UPSの選定を進める中で「より良いUPSを比較しながら検討したい」という気持ちは,どなたでもお持ちになると思います。では,「より良いUPS」とは一体どういったものを指すのでしょうか?
その答えとしては「良いUPS」とは,ユーザーの要望(UPSにどういったことを求めるか?何を重視するか?)によってケースバイケース,ということが言えます。本記事では,何を求めるか?重視するか?別に,どの性能やスペックからUPSを比較していくべきなのかを解説していきます。
給電品質は,安定した電力供給を実現するUPSの要ともいえる性能です。どういった観点で比較すればいいのでしょうか?
UPSにはメーカーによって呼び方は異なりますが,いくつかの給電方式があります。当社山洋電気の場合の,それぞれの違いについて説明します。
①停電時に無瞬断で電力供給ができる②波形の乱れがない,その一方で③消費電力も少ないという特長があります。「常時商用給電方式」と「常時インバータ給電方式」のいいところ取りをしている給電方式です。「給電の信頼性も重視しつつ,ランニングコストを抑えたい」という場合におすすめの給電方式です。
・SANUPS『E23A』 : 20kVA~200kVA 工場の設備などにおすすめです。
・SANUPS『E33A』 : 100kVA~600kVA 工場設備などにおすすめです。
①停電時に無瞬断で電力供給ができる②波形の乱れがない,という特長があります。一方価格も4つの給電方式の中で比較的高価で,消費電力も多めです。「コストよりも無瞬断,給電の信頼性を重視する」という場合におすすめの給電方式です。
・SANUPS『A11K』 : 1kVA~5kVA データセンター,計測システムなどにおすすめです。
・SANUPS『A11K-Li』 : 1kVA~5kVA リチウムイオン電池搭載UPS。
・SANUPS『A11N』 : 5kVA~20kVA データセンターやサーバールームにおすすめです。
・SANUPS『A23C』 : 30kVA~300kVA サーバールームや工場設備におすすめです。
①安価②比較的小型③省エネ,という特長があります。一方デメリットとして,停電が発生し電力を供給する際に「瞬断」が発生してしまうという点,また波形の乱れは避けられないという点があります。「価格や省エネ重視で,瞬断があってもOK」という場合におすすめの給電方式です。
・SANUPS『N11C-Li』 : 1.5kVA~5kVA 監視カメラなどにおすすめです。
・SANUPS『N11B-Li』 : 1kVA~3kVA 防塵防水タイプ。屋外対応UPSです。
電源の状態に合わせて給電品質優先モード(常時インバータ給電方式)と,効率優先モード(常時商用給電方式)を自動で切り換えます。給電品質優先モード時は無瞬断で電力を供給し,効率優先モードでは消費電力を抑えた運転を行います。
・SANUPS『E11B』 : 1kVA~3kVA サーバー,通信機器,医療機器,工場内の設備などにおすすめです。
次に比較するのは,UPS本体の信頼性(=故障をしないか)という点です。「もしも」の停電の際に保険の役割を果たすUPSですから,その時にUPSが故障しているなどということは避けたい!という場合,どの性能やスペックで比較すればよいのでしょうか?
「並列冗長方式」とは,通常1台で単独運転するUPSに対し,並列運転機能を持つUPSを2台以上並列することによって,万が一UPSに故障が発生した際でも他のUPSから給電を続けることができる方式です。
データセンターやサーバールーム,精密機器工場など,「電気を止めることが許されない」場所におすすめです。
・SANUPS『A11N』『A11N-Li』 : 5kVA~20kVA データセンターやサーバールームにおすすめです。
・SANUPS『E33A』 : 100kVA~600kVA 工場設備におすすめです。
・SANUPS『A22A』 : 5kVA~100kVA データセンターやサーバールーム,工場設備におすすめです。
ランニングコストを減らしたいとう場合は,できるだけ寿命の長いバッテリーを搭載しているUPSを選択する必要があります。またバッテリー寿命が長いということは,電池交換というメンテナンスの手間を削減できるというメリットもあります。それにはどの性能やスペックを確認すればよいのでしょうか。
UPSに搭載されるバッテリーには「鉛蓄電池」と「リチウムイオン電池」の2種類があります。従来は鉛蓄電池が一般的でしたが,最近ではリチウムイオン電池への置き換えが進んでいます。UPSのバッテリー寿命は,使用環境や周囲温度によって異なりますが,従来の鉛蓄電池では「2~5年」です。一方リチウムイオン電池ですと「10年」という長寿命を実現しています。
詳細ページ:UPSのリチウムイオン電池と鉛蓄電池を徹底比較!
普段管理者がいない場所にUPSを設置している場合やサーバー,計測システムなど,「メンテナンス」が大変かつ「ランニングコストを減らしたい」場所におすすめです。
・SANUPS『A11K-Li』 : 1kVA~5kVA データセンター,計測システムなどにおすすめです。
・SANUPS『N11B-Li』 : 1kVA~3kVA IP65(防水・防塵タイプ)。屋外や,粉塵の多い工場におすすめです。
・SANUPS『N11C-Li』 : 1.5kVA~5kVA 常時商用給電方式。監視カメラやオフィスのPCなどにおすすめです。
限られたスペースにUPSを設置する場合,UPS本体が小さいものを選ぶ必要があります。また,UPSは普段操作するような装置ではないため,できれば小さい方が邪魔にならずに嬉しいですよね。それにはどの性能やスペックを確認すればよいのでしょうか。
先ほども登場したリチウムイオン電池ですが,コストやメンテナンス性の他に「非常に小型で軽い」というメリットもあります。そのため,電池を搭載するUPS本体も非常に小型・軽量化することができます。鉛蓄電池のUPSと比較すると「体積にして約半分※1」に小型化できる機種もあれば,質量にして「約40%・30㎏以上軽量化※1」できる機種もあります。 ※1 容量とバックアップ時間により異なります。詳しくはお問い合わせください。
装置への組み込みや工場設備など,「限られた場所に設置したい」場合におすすめです。
・SANUPS『A11K-Li』 : 1kVA~5kVA データセンター,計測システムなどにおすすめです。
・SANUPS『N11B-Li』 : 1kVA~3kVA IP65(防水・防塵タイプ)。屋外や,粉塵の多い工場におすすめです。
・SANUPS『N11C-Li』 : 1.5kVA~5kVA 常時商用給電方式。監視カメラやオフィスのPCなどにおすすめです。
UPSを屋内ではなく,屋外で使用したい場合には,どの性能やスペックを確認すればよいでしょうか?
IPコードとは,電気製品の防水・防塵性能を表す規格です。IPの後の1つ目の数字は「防塵等級」を示し,2つ目の数字は「防水等級」を示します。求める防水・防塵性を兼ね備えているか※2 確認しながら,UPSを選定するとよいでしょう。
※2 UPSが防水・防塵使用ではない場合,周囲をプレハブ等でカバーすることによって,屋外設置する方法もあります。
保護等級の見方と表
また寒冷地や熱帯地域での屋外設置が想定される場合は「使用温度範囲」も設置地域に対応しているか確認しましょう。
監視カメラなど,屋外設置の機器のバックアップ。また食品工場など粉塵が多い工場での使用におすすめです。
・SANUPS『N11B-Li』 : 1kVA~3kVA
IP65。使用温度範囲-20~50℃。屋外や,粉塵の多い工場におすすめです。寒冷地や熱帯地域にも対応しています。
日本以外の地域にUPSを設置したい場合は,何を確認すればよいのでしょうか?
海外安全規格認定品であるかどうかを判断するには,認証マークを確認します。「UL規格」はアメリカ保険業者安全試験所(Underwriters Laboratories Inc.: UL)が策定する製品安全規格です。「CEマーキング」はEUで販売される指定の製品がEUの基準に適合していることを表示するマークです。
また海外で使用するUPSを選定する際は,現地の電圧に対応しているUPSか確認する必要があります。その他輸送方法,使用環境,負荷など,入念に確認することが必要です。
詳細ページ:UPSを海外で使用する際の注意点や,安全規格について解説!
・UL/CE規格:SANUPS『E11B』,SANUPS『A11N』(一部)
・UL規格:SANUPS『A11K-Li』
・CE規格:SANUPS『N11B-Li』, SANUPS『A22A』
ここまで,ユーザー様の要望ごとに「より良いUPS」を選ぶための,比較するべき性能やスペックをご説明してまいりました。最後に,当社山洋電気UPSの特長をいくつかご紹介いたします。
山洋電気は1956年(昭和31年)に国産初のUPSを開発した,UPSの老舗メーカーです。この長きにわたるノウハウの蓄積で,お客様の厳しい品質要求というものをクリアする製品,ものづくりとサポート体制というものを構築しています。 山洋電気のUPSは,長年に渡って通信業界や官公庁など,高い信頼性を求められる業界で採用いただいています。
長寿命な部品を採用しているため,使用環境や周囲温度により異なりますが,一般的なUPS本体の寿命は5~10年と言われているのに対して,山洋電気のUPS本体の寿命は7~15年※3となっています。またUPSの入出力範囲が広いことから,バッテリーへの切り替え回数を抑えることができ,バッテリー寿命も期待値通りを保つことができます。
※3 2023年3月現在発売製品
山洋電気のUPSは,高効率のインバータを使用していることにより,電力損失を最小限に抑えることができます。一般的なUPSの変換効率が80%台後半と言われているのに対して,山洋電気のUPSは94%前後となっています。これにより,企業は電力のコストを節約することができます。
山洋電気のUPSは,停電や瞬低への対策だけでなく,メッキ装置,工作機器などから発生する高調波抑制対策もできる機種もあります。より高い給電品質が求められるシーンでも活躍します。
「選んでみたUPSを他のUPSとも比較してみたい」「今使っているUPSを他のUPSと比較してみたい」「ぴったりなUPS選びを手伝ってほしい!」そんなご要望がございましたら,いつでもお気軽にご相談ください。お待ちしております。
監修:山洋電気株式会社 営業本部 シニアテクニカルアドバイザー 博士 泉谷 清髙
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