
地球温暖化など環境問題の深刻化にともない,カーボンニュートラル(温室効果ガスの実質排出ゼロ)達成が世界的に重要な課題となっています。市場においても製品の低消費電力化が求められているなか,さまざまな装置や製品に組み込まれているファンには,どのような性能が求められているのでしょうか?
2050年までのカーボンニュートラル達成を目指し,社会全体として環境負荷の低減に向けた取り組みが活発化しています。環境負荷の低減には,製品の低消費電力化が重要な要素のひとつです。ファンの消費電力を抑えることも,装置全体としての消費電力を抑えることにつながります。そのため,従来よりも消費電力の低いファンが求められています。
ファンには,交流(AC)電源で動く「ACファン」と直流(DC)電源で動く「DCファン」があります。DCファンは効率の良いDCモータで駆動することにより,ACファンに比べ消費電力が小さく,また寿命も長いことが特長です。消費電力を抑えるには DCファンを使用することが効果的ですが,DC電源を個別に用意する必要があります。そのため,AC電源でファンを使用している場合には,DCファンへの置き替えが難しいケースもあるでしょう。そのような場面では,ACDCファンがおすすめです。
ACDCファンは小型化したAC-DC変換回路をファン内部に内蔵しているため,交流電力を直流電力に変換して駆動します。よってDC電源を用意しなくても,低消費電力・長寿命といったDCファンのすぐれた性能を得ることができます。
図1のように,同サイズのACファンとACDCファンで比較した場合,風量は同等以上でも消費電力は約4分の1になる場合もあります。
▼図1
ACファンは多くの設備や,生産ラインの制御盤などにも使われています。小さな冷却ファンのひとつひとつの消費電力の差は軽視されがちですが,ACDCファンに置き換えることによって全体としての省エネ効果は,とても大きなものになるでしょう。
また,ACDCファンは低消費電力である点に加え,期待寿命が長いため,メンテナンス工数を抑えることも期待できます。
山洋電気では豊富なラインアップを取り揃えています。サイズ,シリーズによっては防水タイプ(保護等級IP56・IP68)もご用意しています。 ※詳しくはカタログをご覧ください。
【用途例:空調システムの送風,インバータや通信キャビネット,制御盤などの冷却】
各種店舗向けに冷蔵ショーケースなどの製造販売をおこなうC社。
開発部長のA氏は,新たな冷蔵ショーケースの開発に向けて顧客の要望を確認していました。
冷蔵ショーケースは年間を通して常に稼働しているため,大手スーパーの顧客からは「電気代が負担になっている。また,環境にも配慮して少しでも消費電力を抑えた製品が欲しい。」という要望がありました。
従来採用しているACファンよりも,低消費電力で寿命も長いDCファンを検討したいのですが,冷蔵ショーケースはAC電源での入力が基本です。A氏が希望する冷却性能と低消費電力の要件を満たすファンは,なかなか見つかりませんでした。
悩んだA氏は,山洋電気に相談しました。山洋電気の営業担当者は,DCファンのすぐれた性能をAC電源で得ることができるACDCファンを提案しました。
早速サンプルを取り寄せて評価をしたところ,冷却性能を十分に満たしていながら,従来採用していたACファンに比べて消費電力が約1/4に低減されることがわかりました。これなら,冷蔵ショーケースを複数台使用した場合,全体的な省エネ化に大きく貢献できます。
A氏は,ほどなくACDCファンの採用を決定し,顧客のニーズにあった省エネ化を実現する冷蔵ショーケースの新規開発を成功させました。
※1日24時間使用した場合の金額です。
業務用電力(2023年4月時点 当社調べ 1kWh=22.68円税込)で計算。
電力会社や月間の消費電力量によって実際の単価は異なります。
今回は,装置の低消費電力化につながるACDCファンをご紹介しました。
ACDCファンはAC電源で使用でき,低消費電力である点に加え,期待寿命が長くメンテナンス工数を抑えることができます。
山洋電気では,その他にもさまざまなファンのラインアップを取り揃えています。
監修:山洋電気株式会社 営業本部 クーリングビジネスグループ
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