UPSはご存じの通り「もしも」の停電や電源トラブルの際に安定した電源供給を行う,「保険の役割」を果たす装置です。その性質から,日ごろは工場やオフィスの片隅に置かれ,目に留まらないことも多いのではないでしょうか?
そんなうっかりメンテナンスを忘れてしまいそうなUPSにも寿命があり,それを無視して使用し続けると,思わぬ問題や事故が発生してしまいます。
本記事では,UPSの寿命や見極め方,交換のメリットなどについて,ご紹介いたします。
UPSの使用環境によってことなりますが,一般的には5年~15年といわれています。サイズなどにより異なりますので,詳細は下の表をご覧ください。
また耐用年数は,日本電機工業会(JEMA)によると10kVA以下で 5~6年,10kVA超えで 6~10年と言われています。
出典:日本電機工業会「UPS(無停電電源装置)のユーザーズガイドライン/汎用UPSのユーザーズガイドライン」
寿命を超えてしまったUPSも,一目見ただけでは問題が発生しているようには見えないかもしれません。では,寿命を超えたUPSを使用し続けると,どのような問題があるのでしょうか?
UPSも寿命を超えると,当然のことながら故障のリスクが上がってきます。UPSが故障してしまうと,いざ停電などの電源トラブルが発生した際,バックアップができなくなるなど,本来の保険としての役割を果たせなくなります。
せっかく導入したUPSなのに,いざという時に役に立たないばかりか,電力を無駄に消費し続けるなどということは,避けなければいけないですよね。
せっかく導入したUPSなので「修理をしながら長く使いたい」と考えられる方もいらっしゃるかもしれませんが,それは得策ではありません。
以下の図のように,寿命を超えたUPSは故障率が上がり,故障率の増加と共に保守費用も増加します。それだけではなく,ある程度の期間を過ぎたころには保守部品が手に入らなくなり,修理が不可能になってしまいます。
UPSを長く使いたいと考えられている方も,装置寿命を守り新品へとお買い換えされることをお勧めしています。
※出典:日本電機工業会「UPSの保守・更新は計画的に」
それでは,お使いのUPSが寿命を超えているのか,どうやって見極めるのでしょうか?主には以下の2点が挙げられます。
UPS本体に貼られている「定格銘板」に,製造年月が記載されている場合があります。製造メーカーによって記載のしかたは異なりますが,下図のように日付記載がある場合,そこから経過年数を確認することができます。
UPSの一般的な寿命は先述の通り5年~15年ですから,ここからある程度の寿命時期を推測できます。正式な装置寿命は型番から確認します。
▼定格銘板のイメージ
バッテリー寿命が来るとアラームが鳴るように設定されているUPSの場合,アラームが鳴った際にはバッテリー寿命だけでなく,装置寿命が来ていないか確認をお勧めしています。
というのも,バッテリーの寿命は一般的な鉛蓄電池では2~5年のものが多い※1です。一方UPS本体の寿命は5~15年ですので,バッテリー交換を1回もしくは2回おこなったあとにバッテリー交換アラームが出た場合は,装置寿命に達している可能性があるのです。
バッテリー交換の際は,ぜひUPS本体の寿命も確認してみてくださいね。
※1 使用環境や周囲温度によって異なる
せっかく新しいUPSに買い替えるなら,機能面でのメリットもあると嬉しいですよね。以下,近年進化したUPSの3つの機能をご紹介します。
UPSのバッテリー寿命は,従来の鉛蓄電池では「2~5年」ですが,リチウムイオン電池ですと「10年」※1という長寿命を実現しています。長寿命化によるメンテナンスコストの軽減だけでなく,UPSの小型化や経年劣化による容量低下が少ないなど,さまざまなメリットがあります。
詳細ページ:UPSのリチウムイオン電池と鉛蓄電池を徹底比較!
「LANインタフェースカード(LANカード)」をUPSに装着し,工場内のネットワークに接続することで,複数のUPSを一括で監視・制御できるようになりました。またModbus通信に対応したLANカードをする場合,工場ですでにPLCなどの「Modbus通信を用いたIoT機器」を導入している場合,UPSを簡単に周辺機器に接続し,一括で監視することができ,工場のIoT化・見える化に貢献できるようになりました。
詳細ページ:UPSを一括で監視する必要性が増している理由と,4つのメリットとは?
UPSの保険としての信頼性をさらに高めるような機能も,充実しています。
例えば「並列冗長方式」では,通常1台で単独運転するUPSに対し,並列運転機能を持つUPSを2台以上並列することによって,万が一UPSに故障が発生した際でも他のUPSから給電を続けることができます。特に電力事情が不安定な地域に工場をお持ちの場合,安心を高めることができる機能になっています。
お買い換えで不要になったUPSは,どのように処分すればよいのでしょうか?
当社山洋電気では,当社製UPSを新規にご購入いただいた場合,メーカーにかかわらず不要になったUPSをお引き取りさせて頂いております※2。ご購入の際,もしくはご購入後3ヶ月以内に購入先へお申し込みください。
※2 引き取り対象となるUPSは,新規ご購入製品1台に対し,同等容量までになります。
UPSの容量によっては,無償引取りを行っていない機種もございます。
山洋電気のUPSのラインアップは,使用環境によって異なりますが7~15年の長寿命製品※3です。一般的なUPSより長寿命という特長がございますので「せっかく購入したのだから長く使いたい」と考えていらっしゃる方にも大変おすすめです。
※3 2023年1月現在発売製品
こちらの資料に,UPS選定の際に必要な情報や概要をまとめてございます。
是非ダウンロードしてお役だてください!
S氏の勤務する電子部品工場では,検査装置のバックアップのためUPSを設置しています。日頃メンテナンスの必要性は感じているものの,UPSといえば工場の中にある地味で目立たない装置のため,ついつい後回しになっていました。
「バッテリー交換はアラームが鳴った時に対応しているし,大丈夫だろう」そう考えているうちに,10年以上の月日が経ってしまっていたのです。
そんなある夏,S氏の工場がある地域ではゲリラ豪雨が過去に例を見ないほど大量に発生していました。そしてついにS氏の工場付近で落雷が発生した日,事件は起こってしまったのです。
「まさか保険のために設置していたUPSが稼働しないなんて思いませんでした。検査装置のバックアップが取れておらず,トレーサビリティが取れなくなり,復旧とその間の検査のやり直しに膨大な時間と費用を要してしまいました。」S氏は当時のことを振り返りながら,こう続けました。
「そのUPSの定格銘板を見てみたら,12年前の製品であることがわかりました。UPSに寿命があることも理解していたのですが,どうしてもっとしっかりメンテナンスや買い替えを行わなかったのか,多忙や予算の都合で後回しにしてしまっていたことを,とても後悔しています。」
バッテリー交換はしっかりと行っていたS氏。バッテリー交換アラームの際に,本体寿命をしっかりと確認することで,このような事故は防げたのかもしれません。
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監修:山洋電気株式会社 営業本部 シニアテクニカルアドバイザー 博士 泉谷 清髙
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