飲食店やホテル,病院,給食センターなどで利用される業務用厨房機器。誰が使用しても料理を美味しく仕上げられるというのはもちろんですが,近年では,調理時間の短縮化も求められています。加えて,省スペース化や省エネ性能も重視されており,メーカー各社は絶えず変化する市場ニーズへの対応を迫られています。
業務用厨房機器の開発・製造・販売をおこなうF社。同社は,これまで主力であった電気式のスチームコンベクションオーブン(スチコン)に加え,新たにガス式スチコンの開発に着手しました。同社開発部長G氏はこう語ります。
「スチコンは,ファンにより熱風を強制対流させるコンベクションオーブンと蒸気を組み合わせることで『焼く』『蒸す』『煮る』『炒める』などの調理ができる多機能加熱調理機器です。私たちがスチコンを開発するコンセプトとして,誰でも美味しく調理でき,調理した料理の味や品質を常に一定に保つということを重要視しています。」
しかし,電気により加熱する従来のスチコンは,調理庫内を均一に加熱するまでに時間がかかるため,温度ムラが発生し,料理や食材の仕上がりにバラつきが生じるなどの懸念材料も抱えていました。
「そこで,温度ムラを低く抑えられ,短時間での加熱が可能となるガス式スチコンを開発することにしましたが,庫内に効率の良い熱風の強制対流を発生させるとともに,調理方法に合わせてガスの燃焼に必要な微妙な空気量を調整するために静圧の高いファンが必要でした。」(G氏)
早速,さまざまな高静圧の軸流ファンを取り寄せ実機で評価をおこなったところ,ファンの羽根が破損する事態が発生。すぐに原因を調べましたが,原因が分からずG氏は頭を抱えることに。
「高静圧のファンは一般的にサイズが大きく,装置の小型化を考えると要件に合うファンはなかなか見つかりませんでした。なるべく小型で,高静圧のファンを探していろいろと試したのですが,ファンの羽根が割れるなどの問題も発生し行き詰ってしまいました。厨房機器を使う環境というのはけっこう過酷なんですよ。そこで,こういった過酷な環境にも耐えるファンが必要不可欠でした。」(G氏)
情報収集を続けていたG氏は,とある展示会で山洋電気のブースを訪れます。そこで,ラインアップの多さに期待を持って現状の課題を相談してみることに。
後日,山洋電気の営業担当から提案された「ブロア」に強く興味を持ったG氏は,さっそく評価用サンプルを取り寄せ,試作機に実装して性能評価をおこないました。
「97mm×33mm厚のブロアを提案していただきました。このサイズのモデルとしては屈指の静圧特性を誇る製品であると聞きました。しかも,PWMコントロール機能が標準で搭載されている機種だったので,外部からのパルス信号により簡単に速度制御ができました。スチコンの温度検出器などの回路と組み合わせることで,調理方法に合わせた微妙な風量調整や温度状況に応じた自動制御が可能になりました。ところが,評価中にまた羽根割れが発生してしまいました。」(G氏)
F社が次に解決すべき課題は,“羽根割れ”でした。原因究明と対策のため,F社と山洋電気の設計担当者は綿密な打ち合わせを実施しました。
「さまざまな検証をおこなった結果,羽根割れの原因は厨房で使用する食用油だということが分かりました。
山洋電気のブロアには通常,防油仕様の羽根は使用されていないそうですが,FA市場で認められた防油ファンの技術を活かして羽根をカスタマイズしてくださいました。これによって羽根の強度が向上し,要件通りの耐久性を得ることに成功しました。」(G氏)
こうした検証を経てF社は,ガス式スチコンへの山洋電気製ブロアの正式採用を決定しました。
「このブロアのおかげで,設定温度に対する温度ムラも解消され,より高品質な調理を実現できるようになりました。また,従来の電気式スチコンに比べ,消費電力はおよそ1/20となり大幅な省エネルギー化も達成。これは,当初想定した以上の効果でした。さらに,三相電源の確保が困難な厨房に対しても設置が可能となったので,設置条件に広がりができ,より多くのお客さまにご提案できるようになりました。」(G氏)
数ヶ月後,無事にガス式スチコン開発を終えたG氏はこう語っています。
「山洋電気の手厚いサポートと惜しみない技術協力には社内からの評価が高く,導入の最大の決め手となりました。結果的に,他社のファンでは実現不可能だった製品を開発することができ,非常に満足しています。」
ブロアファンについて詳しくは「ブロアファンの特徴」もご覧ください。
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