各種機器の設計・製造・販売,およびシステム開発を手掛けるZ社。同社は近年高まりをみせる環境・エネルギー分野への新規参入を果たした一社です。
EVが普及・拡大するためには,充電設備の拡充が必須条件となります。EV用充電器は今後,全国規模で数百万基の設置が見込まれているだけに,クライアントからの要求は非常に厳しいものでした。
充電器は屋外に設置されるケースが多いので,大容量の電力を安全にEVバッテリへ供給するために,防水性など高い耐久性を確保する必要があります。また,安定した電力供給を実現するため,信頼性が重要であることは言うまでもありません。
耐久性・信頼性確保に加え,要求されたのが,“消費電力のカット”です。Z社は「充電設備自体の消費電力が高い」という課題も抱えていました。
同社開発本部のI部長はこう語ります。
「充電器そのものの“省電力化”が求められていました。エコカーの充電設備として,その要求は当然のものでしたし,エネルギー規制が高まるなか,省エネは大きな訴求力ともなるはずです。要求は非常に厳しいものでしたが,逆に“信頼性確保”と“省エネ”を同時に実現できるならば,充電器市場で優位に立てると確信しました。」(I氏)
普及の過渡期にある今こそ,省エネで高品質な製品を送り出すことは,EV普及の非常に大きなポイントであり,また,メーカーに課せられた使命でもありました。Z社では,要件クリアに向けて積極的に改善策を検討することになりました。
改善策を模索していた開発本部のI部長は,とある展示会で山洋電気のブースを訪れます。その際の相談に対して,山洋電気の担当者がおこなった提案は意外なものでした。
「山洋電気の提案は,“ACファンをDC入力の防水ファンに置き換えてはどうか”というものでした。当社としては,ACファンの使用は言わば当たり前のことであり,DCファンは検討の対象には入っていなかったのですが,とりあえず話を聞いてみることにしました。」(I氏)
提案を受けた結果,防水ファンにさまざまなメリットがあることを知ったZ社は,さっそく「防水ファン」(120mm角38㎜厚)のサンプルを試作機に実装し,評価検証をおこないました。
「充電器は屋外に設置されることが多いため,防水対策は必須です。防水ファンは防水対策がほどこされているため,耐久性や信頼性の高さは明らかでしたね。またACファンに比べ,消費電力が小さいので,装置の省エネにも貢献することが分かりました。
さらに,提案いただいた防水ファンは今までのACファンと比べ,期待寿命が4倍長く,ファンの長寿命化によりメンテナンス工数の削減が期待できました。」(I氏)
“耐久性”“信頼性”の向上,そして“省エネ”に貢献するだけでなく,“メンテナンス工数削減”など,多くのメリットを確認できました。
※防水ファンについて詳しくは山洋教室ファンの基礎知識:防水ファン・防油ファン・耐温ファン・耐Gファンの特徴
こうして,数ヶ月にわたる詳細な評価試験の結果,Z社は防水ファンへの置き換えによる多数の効果を確認し採用を決定しました。
試作機での評価後,「防水ファン」は,Z社が受注していた「EV用充電器」に搭載され,期待以上の効果を発揮しました。期待寿命は4倍となり,25,000時間→100,000時間に向上※1。消費電力は70%削減できました。
今回の導入についてI氏はこう語っています。
「耐久性・信頼性向上,そして省エネという難問をすべて解決し,さらにメンテナンス工数の削減も期待できました。クライアントとの信頼関係構築はもちろん,自社の利益拡大に大きく結び付きました。山洋電気からの提案は,求められていた要件を満たすうえで欠かせないものでした。今後もEV普及のカギを握る充電器の設置拡充について,大きく貢献していけると期待しています。」(I氏)
※1 屋内環境 残存率90% 60℃,定格電圧,連続運転,フリーエアー状態での試算。
防水ファンについて詳しくは「防水ファン・防油ファン・耐温ファン・耐Gファンの特徴」もご覧ください。
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