店舗向け什器や厨房機器などの製造販売をおこなうS社では,ユーザーからの要望を受け,新たに食品用「常温陳列ショーケース」の開発に取り組んでいました。
これまでは,店舗で販売される揚げ物などの惣菜類は調理後に保温ショーケースに陳列されるのが主流でした。しかし最近では,常温ショーケースにすることで味の劣化を防ぎ,保存期間を長くする要求が増えており,新製品はこうしたニーズに応えるものでした。
しかし,試作機で検証したところ,保温ショーケースとは異なり,調理したての食品から出る湯気によって庫内に曇りが発生してしまったのです。同社装置設計部のK部長はこう語ります。
「湯気で中の商品が見えにくくなると購買意欲の低下につながります。ショーケースには鮮度保持とともに食品を見映えよくディスプレイする役目も求められるだけに,この曇りを取り除く必要がありました。」
K氏は,ファンを取り付けてショーケース内に送風することで曇りを防止しようと考えます。しかし,メンテナンスや消費電力における課題に直面することに。
「他の冷蔵ショーケースでも実績があったのでACファンを検討しました。食品用ショーケースは長期間にわたり使用するものなので,ファンには5年以上の期待寿命が求められました。ですが,ACファンではこれを満たすことができませんでした。また省エネ対応のための消費電力も重要なポイントでしたが,こうした要件を満たした最適なファンを見つけることはなかなかできませんでした…。」(K氏)
ほどなくS社を訪れた山洋電気の担当者は,当該製品の仕様を詳細に確認した後,LED照明搭載のためにDC電源が用意できている点に着目し,K氏に「DCファン」を提案しました。
DCファンはACファンに比べ寿命が長く消費電力も小さいのが特長。周囲温度60℃における期待寿命はACファンの25,000時間に対して40,000時間と, 1.6倍の耐久性を持ちます。
「まさに求めていたファンでした。ケース内の環境は常温なので実際には約65,000時間(約7.4年)は持つと見込まれ,メンテナンスフリーとするのに十分でした。」(K氏)
また, DCファンはACファンと比べ消費電力が3分の1以下になることから,K氏は山洋電気製DCファンの採用を決定しました。
山洋電気はその後もS社の開発サポートを継続。ファンの選定にあたっては,80mm角のファンでも十分要求を満たすことができましたが,あえて1サイズ大きい92mm角を選定し,回転数を抑えることで騒音を低減させるなど,装置の仕様を踏まえた最適な冷却ファンを提案し,スムーズな装置設計に貢献しました。
「このほか,コネクタ加工のカスタム対応によって,量産時の加工工数を低減できましたし,サンプルの納品も短期間で対応いただき非常に助かりました。
おかげさまで今回の『常温陳列ショーケース』はお客さまから高い評価をいただくことができました。今後,新製品を開発していくなかでDC電源を準備できない場合には,AC電源で動作して,DCファンと同様の性能を発揮するACDCファンなどもあるようなので,山洋電気に相談したいと思っています。」(K氏)
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