各種電気製品の製造販売をおこなうA社は,新型コロナウイルスの感染拡大にともない,ワクチンや医薬品などを輸送・保管するための医療用保冷庫の開発に力を入れています。
新しい医療用保冷庫の開発を担当していたA社技術開発部のB氏は,こう説明します。
「当初は,従来製品で採用していた海外メーカーのファンを流用する考えでした。保健所や病院などに設置される保冷庫は人の近くで使用されるので,騒音はできるだけ抑える必要があります。
また,ワクチンなどの医薬品には厳重な温度管理が求められるため,装置の故障などによって保管している医薬品が使用できなくなるようなことは避けなければなりません。新しく装置を開発するにあたり,装置の電源や基板の冷却に使用しているファンについても,あらためて検討してみようと考えました。」
※騒音について詳しくは山洋教室ファンの基礎知識:ファンの騒音と音圧レベル
信頼性が高く,低騒音なファンを探して情報収集を続けていたB氏は,山洋電気のホームページに目を留めました。
「山洋電気の製品は,医療用機器など信頼性や静音性が求められる装置に多数の採用実績があることを知りました。」(B氏)
興味を持ったB氏はさっそく山洋電気に冷却ファンについて問い合わせをしました。
山洋電気の営業担当者は,B氏より開発中の保冷庫の課題を聞き取りしたうえで,DCファン「San Ace」9RAタイプ(92×25mmサイズ)を提案します。
「従来機種で使用していた海外メーカーのファンとカタログ値で比較したところ,風量・静圧は同等以上でありながら,騒音を低減できることがわかりました。また同社内での評価試験,製造時の検査体制など,高い品質と信頼性を確保する取り組みについても説明していただきました。」(B氏)
San Aceは,1965年に初めて国産のファンとして登場して以来,高い信頼性を保ちながら開発を続けてきました。長野県上田市と,フィリピン共和国スーピック経済特別区の2か所のテクノロジーセンターを拠点に,高信頼・高性能のファンを設計・開発しています。
DCファンは全機種に回転時の負荷が安定するボールベアリングと,マグネットと羽根を固定するローターカバーを採用し,高信頼と長寿命を実現しています。
生産技術の面でも,高品質な製品をご提供するための技術を蓄積しています。例えば,精密な自社オリジナル金型を製作し,短期間での高品質なものづくりを実現しています。また,生産工程では,寿命・信頼性に大きく関わるバランスの修正や検査をファン全数に対しておこなうなど,こだわり抜いた技術で生産に取り組んでいます。
その後,B氏はサンプルを入手し評価を実施しました。その結果,装置実装時においても冷却性能を満足しながら,騒音が低減できることを確認できました。さらに消費電力についても低減できることが確認でき,ほどなく採用を決定しました。
「低騒音なファンを紹介いただき,騒音の課題もクリアすることができました。また山洋電気のファンは,医療機器やデータセンターなど信頼性が重視される機器への豊富な採用実績があること,社内での厳しい評価試験や全数検査の実施など,高品質・高信頼に徹底したものづくりをおこなっていることを知り,高い信頼性を確信しました。
さらには,製品の仕様面だけではなく,コネクタの取り付けなどカスタマイズの希望にも,柔軟に対応していただきました。そのため,当社内での組立工数を大きく削減でき,医療用保冷庫をスピーディに製造販売する体制を整えられました。山洋電気の冷却ファンは,今回採用したサイズ・電圧仕様のほかにもラインアップが豊富なので,今後の製品開発においても積極的に採用を検討していきたいと考えています。」(B氏)
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