前回は軸流ファンを紹介しました。今回は軸流ファンの中でも特殊な二重反転ファンについて説明します。
二重反転ファンとは,軸流ファンを直列に2台つないだような構造をしているファンです。前段(風を吸込む側のファン)と後段(風を吐出す側のファン)は羽根の回転方向が異なっており,前段が左回転であれば後段は逆の右回転をしています。
構造的には,2台の軸流ファンを直列にしているだけのようにも見えますが,同じ軸流ファンを2台直列にしただけでは,二重反転ファンと同等の性能は得られません。
▲図1:二重反転ファンの構造
同じ回転方向の軸流ファンを2台直列にした場合,後段の羽根が前段からきた旋回する風をさらに強く旋回して吐出すため,空気が広がって流れます。
一方,二重反転ファンの場合では,後段の羽根が逆回転することにより,前段からきた風の旋回の流れを弱め,直進的な風の流れになります。
▲図2:空気の流れのイメージ
二重反転ファンは,前後の羽根の組み合わせ次第で性能が大きく変わります。
山洋電気の二重反転ファンは,風量・静圧・騒音・寿命を最大限に考慮して設計しています。
▲図3:通風抵抗と風量-静圧特性例
二重反転ファンは前段と後段の回転方向の違いにより,ファン内部の空気の流れる方向が大きく変わるため,同じ最大風量の軸流ファンより静圧が大きく上回ります。8時間目では羽根の表面をきれいに流れたり,渦を巻いたりを繰り返すような不安定な状態の旋回失速領域がP-Q特性の中間付近に存在することを学びましたが,二重反転ファンは,P-Q特性がフラットになる範囲に羽根の旋回失速領域があります。
▲図3:通風抵抗と風量-静圧特性例
二重反転ファンは,旋回失速領域がP-Q特性上の左寄りにあるので,最適な使用範囲が広く,通風抵抗が高い装置でも,障害物に負けることなく風を送りだすことができます。
つまり,小型で実装密度の高い装置や,冷却対象物に直接風を当てて冷やすのに適していると言えるでしょう。また,風を遠くまで送るような使い方もできます。
具体的な活用事例をいくつかご紹介します。