電力会社から送られる電力は商用電源と呼ばれます。常時商用給電方式は,商用電源をそのまま装置に供給する方式です。
通常時,つまり商用電源が供給されている時,UPSは装置に電力を供給しながら,蓄電デバイスに充電をおこないます。商用電源側が停電した時は,商用電源を切り離した後,蓄電デバイスの直流電力をインバータで交流電力に変換し,電気機器に供給します。この切り替えをおこなう際に瞬断が起こります。
しかしなぜ,蓄電デバイスの電力を供給する前に商用電源を切り離さなければならないのでしょうか。
もし,商用電源を切り離さないまま蓄電デバイスの電力を出力すると,電力が電気機器側に流されるだけでなく,停電している商用電源側に逆流してしまうからです。そのため,商用電源側を切り離す必要があり,蓄電デバイスへの切り替え時間も必要になってきます。
また,商用電源を切り離し,蓄電デバイスの直流電力に接続する際に起こる瞬断で,ノイズが発生し,電気機器の誤動作が発生することもあります。
常時商用給電方式の特長は,UPS自身の消費電力が極めて少なく,回路方式が簡単で小型・安価なところです。この理由は,通常時,電力変換をおこなわず商用電源をそのまま電気機器に供給するためです。一方,商用電源から蓄電デバイスの電力に切り替える際の電圧変動がやや大きいというのが欠点です。
実際,商用電源には電圧変動(*)の現象があるため,一般的に家庭で使用する電気機器などは,商用電源に対し±10%の範囲で動作できるよう設計されています。最近は海外でも使えるように,ワイドレンジといって100~240Vの電圧範囲で使用できる電気製品が多くなりました。
以上をまとめると,常時商用給電方式を使用する場合は,商用電源をそのまま供給しても,ある程度の電圧低下や電圧波形の乱れ,電力を切り替える際の瞬断が許容されて,動作に支障がない電気機器であることが前提となります。
そのため,電力を供給する元となる電源設備には配置されることは少なく,小容量のUPSが末端の電気機器へ分散して配置されることが多いです。
* 電気事業法及び同法施行規則の規定に基づき,標準電圧100Vに対しては101±6V,標準電圧200Vに対しては202±20V以内に維持する必要がある。
執筆者:山洋電気株式会社 営業本部 シニアセールスエンジニア 西澤 敏幸
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