東南アジア諸国は生産拠点の進出先として多くの企業が進出していますが,停電に加え瞬低や瞬停などが頻発する地域もあります。当地の電力事情は各企業の生産性に大きな影響を及ぼすため,電源品質の確保は極めて重要な課題となっています。
各種プリント回路基板を製造するフィリピンの電子部品メーカーX社。同社は堅調なスマホ需要に加え,データセンター向けHDDストレージ製品の需要増に対応するため,生産増強を図っていました。
ところが,同社の工場は,フィリピン国内でも比較的電源の環境がよい工業団地に立地しているにもかかわらず,常に瞬低や瞬停による生産設備のトラブルに悩まされていました。X社工場長のG氏は,インフラ整備の問題に加え,フィリピンの気象条件に原因があると説明します。
「スコールによる豪雨や雷が原因で,2021年の上半期だけでも10回以上の瞬低が発生しました。これは前年の倍以上の回数です。瞬低で装置が停止することで再めっき作業を強いられるなど,生産効率が大幅に低下しました。また装置の復旧や再稼働にかかる時間・費用のロスも大きく,瞬低・瞬停対策は最優先の課題となっていたのです。」
G氏はすべての設備へのUPS導入も検討しましたが,導入コストや定期的なメンテナンス,さらに設置スペースの問題などを考えると躊躇せざるを得ませんでした。G氏らは他の解決策を求めて情報収集を続けました。
※ 瞬低(瞬時電圧低下)=瞬間的な電圧低下。
※ 瞬停(瞬時停電)=瞬間的な停電。瞬断。
詳しくは停電の基礎知識と対策:停電の種類と「瞬停・瞬低・瞬断」とは?
G氏は瞬低・瞬停対策について,付き合いのある代理店に相談しました。代理店と代理店より相談を受けた山洋電気はG氏にWEB会議を呼びかけ,低コストで設置できる瞬低対策専用の「瞬時電圧低下補償装置」を提案します。
「複数メーカーの製品を検討してきましたが,山洋電気製の『SANUPS C23A』に注目しました。注目したのは,パラレルプロセッシング方式により完全無瞬断で電力を供給できる点,また瞬低だけでなく瞬停もカバーできる点です。比較検討していた他社製品では,約5msほどの切り替えが発生するうえに,瞬停もカバーできませんでした。また,負荷装置からの高調波キャンセル機能や高効率な省エネ運転も魅力的でした。WEB会議で,検証のため詳細なデータを求めたところ,即座に英文のマニュアルや図面を提供してくれました。フィリピンでも日本と同等のスピードで提案を受けることができました。」(G氏)
▼瞬低対策装置の比較
製品 | 給電方式 | 蓄電媒体 | 瞬低 対応 |
瞬停 対応 |
切替 時間 |
高調波 キャンセル |
山洋電気製 (C23A) |
パラレル プロセッシング |
電気二重層キャパシタ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
一般的な 製品 |
常時商用 | 電解コンデンサ or 電気二重層キャパシタ |
〇 | × | △ (5mS) |
× |
ほどなく,X社は『SANUPS C23A』の採用を決定し,自社工場内に設置しました。図面提供など山洋電気の迅速な提案も採用の決め手の一つとなりました。設置後の効果について,G氏は次のように語ります。
「SANUPS C23Aにして正解でした。瞬低・瞬停が要因の動作トラブルが0件になったほか,電気二重層キャパシタなのでUPSとは異なりバッテリ交換が不要なのでランニングコストが抑えられますし,バッテリを使わない分UPSに比べて装置の小型・軽量化を図ることができました。そしてそれは、輸送費や設置費用がUPSよりも安く抑えらえるという,想定外の効果ももたらしてくれました。期待以上の効果を得られています。」(G氏)
山洋電気は世界各地に拠点を配置しており,フィリピンには生産工場とテクノロジーセンターがあるため,万一のトラブルの際にフィリピン国内ですぐにサービス要員を派遣できる点も,X社の安心につながっています。
「瞬低によるトラブルを見事に改善できました。山洋電気の製品と提案に満足しています。」(G氏)
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