ビデオゲーム,体感ゲーム,プライズマシンなど,各種アミューズメント機器の製造・販売を手掛けるZ社では,このほど新たな業務用ゲーム機の開発に取り組んでいました。
新型ゲーム機には,コアなゲームファンから家族連れまで多様なユーザーを取り込むために,これまでにないインパクトが求められました。
そこで考案したのが,プレイヤーが風を感じることでさらにゲームの臨場感を増す,「4D」の演出を盛り込んだゲーム内容でした。この体感効果を実現させるためには,ゲーム機内部にファンを搭載してプレイヤーに風を吹き付ける仕組みが必要です。しかしこれが,開発を進めるうえでの思わぬ落とし穴となったのです。
臨場感を出すためにできるだけ強い風を送りたかったのですが,ゲーム機の筐体サイズは決まっているため,ファンを実装するスペースは限られていたのです。そのスペースに実装でき,満足する風量が出せるファンはなかなか見つかりませんでした。Z社開発部設計チームのA氏はこう語ります。
「複数のメーカーにファンを提案してもらいましたが,どれも風量が足りませんでした。また,よりリアルな臨場感を作り出すためには風量の細かい調節が必須でした。こうした条件を考えるとファンのスペックについては妥協するほかなく,求められた演出は実現不可能なのではないかと,開発部内には一時あきらめのムードも漂いました…。」(A氏)
解決策を探していたA氏は山洋電気から,120mm角×38mm厚のDCファンの提案を受けます。
「提案を受けたとき,山洋電気のファンも他社と変わらないように見えました。カタログの最大風量だけを比較していたためです。しかし,営業担当者に指摘され実使用領域で比較したところ他社のファンよりも風量が大きいことがわかりました。」
強く興味を持ったA氏は,さっそく実際の性能を確かめるために評価試験をおこないました。
「検証してみると,十分な風量を得られることがすぐに分かりました。また,臨場感を出すための風量の調節に関しては,提案いただいたファンに標準で『PWMコントロール機能』がついていたので,細かい風量調節が簡単にでき,調節幅も広がり,思うような臨場感が出せるようになりました。最初は電圧でのコントロールを考えていて,なかなかうまくいかなかったので,まさに求めていたファンに出会えたという思いでした。さらに,リード長の変更,コネクタの取り付けなどのカスタマイズにも柔軟に対応していただき,高い社内評価に結びつきました。」(A氏)
こうして,Z社は山洋電気製ファンの採用を決定します。
その後,Z社は新たな「4D」体感ゲームの開発に成功。インパクトのある演出を実現したことで,マスコミやユーザーから高い評価を得ることができました。A氏はこう語っています。
「冷却用途以外でファンを使用したのは今回が初めてでした。この成功を受けて,今後は別のゲーム機で,たとえばボールを吸い上げたり飛ばしたりする仕掛けなどに,ファンの使用を考えています。山洋電気にはこれからもいろいろと相談したいと思っています。」
軸流ファンについて詳しくは「軸流ファンとは?特徴・構造・使い方」もご覧ください。
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