ここ数年,活性化の兆しを見せる業務用大判プリンタ市場。背景には,販促用ポスター,POP印刷,CAD図面や色校正出力など,印刷技術の進歩にともなうオンデマンド印刷の利用シーン拡大があります。また,官公庁や企業が印刷業務を内製化する“企業内印刷”の動きも,市場伸長を支えています。こうした状況からプリンタへのニーズは多様化しており,民生品と同様,コストパフォーマンスはもとより,操作性向上,省スペース化などが求められるようになっています。
大判インクジェットプリンタやプロダクション・プリンタなどの製造・販売を手掛けるQ社。近年,業務用大判プリンタは,印刷の高速化・高画質化に加え,装置の小型化・低コスト化など,顧客や市場からの要求がますます高度化しており,メーカー各社の大きな課題となっています。
Q社はこうしたニーズに応え,さらなる高速・高画質の製品を投入するべく次期モデルの開発を進めていますが,同社開発部ではいくつかの課題を抱えていました。
同社開発部のT部長はこう語ります。
「当社のプリンタには,冷却用として軸流ファン12台,紙送り用としてブロア8台の計6種類・20個ものファンを使っています。次期モデルで,プリンタの小型化・高速化を実現するにあたり,従来機より装置内の温度上昇が高くなるため,熱対策には以前より冷却性能の高いファンが必要でした。さらに,用紙搬送のための高静圧なブロアなどすべてのファンの見直しが急務だったのです。」
さらに,競合より早く新製品を投入するため,開発にあてられる期間はわずか1年足らずと,数年前の半分ほどにまで短縮されていました。
「開発リードタイムが短いため,部品選定は速やかにおこなう必要があり,信頼のおけるサプライヤーからの協力が欠かせません。ですが,現行モデルのファンは単一メーカーではすべて揃わず,複数メーカーから購入していました。発注管理も煩雑になりますし,納期のトラブルもあり,これも頭の痛い問題でした。
サンプルを発注してから製品が届くまでに1~2ヶ月かかることもありました。1社でもそのような状況になると,その間は開発がすべてストップしてしまいます。試作機を短期間で製作し評価したいのですが,仕様の見直しによる部材の再発注に時間がかかるため,多くのラインアップを持ち,短納期で納品できるところを探していました。」(T氏)
T氏はあるとき,定期営業で訪れた山洋電気の営業担当者にこうした問題を相談しました。
担当者は「お客さまが求めている性能のファンやブロアを数日で納品できますよ」と返答。「山洋電気の製品は品質・信頼性・性能が高くラインアップも豊富な反面,“納期がかかる”」というイメージを持っていたT氏は,この「短納期納品」という提案に驚きました。
担当者から詳しく話を聞いたT氏は,「短納期納品」対象の冷却ファンに,豊富なラインアップがあることを知ります。
「これなら,試作機の仕様見直しが発生しても,速やかに別のファンの評価・検証をおこなうことが可能です。今までは装置の見直しを想定し,必要以上に大きいサイズのファンを選定したり,冷却能力が不足していても無理をして使用していました。しかし,山洋電気の短納期サービスにより豊富なラインアップから最適なファンをすぐ選定できるようになりました。」(T氏)
消費電力削減が世界的なトレンドになるなか,装置の省エネ化のために,高風量・高静圧でありながら消費電力を大幅に削減した低消費電力ファン。冷却性能の向上だけでなく静音化も実現する,PWMコントロール機能付ファン。さらに,用紙搬送用の高静圧なブロアなど,20台のファンはすべて最適なものを選定できたため,装置の高性能化に大きく貢献しました。
部材の速やかな入手により試作工程はスムーズに進み,また,部品の手配窓口が一本化でき無駄な工数をなくすことができました。
「新モデル開発に必要なファンをすべて山洋電気1社でまかなえるので,複数メーカーへの問い合わせや納期トラブルなどが解決しました。面倒な発注管理や問い合わせがなくなり非常に助かっています。試作評価において装置の構成に見直しがあっても,選定し直したファンが数日で入手できるので,工程がストップせず,開発リードタイムの短縮につながりました。」(T氏)
こうしてT氏は,綿密な検証の後,次期モデル搭載の冷却ファン・ブロアについて,山洋電気製品の採用を決定しました。
T氏はこう語っています。
「限られたリソースと厳しい開発期間においても製品の性能向上を実現でき,感謝しています。これからもいろいろと相談に乗っていただきたいと思います。」
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