装置の用途や性能に合わせて,ファンも特殊な環境に設置される場合があります。山洋電気はみなさまの装置が使われる環境に合わせて,特定の耐久性のあるファンをご用意しています。今回は,防水ファン・防油ファン・耐温ファン・耐Gファンをご紹介します。
標準ファンは水や油がかかると内部の電気部品に悪影響を及ぼして故障してしまいますが,防水ファン・防油ファンは,水や油がかかるような環境でも使用できます。防水・防油対策をしたファンと標準ファンとの大きな違いは2つあります。
1.電気部品であるモータと回路基板に樹脂でコーティングを施し,水や油が浸入しない構造。(図1)
2.羽根とフレームの隙間を広げることで,油の固着による羽根のロックを防ぐ。(図2)
▼図1
▼図2
防水ファンを検討するときによく耳にするIPとは,一体どのようなものでしょうか?
保護等級(IPコード)は,機器内にある電気部品(ファンの場合,電子部品およびモータコイル)に対して,異物の侵入に対しての保護を0~6まで,水の浸入に対しての保護を0~8までの等級で表したものです。
たとえばIP65の場合は,異物の侵入に対しての保護が「6・耐塵形」,水の侵入に対しての保護が「5・噴流に対して保護」になります。(図3)必要とされる保護等級は,使われる環境により異なりますが,一般的にはIP55,65,67,68などの等級が多く使用されています。
※保護等級(IPコード)は,IEC(国際電気標準会議)60529で規定されています。
▼図3
当社の防水ファンはIP54~IP68の防水性能を有しています。
IP codeとは : 外来固形物侵入,水の浸入に対する保護の等級を表すものです。
IP54:多方向から水の飛まつを受ける環境下でも安定して動作します。IP56にくらべ防水性能は劣りますがコスト面で優位性があります。
IP56:多方向から水の直接噴流を受けるような厳しい環境下でも安定して動作します。
IP68:継続的に水没しても内部に浸水することなく安定して動作します。(※水中での使用はできません。)
多くの標準ファンは,使用温度範囲(-20℃~+70℃)を高温側でも低温側でもオーバーすると故障または正常な動作ができなくなります。ファンの耐温性を強化すれば,周囲温度が苛酷な環境でも動作できます。
山洋電気の耐温ファンは,低温側では-40℃,高温側では+85℃までと使用できる温度環境の幅が広くなっています。構成部品のなかで低温に弱い部品および高温に弱い部品を,どちらでも問題なく動作できる構造・回路にすることで,使用温度範囲のワイドレンジ化を達成しています。
耐Gの「G」は加速度です。CTスキャナーのような装置に搭載されているファンには,高い遠心加速度がかかります。標準ファンの仕様では,高い遠心加速度に耐えきれず,最悪の場合ファンが装置内で分解する恐れがあります。近年当社が開発した耐Gファンは,高剛性のアルミフレームを採用したうえ,羽根とローターカバーを一体成形する構造を採用し,部品同士の接合強度を増すなど,高遠心加速度に耐えることを可能にしました。
このように,世の中には標準ファンでは対応できない特殊な環境があります。山洋電気ではこれまで培ってきたさまざまな技術を応用してファンの耐久性を強化し,ファン自身に耐久性を持たせました。それにより,装置側での対策を省くことができ,装置の小型化や使用環境の幅を広げることに貢献します。ファンを設置する環境が特殊でお困りの際は,ぜひ山洋電気へご相談ください。
監修:山洋電気株式会社 クーリングシステム設計部
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