スマート工場やインダストリー4.0といった「工場のIoT化」が注目され始めてから,しばらくが経過しました。
工場稼働 の生命線でもある「 安定した電力供給 の分野」
でも,UPSをネットワークにつないでの一括監視のニーズが年々高まっています。
本記事では,UPSの一括監視のニーズが高まる背景と,「UPSを一括で監視したら,実際どんなメリットがあるの?」という点について,ご紹介します。
UPSをネットワークに接続し監視ソフトを導入することで,複数のUPSを1台のモニターから一括で遠隔から監視 することができるようになります。例えばUPSの給電状態やアラートの発生状態,負荷率などの統計情報を見える化できるようになります。また後述の通り「監視」だけでなく,シャットダウン操作などの遠隔「制御」も可能となります。
いくつか要因はありますが,主には,製造業での「エッジコンピューティング」の導入が増加していることが挙げられます。
機器のIoT化が進んだことによりデータ量は近年急激に増加しています。製造業各社ではその膨大なデータをクラウドで保管し,必要なデータを取り出し処理しています。一方,高精度な加工をおこなうモーションコントロールの制御では,ミリ秒単位の非常に短い時間でのデータを大量に収集しています。この大量のデータをすべて上位のクラウドに送信すると,通信量とデータ量の負荷が大きくなりすぎます。
そこで登場するのがエッジコンピューティングです。以下の図をご覧ください。
システム全体をクラウドコンピューティングする場合,大量のデータを受信しそれを処理しなければならないため,どうしてもデータの収集・処理に対する「負荷」が大きくなりすぎてしまいます。一方エッジコンピューティングでは中間にエッジで処理をおこなっていますので,その分「負荷を分散」させながらでデータを収集・処理することができます。
そして,そのエッジコンピューターを一つ一つバックアップする役割を持つのが,エッジごとに設置されるUPSです。
以上のことから,工場では複数のUPSを使用するケースが増加し,そのためUPSを一括で監視するニーズが高まっているのです。
複数台のUPSを個別で管理している場合,広い工場内に点在するUPSを,自ら確認しに行く必要があります。それは計画停電などに伴う電源操作(シャットダウンなど)をする際なども同様です。一方,一括でUPSを監視した場合,1つのモニターから遠隔でUPSの状態を把握することができます。
ただでさえ忙しい保守業務のなかで,余計な移動はできるだけ少なくすませたいですよね。
工場内の至る箇所に設置されたUPSは,バッテリーのメンテナンスも一苦労です。「先月こっちのバッテリーを交換したのに,今度はこっち…」なんていうこともよく起こります。
UPSを一括で監視することにより,バッテリーの状態も可視化することができ,ある程度まとまったメンテナンス計画を組むことが可能になります。
また,バッテリーメンテンスの手間を軽減するには「リチウムイオン電池UPS」の採用が効果的です。関連コラムは以下よりご覧ください。
「リチウムイオン電池は高いと思っていませんか?UPS(無停電電源装置)のバッテリー寿命を比較!」
UPSは一括監視だけでなく一括での「制御」をおこなうことも可能です。具体的には,(UPSでバックアップしている)コンピュータの自動シャットダウン,自動起動などです。例えば停電などの電源障害発生時はもちろん,工場の定期メンテナンス時にも一括制御はとても役に立ちます。
工場ですでにPLCなどの「Modbus通信を用いたIoT機器」を導入している場合,UPSを簡単に周辺機器に接続し,一括で監視することができます。※1
UPSをModbus通信のマスタ(親機)として,スレーブ(子機)の機器を監視・制御することも可能ですし,その逆にスレーブ(子機)として監視・制御されることも可能です。※1
工作機械や生産ラインなどと接続することができれば,データの見える化や蓄積したデータの分析など,「工場のIoT化」に大きく貢献することができるかもしれません。
※1 当社LANインターフェースカードなどの,Modbus通信に対応したネットワークカードを使用した場合。
UPSを一括で監視するには「LANインターフェースカード(LANカード)」をUPSに装着し,工場内のネットワークに接続することで,実現することができます。
また工場の他のIoT機器と接続するには,Modbus通信に対応したネットワークカードを使用する必要があります。
当社では,UPSの一括監視やメンテナンス工数の削減,工場のIoT化に役立つ,LANインターフェースカードをラインアップしております。主な特長をご紹介いたします。
当社のLANインターフェースカードは,監視用・シャットダウン用の機能を兼ね備えています。そのため,用途(監視用orシャットダウン用)によってLANカードを選定する必要がなく,オールマイティにご使用いただけます。UPSを監視するだけでなく,制御もおこなうことが可能です。
電源の状態やバッテリーの状態を遠隔で「監視」するだけでなく,シャットダウンや自動起動などの「制御」もおこなうことで,メンテナンス工数の大幅な削減に役立ちます。
Modbusは,様々なメーカーの機器をシームレスに接続できるオープン仕様のシリアル通信規格です。産業分野のデファクトスタンダードとして広く採用されており,工場のIoT化には欠かせない存在となっています。
当社LANカードはModbusに対応しているため,Modbus対応の周辺機器に接続し,一括で監視することができます。また, UPSをModbus通信のマスタ(親機)として,スレーブ(子機)の機器を監視・制御することも可能ですし,その逆にスレーブ(子機)として監視・制御されることも可能です。
※Modbus通信をおこなえる装置についてはこちらをご覧ください。
有線対応のみのLANカードが多い中,当社LANカードはUSBポートを持っているため,ワイヤレスアダプタを UPSに差すことで,無線のWi-Fi接続にも対応できます。配線が多い工場のなかで,配線の数を減らしすっきりとした設置をおこなうことができます。
化学メーカー F社(従業員数:5000人)
化学メーカーF社では近年頻発するゲリラ豪雨により,工場で瞬低が複数回発生し,製品へのダメージや復旧作業に頭を悩ませていました。その対策としてUPSの導入を検討していました。
保全課長のK氏は当時の悩みをこう話します。 「工場に3つある製造ラインを,それぞれ1台のUPSでバックアップできれば,安心かつ管理が簡単でいいなと思っていました。しかし見積りを取ってみたら,大型(大容量)のUPSは目の玉が飛び出るほど高額で,社内の予算確保が非常に困難でした。」
K氏の相談を受けた山洋電気の営業担当者は,以下のように提案しました。 「それでは検査装置に1台,ラベラーに1台など,行程ごとにUPSを設置してみてはどうでしょう?各UPSの容量は小さくなりますので,台数は増えますがトータルコストは抑えられます。」
「コストが抑えられることは魅力的ですが,30台のUPSを管理することは負担に感じました。30台は使用時の周囲温度も異なるため,バッテリーが交換のタイミングもまちまちです。それを日々メンテナンスするとなると,正直大変だと思いました。(K氏)」
山洋電気の営業担当は,加えて以下の提案を行いました。 「LANインターフェースカードでUPSを一括で監視してみるのはいかがでしょう?1台のモニターでUPSの状態を一括で見ることができますし,バッテリー交換もある程度の台数をまとめて計画的に行うことができますよ。」
山洋電気の提案に納得したK氏は,UPS『SANUPS E11B』と『LANインターフェースカード』の導入を本格検討,決定しました。「UPSを導入してよかったです。導入してから何度もゲリラ豪雨がありましたが,安心して工場を稼働することができます。またUPSをモニターで一括監視できるのも,メンテナンスの手間削減に繋がり,とても助かっています。大変満足しています。(K氏)」
監修:山洋電気株式会社 営業本部 パワーシステムビジネスグループ
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