TECH COMPASS
山洋電気株式会社の製品・技術情報サイト
山洋教室
モータのカスタマイズ事例のご紹介(2)

ステッピングモータのカスタマイズの種類・メリットとは

ステッピングモータには,「シャフト加工」「減速機・ブレーキ・エンコーダ取り付け」「ダンパ取り付け」などの種類のカスタマイズができます。
カスタマイズをおこなうメリットは,より高度な制御や安全性など実現しながら,幅広いアプリケーションに適用できることです。
この記事では,カスタマイズのメリットや事例についてご紹介しています。
山洋電気は,「カスタマイズ」も得意です。ご要望や数量に応じて,モータをカスタマイズできますのでご相談ください。

  • 1.シャフト加工
  • 2. 減速機・ブレーキ・エンコーダ
  • 3. ダンパ取り付け
1.シャフト加工

ステッピングモータのカスタマイズ例:シャフト加工編

ステッピングモータのシャフト加工の例として,代表的なものは「シャフト長調整」「Dカット」「キー溝加工」「ギア取り付け」があります。

「シャフト長調整」「Dカット」「キー溝加工」

その他,「歯車加工」「通し穴加工」「プーリ取り付け」などの加工もあります。

「歯車加工」「通し穴加工」「プーリ取り付け」

ステッピングモータのシャフト加工の目的

他の部品や装置との接合

モータのシャフトは,他の部品と接続するため,正確に噛みあう必要があります。
シャフトの直径や形状を加工することで,他の部品や装置に合わせて正確,かつ,簡単に取り付けることができます。
また,シャフトにキー溝を加工することで,カップリングとの軸ズレや,伝達ロスをなくすことができます。

banner_dl_fan_selection_1000x270

ステッピングモータのカスタマイズメリット

お客さまがシャフトの加工を必要とされる場合,当社では基本的にカスタマイズを施した状態での納品をおすすめしています。その理由を以下に記載します。

モータ品質を確保できる

お客さまにてモータの後加工をおこなう場合,シャフトに外力が掛かり,ベアリングなどを損傷してしまう可能性があります。
ベアリングが損傷すると,モータの動作時の異常音につながったり,モータの寿命にも悪影響を与えます。
一方,メーカーがシャフト加工をおこなう場合は,モータを組み付ける前にシャフト加工をおこないますので,ベアリングなどに外力が加わることがなく,モータの品質を損なうことがありません。

お客さまの工数を軽減できる

モータを装置に組み込む際には,減速機やカップリングなどと接続する必要がありますが, シャフト側が減速機やカップリングに合った形状で納品されていれば,そのまま使うことができます。
メーカーにてシャフト形状をカスタマイズすることで,お客さまの組立工数削減,購入部品点数の削減ができるメリットがあります。また,加工のための機械や設備も不要になります。

カスタマイズ部分を含めた保証

お客さまによる後加工は,メーカーの保証範囲外となります。メーカーによるカスタマイズであれば,カスタマイズした部分を含めたモータ全体が保証対象になります。

ステッピングモータのシャフト加工の課題例

事例1:シャフト長が合わず,小型化に課題・・・

次機種で装置の小型化を目指していた,装置メーカー様の事例です。

標準モータではシャフト形状がフィットせず,装置小型化のネックになっていました。
そこで当社がお客さま装置にぴったり合うようにシャフトの長さや形状を加工しました。
お客さまの装置にダイレクトに接続できるビルトインに近い形体になり,次機種の小型化を実現できました。
さらに,キー溝の加工をすることで装置とモータの位置ずれの課題も解決しました。

事例2:シャフトの長さを延ばして欲しい・・・

次機種オーブン

厨房機器メーカー様の次機種オーブンの事例です。

オーブンの内部の温度を均一にするためには,ファンのような羽根で空気を撹拌し,温度のムラを無くす必要がありました。
しかし,オーブンの中は高温のため,モータを入れることができません。そこで,オーブンの外にモータを付け,シャフトに金属の羽根を付けて回したのですが,大型のオーブンのため標準モータではシャフト長が足りないことで,お困りでした。
そこで,当社がシャフト加工をおこないお客さま装置に合う長さにして納品することで,意図する動きを実現しました。

次機種オーブン

シャフトを長くする場合は,ラジアル荷重とスラスト荷重を考慮する必要があります。
※ラジアル荷重とは,軸の中心線に対して縦にかかる力
※スラスト荷重(アキシャル荷重)とは,軸の中心線に対して横にかかる力

ラジアル荷重とスラスト荷重

今回のお客さまの場合は,横置きのためラジアル荷重が大きくなることがわかったため,シャフト径を太くしてラジアル荷重に耐えられるように設計を加えました。

ステッピングモータのカスタマイズが得意です

カスタマイズにおける課題についてもご相談ください。
豊富なカスタマイズのノウハウによる積極的な機能改善の提案が可能です。
山洋電気のカスタマイズにより,お客さまの装置の競争力向上のお手伝いをさせていただきます。

※カスタマイズには最低ロット数等の条件がある場合もあります。詳しくはご相談ください。

2. 減速機・ブレーキ・エンコーダ

ステッピングモータのカスタマイズ例:減速機・ブレーキ・エンコーダ付ステッピングモータ編

ステッピングモータに減速機を付ける目的・メリット

図:減速機付きステッピングモータ
図:減速機付きステッピングモータ

トルクを上げる

減速機を介することで出力軸のトルク特性を向上できます。
例えば,1/10の減速機をモータに取り付けると,回転速度は1/10になる代わりに,トルクは10倍になります。これにより,大きなトルクを必要とするアプリケーションにおいても適切な動力を提供することができます。

banner_dl_fan_selection_1000x270

ステッピングモータにブレーキを付ける目的・メリット

図:ブレーキ付ステッピングモータ
図:ブレーキ付ステッピングモータ

安全性の向上

重力によって落下する恐れのある昇降軸の用途では,落下防止用の保持ブレーキが利用されます。
モータに無励磁作動型ブレーキ(通電していないときに作動し動きを停止するブレーキ)を付加することで,停止時の位置を保持しながら,落下を防ぐことができます。

ステッピングモータにエンコーダを付ける目的・メリット

図:エンコーダ付きステッピングモータ(ケーブルタイプ)
図:エンコーダ付きステッピングモータ(ケーブルタイプ)

図:エンコーダ付きステッピングモータ(コネクタタイプ)
図:エンコーダ付きステッピングモータ(コネクタタイプ)

位置ずれの検出:

ステッピングモータは通常,指定されたステップ数だけ進む特性を持ちますが,負荷の変動や摩擦の影響が大きくなると,モータが位置ずれ(脱調)を起こす場合があります。この位置ずれ(脱調)を検出するために,エンコーダを組み合わせることが有効です。

banner_dl_fan_selection_1000x270

事例1:ブレーキ・エンコーダ付きステッピングモータで半導体製造装置の高性能化を実現

半導体製造装置

装置

  • 半導体製造装置

課題

  • 新機種リリースにあたり装置の性能向上を目指したい
  • 確実に位置決めをおこないたい
  • ワークの落下を防止したい

解決方法

  • 位置決めの高速高精度化を図るため,5相ステッピングモータに置き換え
  • 位置検出のためのエンコーダを付けるカスタマイズ
  • 落下防止のためのブレーキ取付けのカスタマイズ

事例2:減速機付きステッピングモータで食品機械の高性能化を実現

装置

  • 食品包装機械

食品包装自動値付け機

課題

  • 正逆反転時のバックラッシュを改善して,位置決め精度を向上したい
  • 減速機の摩耗が早く,装置を長寿命化したい

解決方法

  • 最適な低バックラッシュギアの提案と柔軟なカスタマイズ対応

事例3:エンコーダ付きステッピングモータの農業への活用

装置

  • 果物収穫用ロボット

植物工場

課題

  • ロボットによる効率的な収穫をおこないたい
  • 果物を傷つけずに摘み取りたい

解決方法

  • エンコーダの取付けをカスタマイズ
  • 上位が位置ずれを検出し,果物を傷つけずに安全停止できるようになった

事例4:エンコーダ付き小型ステッピングモータで,小型・低騒音・脱調レスの医療機器開発を実現

人工呼吸器

装置

  • 医療機器

課題

  • 小型・低騒音の装置にしたい
  • 安全性を重視した装置にしたい

解決方法

  • モータサイズ・トルク要求を満たせる,低騒音の2相ステッピングモータをご提案
  • お客さま指定のエンコーダを取付けて位置ずれ防止を実現

ステッピングモータのカスタマイズが得意です

カスタマイズにおける課題についてもご相談ください。
豊富なカスタマイズのノウハウによる積極的な機能改善の提案が可能です。
山洋電気のカスタマイズにより,お客さまの装置の競争力向上のお手伝いをさせていただきます。

※カスタマイズには最低ロット数等の条件がある場合もあります。詳しくはご相談ください。

協力:山洋電気株式会社 営業本部サーボシステムビジネスグループ

3. ダンパ取り付け

ステッピングモータのカスタマイズ例:ダンパ取り付け編

ステッピングモータの特長は,比較的簡単に位置決め制御ができることです。
一方で,「振動」「騒音」「脱調」などのデメリットもあります。

これらの課題の対策として,ダンパの取り付けが有効な場合があります。

ステッピングモータにダンパを取り付ける目的・メリット

ダンパが振動や騒音を抑える

ダンパはゴム材でできており,モータの振動や騒音を吸収する役目があります。

図:ダンパを取り付けたことによる騒音低減効果の例

高速時でも安定した回転を保ちやすくなる

ステッピングモータは,モータの停止時には振動が発生せず,最大のトルクでピタリと軸位置を保持できるのが特長です。
一方で,ステッピングモータは回転数を上昇させると,徐々にトルクが低下する「垂下特性」というトルク特性を持っています。

この特性があるため,ステッピングモータの回転を徐々に上げていくと,どこかのポイントで回転に必要なトルクが不足して「脱調」という空回りの状態になります。脱調するとトルクの発生はゼロになり,モータは停止します。
これを例えると,人が正常に歩くためには靴底が路面をクリップしている状態が必要ですが,凍結した路面を歩くと,滑って進めなくなる(制御不能になる)ようなイメージです。

さらに,ステッピングモータの場合は,モータが動作する時に振動を伴いますが,振動はトルクを低下させる要因になりますので,モータを高速回転するためには振動の抑制が重要な要素になります。
そこで,ダンパを付けると振動が吸収され,高速時でも安定した回転を保ちやすくなります。

ダンパ取り付けの種類

取り付け面ダンパ

図:取付面ダンパ

防振材料であるゴム材のダンパをモータの取り付け面に使用しています。
モータの振動を筐体から遮断することで,低振動・低騒音に効果があります。また,高速域で安定したトルクが得られます。モータの発熱が問題になる時は,熱対策として,放熱フィンを取り付けることもできます。

複写機,半導体製造装置,電子部品組立装置,医療機器などに使われています。

回転型ダンパ

図:回転型ダンパ

モータの反出力軸側に取り付けることで,ステッピングモータの振動を抑制し,低振動・低騒音に効果があり,高速トルクも安定します。モータの発熱を装置側に放熱できるメリットもあります。
※回転型ダンパを取り付ける場合はモータを両軸シャフトにする必要があります。

基板/ウエハ搬送機,半導体製造装置,電子部品組立装置などに活用されています。

事例:業務用プリンター

業務用プリンター

業務用プリンターの紙送り軸にステッピングモータが使用された事例です。モータの振動・騒音や温度上昇を抑制するために,取り付け面ダンパと放熱板を取り付けたカスタマイズモータを採用いただいています。

ステッピングモータのカスタマイズが得意です!

カスタマイズにおける課題についてもご相談ください。
豊富なカスタマイズのノウハウによる積極的な機能改善の提案が可能です。
山洋電気のカスタマイズにより,お客さまの装置の競争力向上のお手伝いをさせていただきます。

※カスタマイズには最低ロット数等の条件がある場合もあります。詳しくはご相談ください。

協力:山洋電気株式会社 営業本部サーボシステムビジネスグループ

banner_dl_fan_selection_1000x270

更新日:/公開日:

モータ・ドライバ
モータのカスタマイズ事例のご紹介(2)
ステッピングモータのカスタマイズの種類・メリットとは
モータ・ドライバ
モータのカスタマイズ事例のご紹介(1)
真空で使うモータとは?用途例とメリットを解説
モータ・ドライバ
モータの疑問を解決
モータとは?モータの役割と種類,歴史と動作原理や構造