情報通信機器メーカーD社では,新たなサーバ用電源の開発に取り組んでいました。開発技術部のI氏は課題についてこう語ります。
「サーバの小型化にともない,構成要素である電源装置の小型化が求められています。電源容量を維持しながら小型化を実現するには,内部の高密度化が必要です。一方で,安定した出力を維持するためには,部品の発熱を抑えながら内部温度を規定の範囲内に維持することが,開発の課題となっていました。
しかし,装置の高密度化によって内部に風が通りにくくなり,内部の発熱を効率よく排出させるには,静圧の弱い現行ファンでは,装置を十分に冷却できませんでした。」
「また,サーバにはハードディスクなどの精密部品が実装されているので大きな振動は許されません。以前に高静圧のファンを使用したところ,振動の大きさが問題になりました。メーカーに話を聞くと,ファンの冷却性能を出すためには回転数を上げる必要があるようで,それが振動の原因になっているそうです。静圧の高いファンを採用したいのですが,振動でハードディスクに悪影響を与えることは,何としても避けたいのです。」(I氏)
現行品よりさらに高静圧なファンが必要となったD社は,条件を満たすファンを探し続けました。
課題解決のためI氏は,とある電源関連の展示会で山洋電気のブースに訪れ,担当者に課題について相談。I氏の課題をヒアリングした山洋電気の担当者は,新製品の「San Ace 二重反転ファン」40mm角を提案しました。
「サイズが40mm角と小型でありながら,現行ファンと比べると最大静圧が1.7倍もあることに驚きました。これなら部品が密集する新モデルの電源装置の内部を効率よく冷やせると思いました。開発スケジュールがタイトでしたので,すぐに社内検証をしたいと考えました。」(I氏)
I氏の話を聞いた山洋電気担当者は,評価用サンプルを提供しました。 そのサンプルを,D社にて検証を実施したところ,期待通り,新モデルの電源装置の内部を効率よく冷却できることを確認しました。
「提案されたファンは高い静圧を出しつつも,振動を低く抑えてくれました。回転数が現行ファンの1.5倍近く上がったため,振動面を懸念していましたが,検証の結果,現行ファンと同等レベルの振動であることが確認できました。これなら,ハードディスクに悪影響を及ぼさないレベルです。静圧が格段に向上しつつ,振動も抑えられていることが採用の決め手となりました。」(I氏)
その後,D社は「San Ace 二重反転ファン」40mm角の正式採用を決定しました。
「小型化と容量アップの要求を満たすサーバ用電源装置の開発が無事に成功しました。クライアントから高い評価を得ました。それまで,静圧か振動か二者択一を決断しなければならないかとあきらめかけていましたが,絶妙なタイミングで山洋電気からサンプル品を提供いただいたことで,開発に間に合うことができました。山洋電気の柔軟な対応に感謝しています。これからもいろいろ相談していきたいと思っています。」(I氏)
二重反転ファンについて詳しくは「二重反転ファンの特徴」もご覧ください。
公開日: