
解決の糸口を探していたM氏は,DCサーボシステムを作っている山洋電気の営業担当者にコンタクトを取り,こうした課題を相談しました。そこで,「DCサーボモータをカスタマイズして最適化しましょう」という提案を受け,さっそく対応を依頼することに。
ほどなく山洋電気は,E社の要求仕様に合わせて巻線仕様をカスタマイズした試作品を納品。モータを受け取ったE社は,さっそく実機に組み込み検証を開始しました。
「この装置では3軸DCモータを使うのですが,3軸すべて要求仕様ピッタリの速度とトルクを出せるモータを設計していただきました。巻線を細かく調整するノウハウや技術力の高さに驚きましたね。
ですが,Y軸だけは少しだけ温度が許容値をオーバーしてしまいました。負荷効率の悪い構成だったため,目標の回転数を達成するためには電流アップが必要となり,どうしても発熱が大きくなってしまったのです。取り付け部分の制限がありモータの容量アップはできないので,負荷周辺の構造を改善することにしました。
すると,山洋電気のモータ設計者が,放熱経路や空気の流れを見極めながら,一緒に発熱の問題を考えてアドバイスしてくれました。親身になって一緒に課題を解決してくれる姿勢がうれしかったです。」(M氏)
巻線仕様の微調整と機械側のモータ放熱効率のアップによって,モータ表面温度を10℃以上低減することに成功。発熱を許容値以内に収めることができたときに,M氏は装置の小型化と高精度化を両立できると確信したそうです。
さらに,山洋電気は従来機のプーリを流用できるようモータシャフトのカスタマイズを提案。こうしたきめ細かなフォローが決め手となり,E社は山洋電気製DCサーボモータの採用を決定しました。
「今回,低速時の応答性が高い小容量DCサーボモータを使い,また,アンプを内製することで装置の高精度化,小型化,低コスト化を実現しようと考えたのですが,発熱という思わぬ壁にぶつかってしまいました。ですが,これらの課題を解決できたおかげで,無事DCサーボモータを使うことができ,測定機の設置面積を40%低減することに成功しました。また,内製アンプで余分な機能が省け,コストも30%削減できることがわかりました。」(M氏)
数ヵ月後,無事に測定機開発を終えたM氏はこう語っています。
「行き詰りかけていた開発目標を達成することができ,ほっとしています。きめ細かなカスタマイズに加えて,コスト面への配慮までしていただき,とても感謝しています。今後も難しい課題があった際には,まず山洋電気に相談してみようと思います。」