電線加工機など各種産業機械を製造・販売するN社。このほど同社では,ワイヤーハーネスの需要増に対応し,加工速度を向上させた新モデルの開発に乗り出していました。N社開発部のI部長はこう語ります。
「電線加工機に求められる最も重要な要素は加工の速度です。お客さまからも多くの要望を受けていました。現行モデルでも1本当たり1秒以内で切断・剥ぎ取り・端子圧着までおこなうことが可能ですが,高い精度を維持したうえで,さらに加工速度の向上を求められていたのです。」
I氏らは加工速度アップを図るため,仕様の見直しをおこないました。しかしここで早速課題に突き当たることになります。
「現行の機種では上位のモーション制御にマイコンを使用していましたが,マイコンボードはICの製造中止などで調達できなくなるケースが多く,その都度,設計変更が必要になり対応に苦慮していました。加えて,マイコン制御では,サーボアンプ1台ごとに指令用のケーブルが必要なため,配線工数がかかっており,この点も重要な改善ポイントでした。」(I氏)
そのほか,コストについても避けて通れません。
「価格競争が激化するなか,電線加工機に対する低価格化の要求は厳しさを増しており,コストダウンも必須でした。加工精度の維持は言うにおよばす,コストをセーブしながらさらなる高速化も実現する…,こうした要求を満たす方法を考えていました。」(I氏)
課題解決のために情報収集を続けていたI氏は,他の部門で付き合いのあった山洋電気にこうした課題を相談します。
後日,訪問した山洋電気担当者は,仕様を確認しI氏より課題点を詳細にヒアリングした後に,まずオープンネットワーク「EtherCAT」対応のACサーボシステム「SANMOTION R ADVANCED MODEL」を提案します。
「FA分野を中心に広く普及している『EtherCAT』は汎用性が高いので,ICの製造中止で設計変更に追われることはなくなります。また,EtherCATを介してサーボシステムに最適なパラメータを設定できるため,装置の大幅なサイクルタイム向上が見込めました。」(I氏)
さらに山洋電気担当者は,サーボシステムに加えて,装置のなかでストロークが短い軸にはクローズドループステッピングシステム「SANMOTION Model No.PB」を使用することで,トータルコストも低減できると説明。この提案にI氏は満足します。
「通常のステッピングシステムより高速で信頼性が高く,加工の品質を維持しつつシステムをコストダウンできると見込めました。」(I氏)
提案に納得したI氏はさっそく評価をおこなうことにしました。その際,山洋電気は評価用サンプルを短納期で納品するとともにN社に対して技術的なサポートも実施しました。
数ヵ月後に試作機は無事に完成。その結果,当初の課題を十分にクリアできると判断したN社は,正式採用を決定し,ほどなく新モデルの量産に入りました。
今回の採用についてI氏はこう語っています。
「満を持してリリースした製品はお客さまより大変高い評価をいただいております。当初の目標を達成できたのは,仕様を十分理解した的確な提案のおかげと考えています。山洋電気には手厚いサポートもおこなっていただき,開発チーム一堂感謝しています。」
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