半導体製造装置や工作機械メーカー向けに,制御盤を製造するA 社。同社は制御盤に使用するファンについて多くの課題を抱えていました。同社設計技術部のS部長は,次のように説明します。
「一般的なACファンは,各エリアの電源周波数によって性能が変わります。60Hzで動作させた場合は,ファン1台で冷却できる装置でも50 Hzで動作させると冷却不足という場合があり,余裕を持ってもう1台ファンを搭載している装置もありました。また,制御盤はお客さまの電源事情に合わせて100V系・200V系などの電圧別にラインアップしています。入力電圧によって使用するファンが異なるため,ファンの選定や管理の手間がかかるという課題もありました。また,お客様が装置内のファンを交換する際の保守部品としても,電源に応じた複数のACファンを準備しておく必要がありました。」(S氏)
こうした課題から,A社はDCファンの導入を検討し始めました。
「DCファンは,ACファンのように電源事情による特性の変化がない点に期待したのですが,別途DC電源が必要になり,組み立ての手間がかかるということがネックになりました。」(S氏)
DCファンにしたいという思いを抱えながらも,S氏は情報収集を続けていました。
情報を集めていたS氏は,山洋電気の「San Ace φ172×150×51mm ACDCファン」 に注目しました。
「小型化したACDC変換回路が内部に搭載されているため,別途DC電源を用意しなくてもAC電源でDCファンの特長を得られる点に注目しました。ACDCファンは,DC電源とDCファンの組み合わせと同様,周波数による性能の変化がないため,50Hzであっても60Hzであっても安定した冷却性能を得られますし,使用電圧範囲は90V~264Vのワイドレンジであるため,AC100V系・AC200V系のどちらでも使用できます。」(S氏)
さっそく山洋電気に連絡を取ったS氏は,現状の課題を担当者に相談し,サンプルの評価を実施しました。
「期待どおり安定した冷却性能を実現できることを確認し,ほどなく採用を決定しました。導入後はファンを1種類に統一したことで,選定や管理にかかる工数を削減することができました。」(S氏)
さらに,今回の導入はA社に+αの効果をもたらしたといいます。
「今回のACDCファンは,従来のACファンよりも低消費電力・長寿命になりました。ACファンは非常に多くの設備や生産ラインの制御盤に使われているため,全体としての省エネ効果は大きく,脱炭素社会における省エネ化にも貢献できます。また,ACファンと比較して長寿命になったことで,従来よりも交換時期を延ばすことができ,メンテナンス工数の低減が期待できました。
当社では受配電盤などの取り扱いもあり,屋外も含め環境の悪いところで使用する機会もあるため,防水仕様のラインアップがあるのも魅力的です。またPWMコントロール機能付の製品を使えば,ファンの速度を変えることができ,さらなる省エネ化を謳える製品の構想も広がります。ACDCファンを評価し,メリットがよくわかったので,今後はACファンからの置き換えを進めていこうと思います。山洋電気にはこれからもいろいろと力添えいただきたいと思っています。」(S氏)
ACDCファンについて詳しくは「ACDCファンの特徴」もご覧ください。
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