
X社は,基板単体型やオンボード型,ユニット型など,さまざまなタイプの機器組み込み型電源装置を開発・製造する電源メーカーです。特に情報通信機器向けのスイッチング電源を主力とし,汎用品からカスタマイズ品まで多種多様な製品を手がけています。
近年,この情報通信の分野ではICTの著しい進歩とともに,電源装置においてもより一層の省電力化や小型化,長寿命化といったニーズが高まっており,搭載する電源に対する,各機器メーカーの要求は厳しさを増しています。
X社においても,電力変換効率の向上や高密度設計など,さまざまな研究開発を続けてきましたが,その中でも“冷却効率の向上”は,信頼性の面からも重要な課題となっていました。
X社はこれまで製品コスト低減のために,廉価な海外製の冷却ファンを長く採用していましたが,徐々に,求められる冷却性能・静音・信頼性などの要件を満たせなくなっていたのでした。そこで,電源装置に搭載する冷却ファンの選定について,一から見直しをおこなうことにしました。
しかし,ここでX社は大きな壁に直面します。それは,最適な冷却ファンの“選定基準”でした。電源装置が搭載される機器ごとに,冷却ファンに求められる性能はさまざまです。たとえば,PC搭載時には,静音化が絶対条件です。一方で,サーバ搭載時には高い排熱性能を維持しつつ,低振動であることが要求されます。
X社が直面した課題について,同社技術開発部マネージャーY氏はこう語ります。
「電子機器の高機能化により,機器内部の発熱量が増加傾向にあり,さらに装置内部の高密度実装により,以前に比べて高い冷却性能が要求されています。そのため,冷却効率の改善は非常に重要なポイントでした。また,電源装置の長寿命化を求められる事案もあり,搭載機器それぞれの特性に合わせて,最適な特性やサイズのファンを選択・実装するのは容易ではありませんでした。」
また,海外メーカーとのやりとりは,納期および細かな要望に対するサポート面などにおいても制約が多く,製品開発におけるボトルネックのひとつとなっていました。