PWMコントロール機能とは,「Pulse Width Modulation(パルス幅変調)」を用いた制御機能であり,コントロール端子-GND間に入力するパルス信号のデューティ比を変化させることにより,ファンの回転速度を外部からコントロールする機能です。
装置の発熱状態(負荷状態)の変化に応じて,必要なときに最適な風量を調整できるため,効率よく冷却でき,消費電力の低減や装置の低騒音に効果があります。
※当社製品の例でご説明しています
PWMコントロール機能付きファンは,以下の特性のように,入力するPWM信号のデューティ比に応じてファンの回転速度が変化します。
使用者自身で回転速度の設定ができ,必要なときに必要な回転速度で運転ができます。
また,使用者の要求にあわせて,PWM信号に対する回転速度をカスタマイズし,ファン停止や低速回転するなどの仕様にすることもできます。
以下の内容は,PWMデューティサイクル0%時にファンが停止する仕様の特性例です。仕様は型番ごとに異なりますので,詳細はお問い合わせください。
PWMデューティ・回転速度特性グラフの破線,もしくは線がない部分は,回転速度が安定しない領域を示しています。 (上図ではPWMデューティサイクル:20%以下)
PWMコントロール制御のためには,PWM回路をあらたに設計する必要がありました。 この製品を使用すれば,あらたな回路設計せずにPWMコントロール機能付きファンを活用でき,装置の低消費電力,低騒音に貢献します。
定格電圧 12 V/24 V/48 Vのファンと共通の電源で使用できます。
PWMコントロール機能付きファンを最大4台まで接続して使用できます。
電圧コントロール,可変抵抗コントロール,サーミスタコントロールが可能です。
当社製PWMコントロール機能付きファンを適用した例を紹介します。
装置上の空気温度や部品温度を感知するサーミスタと,PWM制御回路の組み合わせにより,装置の温度変化に応じてPWMコントロール機能付きファンを制御します。
デジタル入力(PWM信号)による制御のため,ファンの種類や入力電圧に関係なく,複数のファンを同時に制御することができます。
図のように,装置内にPWM特性の異なる製品を複数設置し同時に制御することで,装置の状態の変化に応じて必要な風量を調整できるため,消費電力の低減や装置の低騒音に効果があります。
モード | PWMデューティ | ファンA | ファンB,C |
フル運転 | 100% | 5000 min-1 | 5000 min-1 |
通常運転 | 60% | 3500 min-1 | 4000 min-1 |
スタンバイ(省エネ) | 0% | 停止 | 1500 min-1 |
防犯カメラをはじめとするセキュリティ関連機器の製造販売を手掛けるO社。同社ではこのほど,高画質なフルHDの屋外設置型防犯カメラシステムの開発に乗り出していましたが,装置内部の熱対策についていくつかの課題を抱えていました。O社設計開発チームのTリーダーはこう語ります。
「新規に開発するカメラシステムでは,高性能な映像処理エンジンを搭載することによって,装置内部がかなり高温になります。はじめは,高風量のファンを検討しましたが,回転数が高く振動で映像のぶれが問題となってしまいました。回転数が低いファンでは振動は抑えられましたが,風量が足りず発熱を抑えきれませんでした。」(T氏)
T氏は情報収集を続けるなかで,「PWMコントロール」機能について興味を持ちました。
「PWMコントロール機能付きのファンであれば,パルス信号の入力で,ファンの回転数を制御できることがわかりました。課題だった騒音についても,この機能で解決できると期待しました。24時間屋外で稼働させる防犯カメラシステムなので,例えば比較的温度が低い夜間には,回転数を下げて騒音を抑えられると考えたのです。そこで,PWMコントロール回路の自社開発を検討したのですが,新規基板の設計工数や評価期間が予想以上となり断念しました。」(T氏)
情報収集を続けていたT氏は,これらの課題を山洋電気の営業担当者に相談することで解決策を見出します。
「はじめはファンの振動に関する相談をしたところ,山洋電気のファンに置き換えるだけで振動を低減できるという提案をいただきました。振動しにくい構造上の工夫や製造工程でのバランス取りに加え,高い組み立て精度により低振動化を実現しているなど,具体的な説明を聞いて興味をもちました。防犯カメラシステムには,熱に弱い部品が搭載されているので,冷却用のファンは非常に重要な役割を果たします。開発製品の画質と性能のバランスについてとても悩んでいましたが,山洋電気のDCファンなら,十分な冷却性能と振動の課題がクリアできると期待できました。」(T氏)
また,提案されたファンがPWMコントロール機能つきのファンだったことから,一度断念したコントローラ回路の開発についても相談したところ,山洋電気の営業担当者から基板タイプの「PWMコントローラ」を提案されました。
「『San Ace PWMコントローラ』は,ファンと接続するだけで簡単に使えるところに驚きました。サーミスタという温度センサにより,感知した装置内の温度に合わせ,ファンの回転数が自動的にコントロールされるので,風量を必要としない夜間などの騒音をさらに30db低減できました。」(T氏)
出典:山洋電気株式会社 クーリングシステム総合カタログ 技術資料
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