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【工場の種類別 UPS選定ポイント】製薬工場

製薬工場におすすめのUPS(無停電電源装置)とは?

製薬工場における生産活動は,厳格な品質管理が求められる極めて繊細な環境下で行われます。そのような環境において,厳格な品質と生産性を維持するためには,UPS(無停電電源装置)による電力の安定供給が非常に重要な役割を果たします。

この記事では,製薬工場における代表的なバックアップ対象装置として,クリーンルーム,分析装置,薬品保冷庫を取り上げ,それぞれに適したUPSや求められる性能・機能について詳しく解説します。

※人命に直接関わる医療機器などに使用の場合には,運用,維持,管理に特別の配慮が必要となりますので当社にご相談ください。

製薬工場でのUPSの代表的なバックアップ装置①:クリーンルーム

クリーンルームとは

製薬工場の生産活動は,バイオロジカルクリーンルームで行われます。バイオロジカルクリーンルームとは,製薬工場をはじめ,手術室,研究室などでの細菌による汚染防止や食品工場の腐敗菌防止,動物飼育施設の交差汚染防止などで必要とされる,粉塵だけでなく微生物や細菌も除去したクリーンルームです。

空気中の微粒子(ダスト)や微生物の汚染を極力抑えるために設計された,特別な清潔な環境のことを指します。温度,湿度,圧力などの環境条件も厳密に監視・制御されています。

人が入ることで無菌状態が保たれなくなるため,生産プロセス自体は無人の自動化された環境で行われることから,クリーンルームの中には多くの製造装置があるケースがあります。

クリーンルーム

クリーンルームにUPSが必要な理由

クリーンルームでは無菌状態を保つのと同時に,温度,湿度などの環境条件も厳密に監視・制御されています。停電などの電源トラブルが発生した場合,クリーンルーム内の重要な環境制御装置が停止し,環境に変化が生じます。加えて自動化された多くの製造装置の稼働も影響を受けることによって,製品の品質は大きく損なわれます。

そのことによって,仕掛品だけでなく,研究開発中の新薬を破棄したり,研究そのものが中断するなど,時間・費用共に甚大な損害を及ぼすリスクがあります。

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クリーンルームをバックアップするUPSとは

クリーンルームの規模に応じて,適切なサイズのUPSを選択する必要がありますが,全体バックアップとなるため,100kVAを超える大型のUPSが必要な場合が多くなります。

バックアップ時間は,非常用発電機と併用している場合は,発電機が起動する1分程度を補うために,5分程度。発電機を併用しない場合は,停電などの停電トラブルが復旧するまでの,数十分から数時間のバックアップが必要です。

クリーンルームをバックアップするUPSに求められる機能

無瞬断

クリーンルームは,停電時無瞬断で電力を供給することが重要です。例えば停電の際に電力の供給が止まってしまい,無菌状態が保たれなくなってしまった場合,仕掛品だけでなく,研究開発中の新薬を破棄したり,研究そのものが中断するなど,時間費用共に甚大な損害を及ぼすリスクがあります。常時インバータ給電方式パラレルプロセッシング給電方式などの,無瞬断で電力供給ができるUPSの選定がおすすめです。

省エネ

容量の大きなUPSはそれだけ電力の消費も多くなりますので,パラレルプロセッシング給電方式のUPSであれば変換効率がよく,省エネにも貢献します。

例えば以下のようなUPSと比較した場合,パラレルプロセッシング給電方式のUPSでは,10年間で300万円以上※3の電気代を節約することができます。また昨今では電気代の高騰だけでなく,2026年に始まる排出量取引も注目されていることから,省エネのUPSの必要性は今後ますます大きくなっていくかもしれません。

※3 1kWh=15円税込で計算(2023年4月時点 当社推定値)
※特別高圧は契約により単価が異なるため,詳細は契約内容を確認してください。

こちらの記事もおすすめ:消費電力50%以上,10年間で電気料金300万円以上削減!?

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製薬工場でのUPSの代表的なバックアップ装置②:分析装置

分析装置とは

製薬工場では,日々新薬の研究開発が行われています。分析装置は,製品の成分分析,純度測定,物質の特性評価など,様々な試験を行うために用いられる高精度な装置です。これらの装置を使用して薬理作用に関わる物質の特性を解析し,その効果や安全性を評価しています。

分析装置にUPSが必要な理由

分析装置の精度は,研究開発の成果や製品品質の確保に直結するため,非常に高いレベルが求められます。製薬工場における分析装置の利用は,単に製品の品質をチェックするだけでなく,製造プロセスの最適化,新薬の研究開発,規制当局への承認申請資料の提供など,幅広い目的で行われます。

これらの活動は全て,高度に精密な分析装置によるデータに基づいています。そのため,電源トラブルにより分析装置への電力供給が途絶えると,重要なデータの損失,分析の再実施,スケジュールの遅延など,研究開発や生産活動に大きな損害をもたらします。このようなリスクを回避するために,UPSは非常に大切です。

分析装置をバックアップするUPSとは

分析装置の種類と規模に応じて,適切なサイズのUPSを選択する必要がありますが,1kVA~3kVA,大きくても5kVAで十分な場合が多いです。

バックアップ時間は,非常用発電機と併用している場合は,発電機が起動する1分程度を補うために,5分程度。発電機を併用しない場合は,停電などの停電トラブルが復旧するまでの,数十分から数時間のバックアップが必要です。

分析装置をバックアップするUPSに求められる性能

分析装置は,薬の評価や安全性の裏付ける,非常に重要なデータを保持しています。これらの紛失は,大きな損害に繋がるため,分析装置は常時インバータ給電方式パラレルプロセッシング給電方式などの停電時無瞬断で電力を供給することが求められます。

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製薬工場でのUPSの代表的なバックアップ装置③:薬品保冷庫

薬品保冷庫とは

薬品保冷庫は,特定の温度範囲内の環境で薬品を保存するための設備です。温度管理が不適切だと,薬品が変質する可能性があるため,製品の安定性と有効性を保持するために不可欠な設備です。

薬品保冷庫

薬品保冷庫にUPSが必要な理由

電源トラブルにより薬品保冷庫への電力共有が途絶えると,薬品の品質を保つことができません。研究開発中の新薬の破棄が発生するなど,研究開発工程の再実施,スケジュールの遅延など,研究開発や生産活動に大きな損害をもたらします。このようなリスクを回避するために,UPSは非常に大切です。

薬品保冷庫をバックアップするUPSとは

薬品保冷庫の種類と規模に応じて,適切なサイズのUPSを選択する必要がありますが,3kVA~5kVAで十分な場合が多いです。

バックアップ時間は,非常用発電機と併用している場合は,発電機が起動する1分程度を補うために,5分程度。発電機を併用しない場合は,停電などの停電トラブルが復旧するまでの,数十分から数時間のバックアップが必要です。

薬品保冷庫をバックアップするUPSに求められる性能

薬品保冷庫をバックアップするUPSは,メンテンスのしやすさがとても重要です。薬品保冷庫は常に稼働させていなければならないため,それを保護するUPSも,メンテナンスの際に電力供給を止めてはいけません。保守バイパス回路内蔵しているUPSであれば,給電継続したまま保守作業ができます。

またバッテリー寿命が10年※のリチウムイオン電池UPSであれば,バッテリー寿命が2~5年の鉛蓄電池に比べて,メンテナンスの回数自体を減らすことができます。リチウムイオン電池UPSは,省スペースというメリットもあるため,限られたスペースを有効に使うことができます。また,ワクチンなどの保管には,数時間に渡り超低温を維持する必要があるため,大容量のバッテリーが必要になりますが,リチウムイオン電池だと比較的小型で実現できます。

こちらの記事もおすすめ:UPSのリチウムイオン電池と鉛蓄電池を徹底比較!

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監修:山洋電気株式会社 営業本部 シニアセールスエンジニア 西澤 敏幸

公開日:

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