各種工作機械,FA機器などを製造するA社。同社はFA検査装置について,処理速度向上のためのモデルチェンジを計画していました。
開発部では,いくつかの技術上の課題とともに,熱対策に頭を悩ますこととなりました。A社の設計開発部チーフエンジニアのB氏はこのように語ります。
「処理速度向上にともない筐体内部の発熱量は大幅に増加します。そこで現行モデルに搭載されている冷却ファンでシミュレーションをおこなったところ,現行ファンを流用しただけでは冷却性能が不足すると想定されたのです。
従来は装置を密閉し,内部の空気をファンで循環することで冷却をしていましたが,モデルチェンジ後は内部循環だけでは冷却が十分でないため,外部の空気の取り込みも必要になることが分かりました。
外部の空気を取り込むということは,工場内の空気中に飛散しているオイルミストなどの付着が想定されるため,ファンが故障する恐れがあります。」(B氏)
そこでB氏らは,さまざまな冷却ファンで検証しましたが,どれも必要とするスペックを満たすことができませんでした。
B氏は別の部署で取引のあった山洋電気とコンタクトを取り,冷却ファンについて相談しました。A社を訪れた山洋電気の担当者が,B氏より詳細に課題をヒアリングして提案したのは防油ファンでした。
「提案していただいた防油ファンは,樹脂コーティングによって巻線や電子部品が保護されているため,工場内などオイルミストが飛散している環境下でも安心して使えます。さらに,最大静圧は現行ファンの約1.4倍とのことで,非常に高いスペックであることがわかりました。これなら装置内部を十分に冷却できるとともに,工場内の過酷な使用環境にも耐えられると期待が持てました。」(B氏)
提案に強く興味を持ったB氏は,さっそく評価用サンプルを依頼しました。
「サンプルはすぐ届きましたし,社内評価やプレゼンの際には山洋電気の担当者に風量と静圧の関係を示すP-Q特性などを説明していただきました。開発スケジュールはひっ迫していましたが,優れた耐油性や冷却性能を持っているファンなので,社内評価もスムーズにクリアできました。」(B氏)
こうしてA社は山洋電気の防油ファンの正式採用を決めました。
「担当者には,このほかにもコネクタ部分の変更などカスタマイズの相談に乗っていただきました。山洋電気にカスタム対応していただくことで,基板を変更する必要がなくなり,組立工数も削減できました。また,コネクタ加工も含めて製品保証してもらえるので安心でした。このカスタム対応は,試作機製作時には微調整が必要になりましたが,迅速に対応していただきました。」(B氏)
数か月後,A社は無事に新モデルの開発に成功しました。
「期待通り高い冷却性能を発揮しています。オイルミストの影響を受けない安定した動作を実現できました。今後も山洋電気にはいろいろと相談していきたいと思っています。」(B氏)
※防油ファンについて詳しくは山洋教室ファンの基礎知識:防水ファン・防油ファン・耐温ファン・耐Gファンの特徴
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