UPS(無停電電源装置)とは,停電が起きてしまったときに電気を一定時間供給し続けるための装置です。英語では「UPS(Uninterruptible Power Supply)」と呼ばれています。
このUPS(無停電電源装置)があることでパソコンやハードディスク,サーバ,モデム,ルータなどを予期せぬ停電から守ることができ,ひいては重要なデータや製造機器も守ることができます。
UPS(無停電電源装置)は,停電時どのようにして電気を流し続けるのでしょうか。その仕組みは,実は単純です。
オフィスや家庭でよく利用する「延長コード」をイメージしてください。これは壁の電源につないだコードの先に複数の差し込み口がついており,そこにつないだ機器に電気を送るものです。UPS(無停電電源装置)は,この延長コードに蓄電機能が備わったものだと考えるとわかりやすいでしょう。
まずは,電源からUPS(無停電電源装置)に送電。その先にある機器にはストレートに電気を流し,それと同時にUPS(無停電電源装置)内の蓄電池に電気を蓄えます。そして停電などの非常時には,蓄電池から各機器に給電。これによって一瞬も止めることなく,電気を供給し続けられるのです。
UPS(無停電電源装置)と発電機には,どのような違いがあるのでしょうか。
UPS(無停電電源装置)は蓄電池を内蔵しています。万一,停電が起きたときには,蓄電池からの給電に自動で切り替わるので,切れ目なく各機器に電気を送り続けられるのが特長です。ただし,一般的なバックアップ時間は5~10分程度なので,長時間の停電には耐えられません。システムの安全なシャットダウンや発電機が起動するまでの繋ぎとして利用するといいでしょう。
発電機は,停電が発生してから起動するのが一般的です。実際に発電するまでに1分程度かかってしまうため,そのあいだは各機器への送電がストップしてしまいます。その一方で,ガソリンや軽油といった燃料さえあれば発電を続けられるので,長時間にわたり停電が続く場合に効果的です。
UPS(無停電電源装置)は,民間企業か行政機関かを問わず「なくてはならないもの」になっています。常に動かし続けなければならないシステム,顧客や金銭に関わるデータ,必要な手順を踏まなければ破損してしまう機器など,産業や生活の基盤には電気を必要とするものであふれているからです。
UPS(無停電電源装置)が必要になるのは,停電時です。現代の日本で生活をしていて,長時間の停電に遭遇することなどめったにないように感じるかもしれません。それなのになぜ,費用をかけてまでUPSを設置する必要があるのでしょうか?
停電の中には,「瞬低(瞬時電圧低下)」と呼ばれる0.02秒~2秒の短時間の電圧低下が発生するものや,「瞬停(瞬時停電)」と呼ばれる,1分未満の電力停止も含まれます。2021年度の東京電力の1軒あたりの停電回数は0.1回※1でした。一方瞬低については,多い地域では月に1回も発生していると言われています。つまり長時間の停電は10年に1回程度しか遭遇しなくても,瞬低であれば地域によってはかなり頻繁に遭遇していることになります。
そして精密な装置やデータを扱う工場や,大切なデータを取り扱うオフィスでは,それらだけでも非常に大きな影響を受けてしまいます。生産ラインの停止やサーバの停止,データの喪失を防ぐために,UPSは非常に重要な役割を果たします。
※1 出典 1軒あたりの停電回数|数表でみる東京電力
地震や台風,火災といった災害時の予備電源・非常電源装置としても,UPS(無停電電源装置)は必要です。こういった場合の停電は長時間に及ぶことがあります。UPS(無停電電源装置)の一般的なバックアップ時間は5~10分です。まずはUPS(無停電電源装置)で給電しているあいだに,システムやパソコンを安全に終了することができます。また発電機を併用するといいでしょう。
UPS(無停電電源装置)にはどういった種類があるのでしょうか?
電力の変換ロスが少ない方式です。停電時に若干の瞬断があるので,監視カメラなど瞬断が気にならない用途に最適です。
インバータを通して常に安定した電力を供給するので特に給電品質の高い方式です。停電時には完全無瞬断で電力を切り替えます。通信基地局,通信サーバなどに最適です。
双方向インバータが力率の補正やノイズを吸収するため電源側の電力品質を改善します。停電時には完全無瞬断で電力を切り替えます。効率も高く,生産設備などの動力機器に最適です。
具体的な製品一覧については「山洋電気の無停電電源装置(UPS)の製品一覧」をご確認ください。
UPS(無停電電源装置)に搭載されるバッテリーには「鉛蓄電池」と「リチウムイオン電池」の2種類があります。UPSのバッテリー寿命は,従来の鉛蓄電池では2~5年ですが,リチウムイオン電池ですと10年※3という長寿命を実現しています。長寿命化によるメンテナンスコストの軽減だけでなく,UPSの小型化や経年劣化による容量低下が少ないなど,さまざまなメリットがあります。
※3 使用環境や周囲温度によって異なる
詳細ページ:UPSのリチウムイオン電池と鉛蓄電池を徹底比較!
UPSを選ぶ際には,以下のような観点で必要事項を確認していきます。
①バックアップ対象装置
②容量
③バックアップ時間
④入出力電圧,周波数,配線方式(相数・線数)
⑤給電方式
⑥バッテリーの種類
⑦オプション機能
詳細ページ:UPS(無停電電源装置)の選び方を解説!容量やバックアップ時間など
UPSの選定が進み,詳しい性能での比較を行う際は,以下のような観点などで見るとよいでしょう。
①給電品質
②信頼性(故障のしにくさ)
③バッテリー寿命
④大きさ(省スペース性)
⑤使用環境
⑥認証マーク
UPS(無停電電源装置)は適切なメンテナンスを行うことで,安全に使用し続けることができます。日常点検や定期点検の中で,バッテリーなどの保守部品の交換や,稼働環境の確認等をしっかりと行うことが大切です。
詳細ページ:バッテリーの交換方法や処分廃棄方法,アラームについてまとめて解説!
UPS(無停電電源装置)は,容量や使用環境によって異なりますが,5年~15年程で寿命を迎えます。寿命を超えてUPSを使用し続けた場合,故障率が上がり保険としての役割が果たせなくなったり,保守費用が増加するなどの問題が発生してしまいます。寿命を超えて役目を全うしたUPSは,適切なタイミングで買い替えを検討しましょう。
詳細ページ:UPS(無停電電源装置)の寿命や耐用年数,交換時期はいつ?
UPS(無停電電源装置)は,実際にはどのように利用されているのでしょうか。
パソコンに保存されたデータは,停電によって急に電気が供給されなくなると消失してしまうことがあります。最悪の場合パソコンのシステム自体が壊れてしまい,データを復元できなくなるかもしれません。停電中にも業務を続ける必要がある場合は,UPS(無停電電源装置)と発電機を組み合わせて電気をバックアップする必要があります。
サーバにはシステムやWebサイトメールなどの,あらゆるデータが保管されています。停電によってシステムの誤作動やデータの損傷が起きれば,会社全体に大きな損害が発生しかねません。こうした事態を未然に防止するためにも,UPS(無停電電源装置)が必要です。
近年ではUPS(無停電電源装置)とサーバをLANで接続して,データの安全を図る仕組みが構築されています。まず停電が発生すると,無停電電源装置がサーバに電力を供給。停電が長引き,例えばUPS(無停電電源装置)のバッテリー残量が50%を切った場合は,自動的にサーバが安全にシャットダウンするようプログラムしておくのです。これによって,サーバ内のシステムやデータを守ることができます。
UPS(無停電電源装置)を利用すべき産業はたくさんあります。
医療現場はUPS(無停電電源装置)を必要とする代表例です。病院にはさまざまな医療機器があるものです。万一停電が起きたら,救えたはずの命を失うことになりかねません。UPS(無停電電源装置)を利用して,電気を供給し続けることは非常に大切です。
また,低温で保管しなければならないワクチン用保冷庫,ディープフリーザーなどもUPS(無停電電源装置)による停電対策が重要です。停電により庫内の温度が上昇すると,ワクチンが変質する恐れがあります。
金融の現場にも,UPS(無停電電源装置)は必須です。銀行や証券会社などの金融関係企業では,複数系統のUPSを導入しています。それだけでなく,それぞれの無停電電源装置を別々の場所に設置。地震による一部建物の破壊など物理的な損傷まで想定して,電気を安定的に供給できるシステムを構築しています。
UPS(無停電電源装置)を利用することで生産設備や対象物の破損や,生産工程のやり直しを防ぐことができます。停電による生じうる損害とUPS(無停電電源装置)のコストを比較して必要だという判断になったら,導入を具体的に検討してみていいでしょう。
詳細ページ:工場におすすめのUPS(無停電電源装置)は?用途別に必要性や費用対効果のイメージを解説!
執筆協力:山洋電気株式会社 営業本部 シニアセールスエンジニア 西澤 敏幸
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