
自動車メーカーや電機メーカー各社は以前にも増して品質向上を徹底しています。部品メーカーなどの協力企業も,人手を介すことなく製品品質の向上を図る手段の一つとして,生産ラインへ積極的に精密測定機を導入するようになってきました。
このような背景から,測定機器市場は近年拡大基調にあります。しかし,「高精度」「高信頼」「小型」,そしてもちろん「低価格」といった要求がますます厳しくなっており,測定機器メーカー間の競争は一段と激化しています。
各種測定機器の開発・製造を手掛けるE社は,競争力強化のため生産ライン組み込み用の小型精密測定機の開発プロジェクトを立ち上げました。
E社開発部長M氏はこう語ります。
「精密測定機は,研究開発や品質管理といった部門だけでなく,生産現場への導入が進んでいます。そこで求められるのが,温度変化の激しい生産現場でも安定した高い精度で測れる高品質の測定機です。また,生産現場へのインラインが可能な,コンパクトでしかも低価格なものが求められています。」
こうした用途や利用の拡大にともない,新たな技術課題も生まれています。
「工場で使われるAC200V系の電源で動力系を組むと,どうしても制御機器が大きくなってしまいます。部品も大きく高価。さらに,高圧の場合には安全規格も厳しく,小型化の障害となります。
そこで,動力系統をDC48V以下で構成することにしました。これで制御機器の大幅な小型化とコストダウンが図れると考えました。また,装置を小型化するために,装置の空きスペースにマッチする形状のサーボアンプを内製することにしました。」(M氏)
小型化とコスト低減の方針が決まったE社は,最適なサーボモータを探すことに。
DC48V以下で駆動可能なモータを探して試験を繰り返しましたが…。
「電圧を下げたため,同じ回転数を出すためには,モータに流す電流を増やさなければなりませんでした。また,装置の小型化を図るため,モータサイズは従来機で使用していた73mm角からサイズダウンすることにしました。そのことでモータの発熱が大きくなってしまったのです。発熱は,金属を熱膨張させてしまうので,計測に誤差が生じてしまいます。ただでさえ温度変化の激しい環境で使いますし,測定精度を出すためにも,極力発熱を抑えなければなりませんでしたが,どのメーカーのモータを試しても許容値を大きく上回ってしまいました。」(M氏)
開発は行き詰まりかけ,M氏は“小型化”と“高精度化”の両立という困難な課題に頭を抱えてしまいます。