停電の種類には,「瞬低(しゅんてい・瞬時電圧低下)」「瞬停(しゅんてい・瞬時停電)」「停電」の3種類と「瞬断」があります。
ここでは,下図のように,送電線Aに雷が落ちた場合の3パターンの電源トラブルを解説していきます。
発電所を出発し,2回線で送られた電気は,途中の変電所で2回線を一つにまとめます。それを再度,2回線に分けて次の変電所でまとめます。そのため,雷が送電線Aに落ちるとその瞬間に,変電所内でも電圧が低下するため,そこから受電するA・B・C・Dすべての受電側の電圧が下がるという現象が起こります。
この電圧低下は,落雷が落ちた瞬間だけで発生し,一般的に1/000~10/1000秒の間で回復しますが,回復しない場合,電力会社は落雷発生時点から0.02~2秒の間で,落雷した送電線Aだけを切り離します。
そのため,A・B・C・Dは最大2秒間の電圧低下が発生することがあり,これを電力会社では「瞬低」と言います。
瞬低から回復しないことで切り離された送電線Aには,約1分後に自動で再送電が開始され復帰した状態に戻ります。送電線Aの電気が復帰するまでの約1分間を,電力会社では「瞬停」と定義しています。
自動再送電まで約1分間もあるので,「瞬時」とは言えないと思うかもしれませんが,1分以内の電力停止は電力会社が意図的に発生させている状態なので,電力会社では「停電」と呼びません。
電力会社が,切り離した送電線Aに約1分後に自動再送電をおこないます。再送電した際,再度電圧が異常となった場合,またA側の送電を止めます。その後,電圧異常の原因を探しますが,原因が排除されるまで,落雷があったA側は電力停止のままです。
このように約1分間以上長い電力の停止状態が続くことを,電力会社では「停電」と定義しています。
以上のように電力会社では,「瞬低(瞬時電圧低下)」「瞬停(瞬時停電)」「停電」の3種類の電源トラブルを定義しています。なお,「瞬時電圧低下」の「瞬低」と,「瞬時停電」の「瞬停」は,両方とも「シュンテイ」と略して言われています。発音が同じなので,聞いただけではどちらか区別が付きにくく,また,それぞれ対策が異なることがあるので注意が必要です。
瞬停・瞬低が,瞬断と言われる場合があります。一般的には,意図的に電気を切り替えるときの電気の停止が瞬断と言われることが多いようです。実際瞬停と瞬断は同じ定義になるのですが,電力会社が定義する停電の種類としては,「瞬低(瞬時電圧低下)」「瞬停(瞬時停電)」「停電」の3種類となります。
雷が電線などに落ちた瞬間に電線と地面が短絡して,電圧が低下することで瞬低が発生します。その他に台風などが原因で送電線を切断するなどで長時間の停電となる場合もありますが,主な原因としては雷です。
停電や瞬低・瞬停が起こると,そのたびに工場の装置が停止してしまう場合もあり,故障にもつながります。また故障には至らずとも装置の再起動に時間がかかり,その間の生産が止まってしまい生産効率が落ちるなどの影響が発生します。
過去には,1/10秒未満の「瞬低」によって,工場が2日間以上操業停止となり,莫大な損害を出してしまった例もあります。
以上のように,工場などの生産設備では,瞬低や瞬停が生産に非常に大きな影響を及ぼします。そのため対策装置を使用し,工場などの生産設備を安全に保護していかなければなりません。
瞬低・瞬停・停電の全てを対策できる「無停電電源装置(UPS)」の導入がベストではありますが,
コストやスペース面から導入が難しい場合,瞬低のみをカバーする「瞬低対策(補償)装置」も,対策として有効です。
停電や瞬低・瞬停(瞬断)は,ネットワーク環境やメモリデータへも,大きな影響を与えます。オフィスでのデータ取り扱い量が急増している昨今,ネットワーク機器の故障や,PCサーバ・メモリへの損傷は,データの損失等,事業に大きな影響を与えます。
またATM端末・POS端末・商業施設等,情報・通信を伴うありとあらゆる場所への影響が避けられません。
山洋電気の採用している瞬低の検出は,1/1000秒よりも速いスピードでおこないます。瞬停になる前の瞬低を検出し,電圧を整えるため,出力電圧と電流は無瞬断と言えます。
UPS内部の蓄電池(バッテリ)に蓄えられた電気によりコンピュータにつねに安定した電気を供給する装置です。瞬低・瞬停・停電の全てに対応できます。
詳細ページ:UPS(無停電電源装置)とは?仕組みや種類など,まとめて解説!
停電などの電源トラブルを回避する場合は,UPSを使用することが一般的ですが,特高受電の場合,電力会社と2回線受電の契約をするという選択肢もあります。この場合,「停電」になる確率が小さくなるので,「瞬停対策装置」「瞬低補償装置」で充分対応できるとも言えます。
電圧低下を検知すると瞬時に電力をバックアップし、設備の電源トラブルを未然に防ぎます。多くの瞬低対策(補償)装置は,瞬低のみをカバーしていますが,山洋電気製は瞬停もカバーします。
瞬低・瞬停・停電を網羅した「無停電電源装置(UPS)」に比べ,省スペースで安価というメリットがあります。
当社の瞬時電圧低下補償装置とUPSと大きな違いは蓄電デバイスです。UPSは主に鉛蓄電池を使用しますが,瞬時電圧低下補償装置は電気二重層キャパシタ(コンデンサ)を使用します。電気二重層キャパシタは瞬間的に大きな電流の受電・放電に優れているので,瞬低・瞬停のように短い時間に大きな電力を放出する装置に利用されています。瞬停対策装置では電解コンデンサを使用するメーカーもあります。
また,UPSには給電方式が3種類ありますが,瞬停対策装置などには常時インバータ給電方式を採用するメーカーが無いため給電方式は2種類で,一般的には「常時商用給電方式」がほとんどのため2ms程度の瞬断をともないます。山洋電気は「パラレルプロセッシング給電方式」を採用していますので無瞬断です。常時商用給電方式は5時間目で説明した通り,インバータ給電に切替える際に,約2~10msの瞬断が発生します。この瞬断に耐えられない電気機器は,山洋電気のパラレルプロセッシング給電方式をおすすめします。
今回は,「停電の種類」について学んできました。実は電源トラブルは送電側だけが原因で発生するわけではありません。次回は,私たち電気を使う受電側が原因になる電源トラブルを学んでいきましょう。
執筆者:山洋電気株式会社 営業本部 シニアセールスエンジニア 西澤 敏幸
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