
数日後に同社を訪れた山洋電気の営業担当は,D氏らより詳細なヒアリングをおこない,低騒音化に向けたポイントを整理しました。
「同サイズ(40mm角28mm厚)で,冷却性能を低下させずに,低騒音化を実現するには,ファンを構成するすべての部品を見直し,新しいファンを開発する必要がありました。しかし,J社の開発スケジュールの変更はできないため,ファンのサイズ変更を提案しました。」(山洋電気 営業担当)
J社は,既存の「40mm角28mm厚」タイプのファン2台構成に対して「60mm角25mm厚」タイプの静音ファン1台構成の提案を受けます。試行錯誤を繰り返すなかで,次期ワークステーション内の各パーツの配置を見直し,60mm角までならば搭載できることがわかりました。
さっそく,山洋電気は60mm角静音ファンの評価用サンプルをJ社に納品。同社は静音ファンの評価を始めます。
試作機での実機検証をおこない,静音ファンが期待通りの効果を発揮することを確認。1台でも十分な冷却性能を得られることで,低騒音・低振動化に対する課題をクリアすることに成功しました。
「想像以上に静音ファンの特性が良く,騒音や振動の面でも問題なく,期待通りの効果を発揮しました。そのため,開発スケジュールが短縮できました。これらに加え,スイッチングノイズも大幅に低減されていました。現行のファンでは,低速回転時に「ジリジリ」という磁気騒音が発生していましたが,ソフトスイッチングをするICが搭載されており問題ありませんでした。」(D氏)
静音ファンを実装することで,現行ファン2台で0.48m3/minであった風量を,1台で0.58m3/minを実現することができました。かつ,騒音は33db (A)から24db (A)への低減を実現しました。また,ファンの風きり音だけでなく,筐体との共振により発生する振動音も低減することができました。今回の「静音ファン」導入について,D氏はこう総括しています。
「24dBといえば,衣擦れの音より小さいレベルです。あまりの静かさに驚きました。これまでのファンに比べて,30%の低騒音化を達成できました。しかも,1台にしたにも関わらず,風量は0.10mm3/minアップしています。また,2台構成から1台構成になったことで,コスト低減も図ることができました。」
ユーザーのニーズを満たしながらも,パフォーマンス向上に成功した同社の製品は,市場優位性を確立し,今後さらなるシェア拡大が期待されています。