を拡張することが不可欠でした。

▲Gilles YSEBAERT (Mr) Factory Manager

この工場の役割は何ですか?他の組立拠点とどのように異なりますか?

この工場は,グループの目標を的確に反映した施設です
高品質でありながら,お客様の個別ニーズに応える製品の製造を目指しています。

まず第一に,「需要に即した製造」が重要です
大量生産ではもはや市場のニーズに対応できません。当工場では,必要な構成部品の在庫を確保し,それらを組み合わせることで多様な完成品を組み立てられる体制をとっています。
これにより,輸送時間や通関手続きなどの制約を受けず、柔軟かつ迅速な現地生産が可能となります。 お客様の新製品開発に対して,試作段階から支援できる体制も整えています
さらに,私たち全員が関わるべき課題として,「地球環境への影響を減らす」ことにも取り組んでいます。部品の調達は年2回にまとめて行い,輸送の集約化と航空便使用の削減を目指しています。また,梱包材も最終製品の出荷時に再利用できる設計になっています。

この工場は,グループ全体の中でどのような位置づけにありますか?

この工場は,地域特性をふまえた持続可能な生産拠点として理想的に組み込まれています。

  • 当社の調達は,顧客のフォーキャスト(需要予測)を考慮した計画に基づいて行われます。お客様とのパートナーシップを基盤に,1年先の市場ニーズを見据えています。
  • 部品は,当社の従来の生産拠点で製造され,その品質はお客様からも高く評価されています。
  • SDEの組立工場では,供給された部品を受入検査し,ニーズに応じて組立を行います。組立計画も需要に応じて策定されます。
  • 生産中の品質管理に加え,製品完成後には性能に関する最終検査も実施されます。 この工場によって,本社工場、SDP工場と同じ品質レベル・手順を維持しながらヨーロッパ現地での対応が可能になりました。

この工場で主に組み立てている製品や組立の種類は何ですか?

当工場では,さまざまなタイプの組立作業を行っています。具体的には下記です。

  • ステッピングモーター(サイズ:42mm) の組み立て
  • ステッピングモーターとリードスクリューの組み立て
  • ステッピングモーターとエンコーダーの組み立て
  • サーボモータとギアボックスの組み立て

サイトの雰囲気やチーム構成について教えてください。

この新たな工場の立ち上げには,SDEの全社員の多大なエネルギーが必要でした。
この取り組みを通じて,私たちの既存の施設がこのプロジェクトには不適切であることが明らかになり,まず最初の課題としてオフィスの移転に全員が取り組むことになりました。
新しい建物の選定後も,施設を新たな用途に適合させるための調整作業や,将来の生産工場の構築といったさまざまな対応が必要となりました。

社員一人ひとりの全面的な貢献と努力は特筆に値します。
この工場は,社員の献身なしには決して実現できなかったのです。
もちろん,課題ばかりではありませんでした。
「ものを一緒に作り上げる」という共通の目的を通じて、チームの絆が深まったという,前向きな側面もありました。企業とはそもそも「共に挑戦する」ことから始まるものです。
そして現在では,この新しい拠点の立ち上げを成し遂げたことに対して,チーム全体が誇りを持っているのを実感しています。

この新しい工場の立ち上げに際して,人材育成や職場環境づくりにおいて特に注力した点は何ですか?

技術的な観点では,CE規格(欧州適合規格)が特定の設備をヨーロッパに輸入する際の大きな法的ハードルとなります。
このプロセスには多くの時間がかかるのですが,MC-E部門のチームの支援のおかげで製作された設備を問題なく導入することができました。

優先して取り組んでいるテーマはありますか?

この新たな生産設備を通じて,私たちが最も重視しているのは, お客様に対する存在感を高めること,そして製品開発のための信頼できるサポートパートナーとして認知されることです。
SDEにとっての最優先事項は,お客様ごとの特注製品の開発支援であり,それが結果として顧客への伴走型支援につながっています。

現在,私たちは年間50~70件の新規プロジェクトを展開しています。

  • 42% が Motion Company 関連プロジェクト
  • 58% が SanAce Company 関連プロジェクト

これらの開発案件は,必ずしもSDEで生産されるわけではありません。 約70%は本社工場での量産を前提としています。
したがって,グループ本体の全面的なサポートが不可欠であり,それによってはじめて新製品開発が円滑に進むのです。

最後に,社内外のパートナーや将来の仲間たちへメッセージがあればお願いします。

山洋電気グループは,製造業として信頼できるパートナーです。 私たちは自社のコア技術と製造品質へのこだわりに焦点を当てて成長してきました。
私たちのノウハウとチームの専門性を基盤に,今後も地球規模の課題に向き合っていきます:

  • より良い方法で,環境に配慮したものづくりを実現する
  • 現地生産を通じて,自然資源への負荷を軽減する
  • ローカル生産することで,業界のニーズを深く理解し、製品を最適化する
  • 日本本社の知見をヨーロッパの顧客に還元する
  • グループとしてのブランド力を高め,さらなるプレゼンス拡大を図る

まとめ

「現地で作り,現地に届ける」――それは、単なる効率の追求ではなく,パートナーとの信頼を築くための選択でもあります。この新しい工場が,どんな未来を形づくっていくのか。今後の展開に注目が集まります

公開日: 2025-07-23 14:30