電子機器メーカーD社は,近年デジタルサイネージの製造販売に注力しており,ハードウェア開発からシステム構築,導入時のコンサルティング,運用までを一貫して手掛けています。
今回同社は,ショッピングモール向けに,デジタルサイネージ機能付き自動販売機の開発を進めていました。当初は,ファンレス設計で開発を進めていましたが,自動販売機の前面に液晶ディスプレイを搭載するため,予想より発熱量が大きくなりファンによる冷却が必須と判断しました。しかし,ファンの選定で課題を抱えることとなりました。
というのも,同社では数年前,とある製品に海外製のファンを採用した際に,短期間で停止し故障が頻発するというトラブルに見舞われていたのです。D社開発部のI氏はこう語ります。
「過去の苦い経験から,ファンはハードウェア全体の性能に関わるため,慎重に選定しなければならないと学びました。液晶ディスプレイの期待寿命が5~6万時間なので,それに匹敵する長寿命性能と信頼性は欠かせません。とはいえ,高価な長寿命ファンを使う余裕はありませんでした。」
※ファンの寿命について詳しくは山洋教室ファンの基礎知識:ファンの寿命
さらに,ファンには“高風量”かつ“低騒音”であることも求められました。バックライトからの発熱を十分に冷却できる風量がありながら,利用客が気にならないレベルの静音性があることが重要です。
「大きな液晶ディスプレイでさまざまなコンテンツを表示し,人感センサやタッチパネルなど多彩な機能を盛り込んだ戦略的な製品でしたので,なんとしても開発を成功させなくてはなりませんでした。そのためには“長寿命”だけでなく,“高風量”や“低騒音”という条件も同時に満たすファンが必要不可欠でした。」(I氏)
そのようななか,D社はとあるエレクトロニクス関連の展示会に出展しました。そこでたまたまブースを訪れた山洋電気の営業担当者に課題を相談することで,I氏は解決の糸口を見出します。
後日,山洋電気の担当者はI氏より課題を詳細にヒアリングし,80mm角×25mm厚の「DCファン」を即座に提案しました。この提案はI氏を大きく満足させます。
「早速取り寄せた評価用サンプルはわずか2日で納品されました。おかげで評価時間も大幅に短縮することができました。提案いただいたファンは十分な風量があり,高い冷却性能を持ちながら,騒音も気にならないレベルでした。
また,周囲温度60℃のとき期待寿命6万時間ということで,長寿命という条件もクリアしていました。なにより,全数検査によって高い信頼性が保たれている点が決め手になりました。今回の装置に最適のファンが見つかったことで,開発に弾みがつきました。」(I氏)
「ファンは1装置につき4個搭載しているのですが,温度センサによりファンのON/OFF制御をおこない,装置内の温度が高いときだけファンを駆動させたらどうかという提案をいただきました。液晶ディスプレイも常に最大輝度で表示しているわけではないので,ファンが停止しているときは,さらに騒音を抑えることができますし,なにより消費電力も低減できるとてもいいアイデアでした。」(I氏)
D社はこの後,無事に開発プロジェクトを成功させ,市場から高い評価を得ました。
この成功を受けてD社開発部では,開発を進めている次期製品についても,山洋電気にファンの選定を依頼することを決めました。I氏はこう語っています。
「多様な用途や使用環境に対し,的確な選定をおこなってもらいました。あらゆるニーズに対応できる豊富なラインアップに驚いています。これからも,まずは山洋電気に相談してみようと思っています。」
軸流ファンについて詳しくは「軸流ファンとは?特徴・構造・使い方」もご覧ください。
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