
現行機の問題解決のため情報収集をおこなっていたA氏は,取引先からの紹介で山洋電気の営業担当と話す機会を持ちます。自社のチップドレッサが抱える問題について相談したA氏は,後日,現行のφ180mmDDモータによる構成を「80mm角ACサーボモータ+ギヤ」構成へ変更する提案を受けます。これはA氏にとってまさに「目からウロコの提案だった」といいます。
「目標としていたのは,100mm以内のサイズでしたが,提案していただいたACサーボモータ+ギヤは,80mm角でDDモータに比べても非常に小型なものでした。また,ロボットコントローラと同じI/Fのセンサを搭載したため,「変換ボックス」をなくすことができました。その結果,装置構成が簡略になり,さらに小型化できると期待が持てました。そのうえ,モータ本体においてIP67の保護等級に対応しており,クーラント液対策も向上する…言われてみれば,なぜ今まで気づかなかったのか不思議でした。」(前出A氏)
「センサ信号変換ボックス」をなくしたことは,二つ目の課題であった「ノイズ対策」にも有効でした。変換ボックスがTIGノイズを拾ってしまうことで,センサ波形が狂い,正しい信号を読み取れない要因となっていたので,そもそもの不具合発生の原因が取り除かれるのです。
「現行モデルではモータ軽量化のために樹脂製カバーを使用していましたが,ノイズ耐量の高い鉄製カバーの採用を提案いただきました。樹脂製と鉄製カバーの耐ノイズ評価の結果も提示いただき,向上していることが良くわかりました。また,ノイズ対策に最適な配線やノイズフィルタの設置など,ノウハウをいろいろと提案していただきました。」(前出A氏)
ほどなく,同社と山洋電気は試作機を製作し,評価試験を実施しました。約6ヶ月にわたる評価試験の結果,これまでの提案内容が理論値ではなく,現実値であることを確認するにいたります。
こうした検証を経て,C社は山洋電気製「高性能ACサーボモータ+ギヤ」を採用したチップドレッサの新モデル量産化を決定しました。A氏はこう総括します。
「山洋電気の提案は,ユーザーからの要求を満たし,装置性能を向上させるために欠かせないものでした。試作による評価期間は半年にわたり続きましたが,その間も山洋電気にはモータメーカーの枠を超え,柔軟な技術サポートをおこなっていただき大変ありがたく感じています。」