各種医療機器を開発・製造するN社では,画像診断装置の新モデルの開発を進めていました。開発担当者のA氏はこう語ります。
「画像診断装置は,体内の状態を画像化することで病気の早期発見や病巣の位置特定に欠かせない重要な医療機器です。高い性能が求められることはもちろんですが,患者のそばで使用するため静音性も重視されます。そこで,当社は静音化により差別化した製品を市場投入すべく,開発を進めていました。」
A氏はファンのカタログから現行より音圧レベルの低いファンをいくつか選びました。
「実際に装置に実装すると,装置内部の部品の配置などで,騒音が変わります。今回選んだファンを実装して,音圧レベルを測ったところ,静かにはなりましたが,どれも冷却性能を満足することができませんでした。」(A氏)
選定したファンを1個ずつ実装して測定しなくてはならないため,限られた時間のなか,静音性と冷却性能を両立できるファンを選定するにはどうすればよいのか,A氏は頭を悩ませていました。
ファン選定に悩んでいたA氏は,山洋電気の担当者に現状の課題を相談しました。
後日,N社を訪問した山洋電気の営業担当者は,持参した「エアフローテスター」で開発中の画像診断装置の通風抵抗を測定しました。
「最適なファンを選定するには,装置の通風抵抗(*)が必要です。通風抵抗とファンの風量-静圧特性との交点が装置に実装した時のファンの動作点です。ファンの動作点が分かれば,実装時の風量・静圧・音圧レベルがわかります。」(山洋電気担当者)
山洋電気担当者は測定結果を持ち帰り,後日改めてN社を訪問しファンを提案しました。
「山洋電気は,新たにBのファンを提案してくれました。カタログ上の数値では,現行ファンAの性能が優れているように見えますが,実際の動作点では,ファンBの風量と静圧が大きいうえ,音圧レベルも下げられることを説明してくれました。」(A氏)
提案を受けたA氏はさっそくサンプルを依頼し,実機評価をおこないました。結果,騒音は一気に10dBも低下しました。N社はその後,提案を受けたファンの採用を決定。大幅な静音化を果たした新モデルの画像診断装置を製品化に進めることができました。
* 通風抵抗:装置内部空気の流れにくさ。システムインピーダンスとも呼ばれる。
今回の提案を受けて,A氏は最適なファン選定を実現した「エアフローテスター」について興味を持ちました。
「今回の選定は,『エアフローテスター』で装置の通風抵抗を測ってくれたおかげで,開発期間も短縮できました。これならば,今までのように実機評価のみに頼ったファン選定ではなく,正確な測定に基づいて効率的にファンを選定することが期待できます。今後の筐体設計に活用できると社内でも判断され,導入が決まりました。今後は『エアフローテスター』を開発に役立てていきたいです。」(A氏)
エアフローテスターについて詳しくは「ファンの風量と静圧」もご覧ください。
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