全国10カ所に生産拠点と営業拠点を持つ金属加工メーカーK社は,本社基幹サーバと拠点ごとに設置された業務サーバにERPシステムを搭載し,受注・生産から出荷までの管理をおこなっています。しかし,関東,近畿,中国地方の各拠点に散らばるサーバの管理は,本部担当者にとって常に悩みの種でした。各拠点にシステム管理者はいるものの,ITインフラ専任ではないため専門知識に疎く,サーバ管理は仕事の合間に本部の指示を片手間でこなすのが精一杯だったのです。
同社情報システムセンター室のW室長はこう語ります。 「業務サーバは全国の拠点に散らばっているので,管理しようにも本部だけでは人手が足りず,メンテナンスなどは各拠点のスタッフに任せっきりでした。半年に一度,本部の人員が手分けして各地へ出向いていましたが,お世辞にも満足いく管理体制だったとは言えません。」
そんな折に問題は起きました。実際に停電が起きてサーバがダウンした際,重要なERPの在庫データが消失してしまい,業務が一時停止する事態に陥ったのです。サーバルームには常時商用給電方式のUPSを設置していましたが,原因はなんと,UPSのバッテリ切れ。幸い,このときは数時間前のバックアップデータを復旧することで大きな損害には至りませんでしたが,当然全社を巻き込む大問題となり,本格的なBCPの構築が求められたのです。
今回の問題は,安価な常時商用給電方式のUPSを使用していたため,頻繁な充放電がいつのまにかバッテリを劣化させ,停電時に機能しなかったことが原因でした。そこで同社は,信頼性の高い常時インバータ給電方式のUPS導入を検討しました。
「常時インバータ給電方式のUPSは高価ですが,落雷などにおける瞬時停電や,電圧・周波数の変動時にもバッテリを温存できるので,以前に比べて安心感はあります。しかし構造上,常に電力ロスがあるため,消費電力の増加によるコストも無視できない問題でした。」(W氏)
しかも,高信頼性のUPSを導入したところで,拠点での煩雑な管理は改善されるわけではありません。「コストと信頼性,そして運用面,すべての課題を解決する方法はないものか…。」UPSの選定はW氏のジレンマとしてのしかかっていました。
K社情報システムセンターのW室長が,山洋電気の営業担当に会ったのはそんな難題に悩んでいるときでした。「私が求めたのは,信頼性はそのままに電力および管理コストのかからないUPSはないものかということでした」(W氏)
営業担当者から返ってきた答えは,W氏のジレンマを十分克服するに足るものでした。それは,常時商用給電方式の低ランニングコストと,常時インバータ給電方式の高信頼性の2つを「いいとこどり」した「ハイブリッドUPS」の提案だったのです。
「ハイブリッドUPS」は,それ自体が長寿命設計であることに加え,電源の状態に合わせ自動的に最適な給電モードに切り替わる機能を持っているため,常に最も効率の良い運転を選択。こうした効率運転によって最大で47%*もの電力・CO2の削減ができるとのこと。信頼性とランニングコスト抑制の両立という,まさにK社が求めていた性能を持つものでした。
*当社従来品,常時インバータ給電方式UPS(1kVA)と比較
W氏は試験的に,まず数カ所の拠点に「ハイブリッドUPS」を設置し,実際の効果を検証。その結果,期待通り大幅な消費電力の削減を確認しました。また,電力だけでなく管理についても,多くの問題を解決できました。ファンは耐久性があるため交換不要。バッテリは自動的にチェックがおこなわれ,停電時に確実に動作する状態を保つので,以前のように肝心な時に動作しないという事故も未然に防げます。 「ファンやバッテリは長寿命設計ですし,UPSの状態は電源管理ソフトによって常に外部に表示されるので,安定した管理が可能となり,管理者の工数が30%も軽減できました。」(W氏)
さらにLANカードの使用によって,本社から全拠点の業務サーバのバックアップUPSを遠隔・一元管理することが可能となり,各拠点での煩雑な管理が必要なくなりました。現在はK社の全拠点でこの方法を採用しています。 「コストの問題以上に,企業責任としてBCPをきちんと構築したかった」と語るW氏。その願いはようやく叶えられたと言えるでしょう。
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