海外への事業展開を図るうえで,電力の安定確保は重要な要件の一つとなっています。特に新興国では,電圧変動や停電などが頻発するケースがあり,精密加工をおこなう生産設備においては,常に安定した電力供給が求められています。
工作機械など各種FA機器の製造販売を手掛けるP社。同社はこのほど,海外に生産拠点を構える日系企業に向けた,新たなレーザー加工機の開発に乗り出しました。しかし,海外の不安定な電力事情が開発のボトルネックとなっていました。同社開発部のM部長はこう語ります。
「レーザー加工機はミクロン単位の精密加工をおこなうため,レーザーの安定出力が必須条件です。ところが,海外の電力事情は不安定な場合が多く,電圧が瞬間的に低下する『瞬低』(*1)に加え,電力が瞬間的に停止する『瞬停』(*2)が日常的に発生します。そのためシステムが被害を受けないよう,電力を安定供給できる対策が必要でした。」
*1 瞬低(瞬時電圧低下)
送電線などの故障により,0.07~2秒間電圧が低下する現象。
*2 瞬停(瞬時停電)
送電線などの故障により,瞬間的に停電が起こる現象。
詳しくは停電の基礎知識と対策:停電の種類と「瞬停・瞬低・瞬断」とは?
そこでM氏はオプションとしてUPSを検討したのですが,バッテリの性能などについて課題が残りました。
「UPSは鉛バッテリを使用しているので,3年~5年おきのバッテリ交換など,定期的なメンテナンスが必要でした。また,『瞬低』や『瞬停』が頻繁に起こると,その度にバッテリ給電に切り替わるため,バッテリが期待寿命より短くなることも予想され,保守費用がかさむことも懸念されました。」
情報収集を続けていたM氏は,以前,別の部門で採用実績があった山洋電気とコンタクトを取り,これらの問題を相談しました。
連絡を受けてP社を訪問した山洋電気担当者は,課題を詳細にヒアリングした後に,瞬時電圧低下補償装置「SANUPS C23A」を提案します。
この提案はP社スタッフを強く惹きつけました。
「『瞬低』だけでなく『瞬停』にも対応し,さらに『完全無瞬断』で電力を供給してくれる点に着目しました。他社の製品もいろいろ検討したのですが,『瞬低』のみの対応で,『瞬停』の補償はおこなわれていません。『瞬低』・『瞬停』いずれの場合でも完全無瞬断での電力供給を実現しているのは,山洋電気の製品だけでした。これで“安定した電力供給”という課題は十分クリアできると確信が持てました。」(M氏)
海外では,設備機器より発生する「高調波」への対策が不十分なところも,M氏を悩ませていました。
「お客さまに,国内と同じように安心してレーザー加工機をご使用いただくためには,高調波対策も欠かせません。『SANUPS C23A』にはアクティブフィルタ機能があり,レーザー加工機が出す高調波をインバータがキャンセルしてくれます。入力電流が常にきれいな正弦波を保つため,他の機器に悪影響をおよぼさないという点も魅力でした。」(M氏)
さらに,メンテナンス面における優位性もM氏を驚かせました。
「『SANUPS C23A』は電気二重層キャパシタなので,UPSの鉛バッテリに比べ期待寿命が長く,保守・運用費用を大幅に低減できるという期待が持てました。」(M氏)
こうして「SANUPS C23A」の正式採用を決定したP社。
「今回『SANUPS C23A』をオプションとしてラインアップに加えたことで,電力事情が不安定な地域で設備導入を検討しているお客さまへも,自信をもってご提案できるようになりました。当社にとっても,今後のグローバル展開を考えるうえで大きな布石となりました。山洋電気には本当に感謝しています。」(M氏)
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