各種電源装置メーカーのT社。同社はこのほど,海外市場をターゲットにしたスイッチング電源の開発を進めるなかで,いくつかの課題に直面していました。T社技術開発部のY部長はこう振り返ります。
「新モデルは当社にとって戦略的な製品です。シェアをとるためには,大容量化ニーズに応えるだけでなく,小型で低騒音,さらに低消費電力化によるランニングコスト削減といった優位性を打ち出す必要がありました。」
まず,Y氏は装置に搭載するファンの見直しを図ることにしました。
「現行モデルに搭載しているファンをベースに,小型化,低騒音化,低消費電力化を実現するファンを選定しようとしていましたが,順調には進みませんでした。開発スケジュールが迫っているのに実機評価に時間がかかり,開発は行き詰まってしまいました。」(Y氏)
頭を悩ませていたY氏は,山洋電気の担当者とコンタクトを取ることで,解決の糸口を見つけました。
Y氏より課題をヒアリングした山洋電気担当者は,最適なファンを見極めるためには,まず装置のシステムインピーダンス(*1)やファンの動作風量(*2)を把握する必要があると説明。さっそく,山洋電気の「エアフローテスター」を持参し,開発中の装置の測定をおこないました。
「ファンの動作風量と,システムインピーダンスとの交点がファンの動作点になるそうです。この動作点をギリギリまで下げることで,最適なファン選定ができるということがわかりました。」(Y氏)
山洋電気担当者はこのデータをもとに新たなファンの選定をおこない,小型化などの要求を満たした最適なファンを提案したことで,新モデルの開発は一気に進みました。
そのようななか,Y氏はシステムインピーダンス,およびファンの動作風量を“実測”できる,「エアフローテスター」にとても興味を持ちます。
「今回は,ファンだけでなく,今後の新製品開発を見越してエアフローテスターも提案していただきました。これならば従来のように実機評価に頼ったファン選定ではなく,正確な測定にもとづき,最適なファンの選定が簡単にできると期待が持てました。また,大型のダブルチャンバー測定装置(*3)と比較すると安価なので当社にも導入可能でしたし,持ち運びができるサイズ・重量であることも大きなポイントとなりました。」(Y氏)
*1 システムインピーダンス:装置内部の風の流れにくさ。通風抵抗とも言う
*2 動作風量:実装したファンを回したときに,実際に装置内を流れる風量
*3 ダブルチャンバー測定装置:ダブルチャンバー方式の風量・静圧測定装置
このようにして,T社は「エアフローテスター」の導入を決めました。
山洋電気は,エアフローテスターを活用し要求に合うファンを導き出す方法や,カタログのスペックではなく実装時の性能によるファン選定についてのアドバイスなど,継続したサポートもおこないました。今回の導入についてY氏はこう語ります。
「山洋電気には,貴重なアドバイスをいただき,非常に感謝しています。実際に,現行モデルに搭載しているファンの動作風量を測定してみたところ,過剰な風量のファンを選定していたことが判明しました。システムインピーダンスや動作風量の実測が可能になったことで,選定の基準が明確になりました。今後,最適なファンを短期間で選定できるようになり,開発期間の短縮が期待できます。
また,『エアフローテスター』をうまく活用すれば,ファンの選定だけでなく,筐体設計の見直しやレイアウト改善が可能となります。小型化や軽量化,低騒音化など装置の付加価値向上も図っていきたいです。」
エアフローテスターについて詳しくは「ファンの風量と静圧」もご覧ください。
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