2時間目では,3種類の電源トラブル「瞬低」「瞬停」「停電」について説明しましたが,実は私たち電気を使う受電側でも,知らないうちに電源トラブルを起こす可能性があります。3時間目では,受電側が原因となる電源トラブルについて学んでいきましょう。
受電側が使用する電気機器の種類によって,電源トラブルが発生する可能性があります。電気機器の種類を電気使用量の変動で大きく2つに分けてみましょう。
家庭用電化製品・照明・コンピュータなどの電気機器は,比較的安定した電気を消費します。電気使用量に大幅な変動が無いため,電力会社は送電設備の容量・配線・耐量などの選定が容易で,比較的電気を供給しやすい電気機器といえます。
エレベータや電車など動力系の電気機器は,動いたり止まったりを繰り返し,かつ電気の使用量も大きいため,容量・配線・耐量の大きい送電設備が必要になります。送電側の電力会社からすると厄介な電気機器といえるでしょう。
電気使用量が安定した電気機器は特に大きなトラブルは起こりませんが,電気使用量の変動が激しい動力系の電気機器は,送電側に影響を与える場合もあります。次に,動力系の電気機器による電源トラブルについて説明していきます。
モータを起動する瞬間,大きな電気を必要とします。それを「突入電流」といいます。起動した後一定速度で回転しているときは,安定した電気を消費します。それを「定格電流」といいます。突入電流は定格電流の数倍から数十倍の電気を瞬間的に消費するので,送電設備も突入電流に合わせて用意する必要があります。
高調波とは,モータにより出される電気のノイズといわれるものです。特にサーボモータなどは,高調波が発生しやすいモータです。この高調波は,電気機器にさまざまな影響を及ぼします。モータから高調波が出ると送電側に流れ,工場内のほかの電気機器を誤動作させることがあります。最悪の場合,高調波で電気機器が加熱され,発火してしまうこともあります。
さて,ここまで「電気を使う側の事情」を学んできました。
これら送電側と受電側からの電源トラブルを避けるためには,電気機器を守る停電対策装置が必要です。前回紹介した「瞬低」「瞬停」「停電」と今回の電気機器の種類を合わせ,電源装置を選定します。次回からは停電対策装置のしくみや種類などについて一緒に学んでいきましょう。
執筆者:山洋電気株式会社 営業本部 シニアセールスエンジニア 西澤 敏幸
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