設備保守会社のK社は,取引先の一社であるテレビ局より,中継局の通信機器キャビネットの保守運用を請け負っています。K社のJ氏はこう語ります。
「無人中継局の多くは,交通が不便な人里離れた場所や山地などに設置されています。機器類に不具合が生じた際にはその都度部品や人員を確保し,速やかに現地へ派遣しなければなりません。もちろん,運用は順調に継続していましたが,急な故障が発生すると部品の手配や作業員のスケジュール調整が困難で…常々,もっと計画的にメンテナンスできないかと考えていました。」(J氏)
特にJ氏が重視していたのはファンの稼働でした。
「機器が安定的に稼働するように,通信機器キャビネットには冷却用のファンが搭載されています。ファンが停止したときにはすぐ対応できるように,停止時にアラームが出るロックセンサ機能付きのファンにしていました。しかし,アラームが出てから作業員を確保するため,作業員の手配がうまくいかないと,メンテナンスをおこなうまでに時間がかかり,熱暴走などで通信機器全体の稼働に影響を及ぼしてしまう可能性がありました。」(J氏)
J氏は,事前に適切なファンの交換タイミングを把握し,計画的にメンテナンスをおこなえるようにしたいと考えていました。
J氏は,エンジニア向けの産業用機器展示会に参加した際に,山洋電気のブースでこうした課題を相談しました。
課題をヒアリングした山洋電気の担当者は,J氏にパルスセンサ仕様のPWMコントロール機能付きのファンに「San Ace コントローラ」を組み合わせる提案をしました。
「提案いただいたファンは,回転速度を検出できるパルスセンサ仕様で,ファンの回転速度を制御できるPWMコントロール機能が付いているものでした。これと,コントローラや温湿度センサを組み合わせることで, 回転速度や電流,累積稼働時間などファンの状況をリアルタイムに計測できます。パソコンやスマートフォンなどの端末から遠隔監視できるだけでなく,しきい値を設定することでアラームを出すことができます。これなら事前に交換のタイミングを見極められるようになり,予防保全につながると期待できました。」(J氏)
強く興味を持ったJ氏は,社内で詳細を検討したところ,この提案の採用を決定し,手始めに一部の中継局に導入しました。J氏は導入後の効果についてこう語ります。
「ファンの運転状況を可視化できるようになったことで,メンテナンスを計画的におこなえるようになり,人員も効率的に配置できるようになりました。また,温湿度センサと組み合わせたことで,計測値をもとに条件設定をおこない,それぞれのファンが最適な回転数になるよう自動制御したことで省エネにも繋がりました。計測したデータはクラウドに保存して活用できるので,メンテナンスはさらに効率化できると期待しています。」
同社は今後,「San Ace コントローラ」とパルスセンサ仕様のPWMコントロール機能付きのファンをすべての中継局に導入していく予定です。
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