生産・物流現場向けに,コンベアやピッキングシステムなどの製造販売をおこなうG社。開発担当のF部長はこう語ります。
「納入先の液晶パネルメーカーの話によると,液晶ディスプレイ用の特殊ガラスは厚さが1ミリ以下と非常に薄く,少しの衝撃でも微細な擦り傷がついてしまうそうです。ガラスには求められる滑らかさの基準が非常に高く,ローラコンベアとの接触により微細な擦り傷がつくとそのたびに破棄せざるを得ないと聞きました。今後,ガラス基板が大型化すると擦り傷がつく確率が増え,結果的にお客さまの生産コストを圧迫することになります。」
お客さまの生産コストを抑えるために,搬送面との接触による擦り傷をなくす必要がありました。G社は新モデルの開発にあたり,ガラス基板を搬送面から浮上させて搬送する空気浮上式コンベアの設計に取りかかりました。
「空気浮上式コンベアは,接触による擦り傷をなくすためにガラス基板と搬送面の間に薄い空気膜を形成します。空気膜の形成のためにファンの搭載品を試作してみましたが,縦横3m近い大型のガラス基板を浮上させる性能を持つファンでは消費電力が高く,音も大きいという問題が生じました。生産ラインにはコンベアが数百台設置されるため,ファンの消費電力も課題になりました。また,静かなクリーンルームの近くに設置されることが多いため,なるべく音を抑えてほしいという要望もありました。」(F氏)
F氏はインターネットで情報収集をおこなうなかで,山洋電気の製品に注目し,担当者とコンタクトを取りました。相談を受けた山洋電気の担当者は,課題を詳細にヒアリングしF氏に「二重反転ファン」を提案しました。
「3m近い大型のガラス基板を浮上させるためには,静圧が高いファンが必要だと説明を受けました。二重反転ファンは2組の羽根を互いに反対方向に回転させ,高い静圧を得られる仕組みになっています。また,PWMコントロール機能を用いて回転速度を最適に制御することで,消費電力も低減できるとのことでした。」(F氏)
提案を受けてF氏はさっそく社内検証をおこない,大型のガラス基板を十分な高さに浮上させて,傷をつけることなく搬送できることが確認できました。
「新モデルの空気浮上式コンベアでは,ファンのスイッチを頻繁にオンオフするため,静かな環境下では急激な音の変化が気になりました。そこで,ファン起動時の回転がゆっくりと立ち上がるようカスタマイズしていただきました。その結果,音の変化が少なくなり,顧客が満足できるレベルになりました。これなら,静かなクリーンルームの近くに設置しても安心してお使いいただけると思います。」(F氏)
F氏はその後も山洋電気の担当者と細かい仕様を詰め,新モデルの開発を終えました。 「山洋電気の迅速な対応のおかげで,新モデルの開発を順調に進めることができました。新モデルの空気浮上式コンベアは,ガラス基板を多く取り扱うお客さまに大変ご満足いただき,採用が決まりました。これからも山洋電気にはいろいろ相談したいと思っています。」(F氏)
二重反転ファンについて詳しくは「二重反転ファンの特徴」もご覧ください。
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