
世界的な成長産業である医療機器分野は,市場競争の激化とともに製品の低価格化が進んでいます。こうした状況下において国内はもとより,インド・中国などアジア諸国を含めたグローバルな競争に勝ち残っていくためには,低価格製品との差別化を図りさまざまなニーズに応える付加価値の追求が不可欠となっています。
各種医療機器・理化学機器の製造・販売をおこなうC社では,ユーザーから超音波診断装置の“騒音”について要望を受けていました。同社設計部長のK氏はこう語ります。
「超音波診断装置を使用する環境は暗所が多いのです。暗いところでは,装置が発する騒音は,患者にとって耳障りな音となり,ストレスの原因にもなっているとのことでした。また診療中の患者は精神的に不安定になっていることもあるため,こうした騒音によって不安感が助長されてしまう可能性もありました。」
騒音の主な原因は,装置冷却のため搭載しているファンの風きり音や,低速回転時に聞こえる「チリチリ」というスイッチングノイズでした。また,ファンと装置が共振し,騒音が大きくなっている可能性もあります。
※ファンの騒音について詳しくは山洋教室ファンの基礎知識:ファンの騒音と音圧レベル
C社は,速やかに装置の改善に乗り出しました。
「この機種には,電源部の冷却と筐体外部との空気交換用にそれぞれ2台のファンを使っていました。
近年は,装置の小型化にともない使用する基板の実装密度が上がっていて,今まで以上に熱を持つようになっています。騒音を低減するために,冷却性能を犠牲にすることはできません。この課題を克服し“十分な冷却性能の確保”と“騒音の低減”を両立できれば,競合に対して大きな差別化になると期待が持てました。
しかし,風量を維持しながら,低騒音・低振動を満足できるファンは,なかなか見つかりませんでした…。」(K氏)