空調機メーカーR社は,半導体製造工場や医療分野向けに,クリーンルームの施工や空気清浄ユニットの提供をおこなっています。近年,精密加工技術の進歩や医療の高度化とともにクリーンルームへの要求は厳しくなり,R社が製造するファンフィルターユニット(以下,FFU)にも,ユーザーからさらなる改善が求められていました。
清浄空間を作り出す FFU は, 陽圧空間を作るために高風量・高静圧性能が求められます。高度なクリーンレベルの維持や制御には莫大なエネルギーコストがかかりますが,その一方で環境意識の高まりとともに一層の「省エネルギー化」も求められるようになっています。
この相反する条件 ── 「高風量化」と「省エネルギー化」を同時に満たすためには, R社にとって技術的にいくつかのハードルを越える必要がありました。
R社の FFU には「遠心ファン」が多く使われていますが,国産品はほとんどないため海外メーカーに供給を頼っており,入手に手間がかかる難点がありました。 R社空調システム事業部設計部の O 氏はこのように語ります。
「当社が使用していたファンは米国メーカーのもので,注文してから実際に納品されるまで3週間以上かかっていました。当然送料もかかり,開発リードタイムやコストの面で足を引っ張っていました。必要な風量と静圧を確保しつつ環境性能を満たす ── そのためには現在使用しているファンを見直す必要がありました。」
また, R社は同時に装置の小型化も望んでいました。海外製のファンは,風量・静圧確保の理由からファンの大きさが φ 200~220mm と大型のものしかなく,装置の小型化を阻む要因にもなっていました。小型のファンを使うことで,従来より小型の FFU を開発したかったのです。
O氏の悩みを解消に導いたのは,とある展示会で見た山洋電気の遠心ファンでした。この遠心ファンは市場のニーズに応えるべく,長年培った経験と技術でファンの羽根形状を最適化,加えてモータ・回路を新規設計し,高効率化を図ったものです。φ175mmでありながら,R社が従来採用していたφ200~220mmのファンと同レベルの風量・静圧を確保し,さらに消費電力・騒音が低いとのこと。
この性能がFFUで発揮できればすべての問題が解決します。O氏は早速,営業にコンタクトをとり,導入を検討するためのサンプル評価を始めました。社内で製品評価をおこなった際の感触についてO氏はこう振り返ります。
「実際に動作させてみると,必要な風量・静圧が確保でき,また消費電力や騒音に関しても十分クリアしていることが分かりました。製品評価に割ける時間はあまりなかったのですが,『短納期納品サービス』により迅速に納入してくれたので評価スケジュールにも支障がなく,海外メーカーとの取引に比べスムーズにサンプルを入手することができました。」(O氏)
こうして性能を十分に確認し,本導入に至ったR社は,新たなFFUの開発に着手しました。San Ace 遠心ファンは「高風量・高静圧」かつ「低消費電力・低騒音」な遠心ファンとして期待通りのパフォーマンスを発揮。FFUの小型化に成功しました。
加えて,O氏が当初想定した以上の導入効果をもたらしたのです。近年,工場のクリーンルームではファンを常時フルスピードで稼働させるのではなく,最適な回転数に制御し,消費電力をいかに減らすかが求められています。
San Ace 遠心ファンは回転数を細かく制御できる「PWMコントロール機能」により状況に応じて回転数を調節。最適な回転数にすることで消費電力をおさえFFUのさらなる省エネルギー化に貢献しました。さらに,山洋電気の提案により,従来のAC電源のファンからDC電源にしたことも,大きな省エネ効果をもたらしたといいます。
こうした導入効果についてO氏はこのように語ります。
「無事,ユーザーの要求するレベルのFFUを市場に送り出すことができました。山洋電気の製品はこれまでの長年の経験と実績を背景に,当社が抱えていた多くの問題を解決するとともに,特に環境性能について多くの改善をもたらしてくれました。」
優れた環境性能を持つ山洋電気の「San Ace 遠心ファン」は,これからもR社の製品開発を支えていくでしょう。
遠心ファンについて詳しくは「遠心ファンの特徴」もご覧ください。
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