コンベアをはじめ各種物流・搬送機器のシステム構築をおこなうA社。同社は特定の市場をメインターゲットに業績を伸張させてきましたが,このほど経営基盤強化のため新たな市場への参入を狙っていました。
なかでも同社が着目したのが,近年目覚ましい成長を遂げる一般消費者向けのネット通販業界でした。そこで,通販業界向け自動仕分けシステムの開発に着手しました。
しかし,開発を始めてほどなくA社は技術的な課題に突き当たることとなりました。というのも,一般消費者向けの通販ではさまざまな商品を扱い,しかも小ロットで取り扱い件数が多いため,これまで以上に高速な仕分け性能が求められたのです。
同社開発部マネージャーF氏はこう語ります。
「通販会社は物流量が多く,仕分け能力アップのためにシステムの速度向上を目指しました。比較的,軽量物が多いのでモータ容量は問題なかったのですが,現行のインダクションモータでは仕分けの速度向上に限界があり,要求を満たせませんでした。」
また,インダクションモータでは速度制御範囲が狭いため,加減速時に振動が発生し,荷物が損傷するといった問題も抱えていました。
「最初に相談したメーカーからは,高性能コントローラからサーボモータまでのシステムを提案されました。サーボモータは絶対位置を検出できる多回転アブソリュートエンコーダタイプのものです。サーボシステムに置き換えることで,自動仕分けシステムの高速化と低振動化が実現できることが分かりましたが,従来のシステムより大幅なコストアップとなってしまったのです。通販業界はコストに厳しいので,残念ながらこの提案を採用することはできませんでした。」(F氏)
解決策を探していたF氏は,別案件でA社を定期訪問していた山洋電気の営業担当にこれらの課題を相談。すると営業担当は現在の課題とシステム要件を詳細にヒアリングし,後日「高性能コントローラも多回転アブソリュートエンコーダも不要です。」と提案してきました。強く興味を持ったF氏は詳しく話を聞くことに。
F氏がまず注目したのは,高性能コントローラが不要という点でした。
「山洋電気の提案は,従来のコントローラを流用し,エンコーダもインクリメンタルで十分というものでした。我々としては,システム停止時の位置検出のために,多回転アブソリュートエンコーダが必要と考えていましたし,そのための高機能コントローラも必要と思っていました。しかし,実機にて検証したところ目標の仕分け能力が達成できることが確認できました。
提案していただいたモータの最高速度は6000min-1で,現行のモータと比べ大幅な速度向上が可能でした。また,加減速時の振動制御にも優れ,仕分けシステムを高速化しても十分に振動を抑制できると分かりました。」(F氏)
こうして,山洋電気製サーボモータの採用を正式決定したA社。
「モータの評価の際には,数日でサンプルを納品いただきました。また,モータの採用決定後も技術サービスによる立ち上げ支援や営業の方のサポートにより,迅速な製品化が図れました。」(F氏)
数ヵ月後にリリースされた新製品は,“従来比約2倍”の高速化により,大幅なシステムの速度向上・振動抑制に成功し仕分け性能の大幅向上を実現しました。
F氏はこう語っています。
「当社の要求仕様を実現させるために最適なコストパフォーマンスのシステム提案と技術支援をおこなっていただき,感謝しています。これからも顧客のニーズに合わせた高性能なシステムの開発を目指していくなかで,山洋電気は強い味方となってくれると期待しています。」
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