私たちの生活に必要なありとあらゆる製品を,国内外で生産する工場。近年機械化や自動化が進む工場では,安定した電源供給の重要性が増し,工場での生命線とも言えるようになってきました。
本記事では,UPSが必要な理由や目的別に必要なUPS,費用対効果について,工場を例に解説していきます。
UPSはご存じの通り、「もしも」の停電や,電源トラブルの際に安定した電源供給を行う「保険の役割」を果たす装置です。しかし,現代の日本で生活をしていて,長時間の停電に遭遇することなどめったにないように感じるかもしれません。
それなのになぜ,費用をかけてまでUPSを設置する必要があるのでしょうか?
実は停電とは,みなさまが想像するような「長時間電気が供給されない」という状態だけを指すのではありません。停電のなかには,「瞬低(瞬時電圧低下)」と呼ばれる0.02秒~2秒の短時間の電圧低下が発生するものや,「瞬停(瞬時停電)」と呼ばれる,1分未満の電力停止も含まれます。そして精密な装置やデータを扱う工場では,わずかな瞬低でも非常に大きな影響を受けてしまいます。
2021年度の東京電力の1軒あたりの停電回数は0.1回※1でした。一方瞬低については,多い地域では月に1回も発生していると言われています。つまり長時間の停電は10年に1回程度しか遭遇しなくても,瞬低であれば地域によってはかなり頻繁に遭遇していることになります。
※1 出典 1軒あたりの停電回数|数表でみる東京電力
普段の生活では気づきもしないような「瞬低」でも,精密な装置やデータを扱う工場では,とても大きな影響が出てしまいます。例えば瞬低によって1秒未満電圧が低下しただけで,生産品に大きな影響が出てしまい,億円単位の損害が発生することもあります。また同じく検査装置が止まってしまい,検査のやり直しなどの手間と費用が発生する場合もあります。
以上のように,長時間の停電はもちろんのこと,頻繁に発生する瞬低に備えるためにも,工場へのUPSの設置はとても大切だということがわかります。
世の中にはとてもたくさんの種類のUPSがありますが,みなさまの工場に必要なUPSはどういったものなのでしょうか?UPSを選定する際に最も大切になる3つの手順についてご説明します。
UPSを設置することによって何を停電などの電源トラブルから守りたいのか,その目的を明確にします。その目的に沿って,UPSでバックアップする対象装置を決定します。
例えば工場で扱う「データ」を停電による喪失から守りたいのであれば,PCやサーバ,ネットワーク機器や検査装置などをバックアップする必要があります。一方,工場で生産された「製品」を電源トラブルによる「不良」などから守りたい場合には,生産設備や製造ラインなどをバックアップする必要があります。
UPSでバックアップ(電力を供給する)対象装置を決めたら,UPSの容量を選びます。バックアップ対象装置の「消費電力」をまかなえる「定格出力容量」を持つUPSを選定する必要があります。
停電や瞬低時に,「どのくらいの時間,電力を供給する必要があるのか?電力を供給している間に何をおこないたいのか?」という観点で,バックアップ時間を選びます。
その他+αの選定要素として,「給電方式」や「バッテリーの種類」などで,自社工場に最も適したUPSを選定します。
詳細ページ:UPS(無停電電源装置)の選び方を解説!容量やバックアップ時間など
「容量」と「バックアップ時間」を踏まえて,みなさまの工場に必要なUPSはどういったものになるのでしょうか。くり返しになってしまいますが,UPSを設置することによって何を停電などの電源トラブルから守りたいのか,その目的によって,必要なUPSは大きく異なります。
以下の例にて「停電や瞬低から何を守りたいか?」の用途ごとに,必要なUPSのイメージを,いくつかご紹介します。またUPSの費用や効果をイメージいただきながら,ご覧ください。
停電や瞬低によって,工場の生産設備の稼働に影響が出た場合,生産品への影響や被害などは,どのようなものが想定されるでしょうか。またそれを防ぐにはどんなUPSが必要なのでしょうか?
被害例
必要なUPSのイメージ
被害例
必要なUPSのイメージ
被害例
必要なUPSのイメージ
必要なバックアップ時間は,以下のような観点で考える必要があります。
※2 瞬時電圧低下補償装置もご用意しております。バックアップ時間が1秒と短い代わりに,UPSに比べコストやスペースを抑えることができます。
停電や瞬低によって,工場で取り扱うデータや,トレーサビリティに影響が出た場合,製造工程への影響や被害などは,どのようなものが想定されるでしょうか。またそれを防ぐにはどんなUPSが必要なのでしょうか?
被害例
必要なUPSのイメージ
被害例
必要なUPSのイメージ
必要なバックアップ時間は,以下のような観点で考える必要があります。
上記では想定される被害の一例をご紹介してきましたが,これまで実際に工場で起こった,停電や瞬低で大きな損害を出してしまった事例をご紹介します。
それは,半導体製造工場で起こってしまった事例です。この工場がある地域で,瞬間的な電圧低下が発生しました。この影響で一部の生産ラインが停止し,復旧までに数日を要しました。当時,被害額は億円単位が見込まれたそうです。
このエリアでの瞬間的な電圧低下は,こちらの半導体工場だけでなく,周囲の多くの製造現場に影響を与えました。1秒未満の電圧低下が大きな被害を招くということを,製造業に携わる人々に印象付けたできごとになりました。
ここまでUPSの簡単な選び方や,バックアップ対象ごとに最適なUPSのイメージをお伝えしてまいりました。
ですが自社工場に最適なUPSは,工場の大きさや製造ライン,生産品によって千差万別です。ぜひ私たちに,現在工場でお抱えの電源トラブルに関するリスクをお教えください!「自分の工場は,何を停電や瞬低から守るべきなのだろう?」「それにはどんなUPSが必要なのだろう?」「そのUPSはいくらくらいするものなのだろう?」といった疑問に,幅広くお答えさせていただきます。
監修:山洋電気株式会社 営業本部 シニアテクニカルアドバイザー 博士 泉谷 清髙
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