常時インバータ給電方式とは,常にインバータを通して,電気を電気機器に供給する方式です。UPSと言えば常時インバータ給電方式と言えるほど,信頼性の高い給電方式です。
通常時,UPSの内部で商用電源の交流電力を直流に変換します。変換された直流電力は二つに分かれて,一方は蓄電デバイスに充電し,もう一方はインバータで再び交流に変換し,電気機器に供給します。停電時もインバータを経由して電力を供給するので,給電の切り替えがなく,電圧変動が起こらずに無瞬断で給電できます。常にインバータを経由するので,信頼性の高い給電方式といえます。
このように交流を直流,直流を交流に,電力を2回変換することから,「ダブルコンバージョン方式」とも呼ばれます。また,常にインバータのラインから電力を供給することから「オンライン方式」とも呼ばれています。
常時インバータ給電方式は,常にインバータを通すことで,きれいな電気に整えてから電気機器に供給し,停電時も無瞬断で給電できるところがメリットです。5時間目に紹介した「常時商用給電方式」と違い,商用電源の電圧変動によって電気機器が停止する心配がありません。
しかし,インバータには大きな電流が流せません。突入電流のような大きな電流がインバータに流れると,インバータ給電からバイパス運転(バイパス給電)*に切り替わります。この時にインバータと商用電源の波形が同期していない場合,同期されるまでに約50~300mSの瞬断が発生します。この瞬断が原因で電気機器が停止したり切り替えに失敗する可能性があります。そこで,UPSの定格容量を突入電流に合わせて選定する必要があります。また,電力を2回変換するので,常時商用給電方式と比べると消費電力が約2~3倍大きくなります。部品点数が多いため本体も大きく,高価になる傾向があります。
以上の特徴からみると,常時インバータ給電方式は主に“電力変動が少なく,電力波形の乱れが許されない”電気機器のバックアップに利用されることが多く,データセンターなどを始め,最も多く採用される方式であると言えます。
* バイパス運転(バイパス給電)は,UPSがメンテナンス中や内部故障時でも,電気機器(負荷)に継続給電できるように,商用電源をそのまま供給する運転モードです。
執筆者:山洋電気株式会社 営業本部 シニアセールスエンジニア 西澤 敏幸
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